美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

野間記念館の素晴らしき「十二か月色紙」

野間記念館ほまれの十二か月色紙展が開催中。
感想はこちら

2017.9.15感想をこちらに転載する。

野間記念館の展覧会はいつも安定している。
所蔵品展だけ、というのはマンネリだともいえるが、収蔵品の数が尋常ではないので、初見・またはとても久しぶりの再会の作品も多く、飽きることはない。
「偉大なるマンネリ」だというてもいい。
だからこそわたしなどは喜んで出かけるのだが。



今回は全館挙げての「十二か月色紙」の展示。
これがまた凄まじい。
全てが同サイズの色紙で、大半は額装、少しばかり軸装、ガラスケース内では色紙のみという展示スタイルなのだが、本当に画家それぞれの個性炸裂で、花鳥風月と季節を大切にする日本画の特性を守る人もあれば、得意分野を貫く人、逆に抑制を利かせ普段とは多少異なる筆致を見せる人などなど、本当に千差万別。色紙という枠の中だけでの壺中天、または世界の一部を切り取ったような表現、それすらも人それぞれ。
実に面白い展示になっている。
大正から昭和初期、日本画の素晴らしさは頂点に達していたと思う。
その最中での大いなる作画。

今回は総勢37名の12か月。
落合朗風という画家は知らないが、丁寧な解説リーフレットがあって、それで略歴などをしる。
面白いのは7月「浜芦」ここには何故かゾウリムシが描かれていた。自然描写と言うより一種のとぼけたユーモアが漂う。

堂本印象、福田平八郎は花鳥風月を描いていた。
印象はとても抑制された絵を描いていた。そして10月の「柿」がとても甘くておいしそうだった。
平八郎は1930年の作ということでまだ後年の作風のようではないが、やはりよかった。中でも10月の「蕎麦」は白のアイシングのような蕎麦の花がきらめいていた。胡粉だとは思うがアイシングに見えた。そしてこれなら「蕎麦の茎はなぜ赤い」という伝説が納得できた。

小茂田は金地色紙、9月の黒々とした「葡萄」がたいへんおいしそう。
蓬春は花鳥画が多いが、10月「秋草」だけは珍しいことに若い公家を描いている。この貴人は秋草と虫の音を楽しむために野に上畳を敷いている。

動物好きの西村五雲と榊原紫峰は花鳥画を描く。
カラフルな作品の多い荒木十畝は抑制を利かせた花鳥に魚類、池上秀畝は植物を大きく描く。

森白甫は知らない画家だが、元気な「クルマエビ」を描く。
石崎光䁘はいつもの華麗さを抑え、非常に抑制のきいた絵を描いていた。
しかし「つる花」のレースのような表現はやはり彼らしい華やかさがあった。

若い頃の松篁さんの12か月はおとなしい。
徳岡神泉も抑制が利いた絵を挙げている。
山口華楊は5月「さつき小雀」がいい。赤い花の下にふくら雀がいる。可愛らしい。
宇田荻邨も後年のにじみは見せずいい意味でこぢんまりと優しくまとめていた。

第三室は美人画・風俗画の部屋となり、絢爛な様相を見せていた。
映丘の金地色紙には王朝人が月次絵から現れたようだった。
珍しく10月「落葉」は天平美人を描いている。
恒富も様式的な絵で統一していた。妖艶さは見せない。
10月の「ゑびす講祝い」は御所人形がえべっさんの恰好をしている様子を描いている。えびす講は1月だと思っていたが、それとは無関係かな。

清方は清楚な少女から婀娜なご婦人まで。気品のある母子の「宮詣」もいい。
深水も1928年なので特に好きな画風で、ご婦人の様々な情景を描く。
松園さんは金地色紙。松園さんの立派なご婦人もいいが、色紙の気軽な女たちを見るのはとても楽しい。

まつ本一洋は月次の行事を描き、伊藤小坡は時代相を描く。7月「朝顔」は加賀の千代女。
山川秀峰も月次の楽しみを描く。1月「投扇興」3月「雪姫」といったあたりにいかにも秀峰らしい良さを感じた。

とても華やかな第三室だった。

山本丘人も1938年の作画は後年とは全く違い、自然を淡々と描いていた。
福田豊四郎のシンプルな人々は12か月をのんびり過ごす。
放菴はスケッチ風な筆致で洒脱な様子を見せていた。

旅へ出てその先々を描いた人もいる。
「美の旅人」と謳われた池田遙邨は各地を描いた。
浜名湖、甲斐猿橋、千代田城、大沼公園、塩原温泉、淡路島、北海道狩膳峠、南総海岸、大井川の富士、十和田湖畔、箱根旧道の富士、松島。

長谷川路可は「欧米十二題」とタイトルをつけていた。以下タイトルは大意。
アッシジに春月、五月雨のフヒエゾレの僧院、ローマ郊外の春、ノートルダムの晩鐘、ヴェニスの朝、セーヌ河畔の釣り、マッターホルン、「清晨清粧」、ロンドン港、フォーレンダムの雨、トレドの夕映え、ナイアガラ。
「 」以外はみんな大意だが、「 」の分のみ場所不明。

今回、小川芋銭の12か月が全品チラシにある。
牧歌的で、ちょっと怖いような所もあって楽しい。


玉堂の農村・山村で暮らす人々に訪れる季節。
岩田正巳の時季の花。
矢澤弦月、望月春江も花や木を描くがそれぞれの個性がよく出ている。
吉村忠夫は旧い世の人々と自然の流れを描いた。
松永姿水も自然を。

最後に野田九甫。時代相と月次の営みとを描いている。
懸想文、梅妃、雛、鷹射出、鍾馗、川狩、七夕、月見、菊、神旅、鉢叩き、雪。
いずれも物語性が感じられて面白かった。

444点もの12か月色紙。いつものように細かいことはさすがに書けないが、もう本当に楽しかった。ただ、点数が多いので気軽な気持ちで見て回る方がいいと思う。根を詰めてはいけない。そしてそんなのんびりした気持ちで見て回るのを許してくれるのが、この展覧会の魅力だと思った。

いつもありがとう、野間記念館。


実にたくさんの作品が出ていたなあ。
わりとよく出るのもあればあまり出ないのもある。
松園「砧」、小茂田青樹「月に梅」が出たのはこの時
他にも折々に出ている。

今回のチラシは小川芋銭のを特集していた。
土俗的な可愛らしさがある。

2011年の十二か月図展も充実していたが、今回はそれ以来かな。
こちらは松園さんの十二ヶ月。
sun290.jpg

この十二か月色紙の充実ぶりは本当に素晴らしいので、出来る限り見に行ってほしいと思う。
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