美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

横山大観と木村武山 革新から、核心へ

野間記念館では2009年以来久しぶりに「大観と武山」展を開催している。
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大体ラインナップは似ているかな。
当時の感想はこちら

同じお仲間とはいえ、大観に比べると武山はあまり知られていない。
春草は目立つし、観山も話題作が多いが、武山はなんとなく知る人ぞ知る的な感じがある。
しかしいい絵を描く人なのは確かで、ここでも名画がいくつもある。
ただ、所蔵し、展示する場が少ない、という不運がある。
その意味では野間記念館という存在は本当に尊い。

最初に武山の「富士百種」から四点が出ている。
いずれも1928年。これはなんばの高島屋が同年の七月七日(七夕!)から28日まで「霊峰富士山大博覧会」のために制作されたもの。
講談社主催。高島屋の全体を富士山に見立てて、1Fから6Fまで写真展示などで登山道の雰囲気を作り、6Fと8Fにこれらの絵画作品(色紙)や富士山の模型や絵図、秩父宮さまの登山のグッズなどを並べたそうだ。
これは大変な評判を呼んだと高島屋史料館の資料で見ている。

武山の富士は四季の頂上周辺の様子である。
白い雲の上にゼリーのようにプルンとしたものが出ていたり、かき氷のようなのは夏なのか、白のみ・青のみもある。

武山 春暖 八つ手の葉っぱに瑠璃鳥がいる。葉っぱの外線がみずみずしい。
新芽が伸びている。たらしこみも使って表現。

大観 白鷺ノ図 大きな笹の葉の下にいる。トボケた表情をしている。
ちょっとばかり星新一描くホシヅルにも似ている。
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武山 錦魚 金魚です。白睡蓮の咲く池に赤いのが二匹潜む。
金魚の絵は後に出てくる12か月色紙シリーズでもよく出てくるので、好きなのかもしれない。

大観 松鶴図 六曲一双屏風 左右に一羽ずつがいて毛づくろい。シンプルな構図ながら祝い事などにふさわしい、立派な屏風絵。

武山 鴻門の樊噌 雑誌「キング」1930年12月号「世界史上の華絵巻」として項羽と劉邦の大きなエピソードの一つ・鴻門会の情景を描く。
この樊噌の力強さ。目なども怒っているが、その瞼の形と握りしめた拳とが似ているのも面白い。
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武山 金波 男波の頂点の上に日輪がのぞく。その日の左側はトルコブルー、他は金泥の濃淡で表現されていて、幻想的。

大観 飛泉 「墨に五色有」を標榜した大観らしい墨絵。巨大瀑布を描く。滝は右向きに力強く流れ落ち続ける。松にも垂れ下がる植物があるのが、その松の長い時間を感じさせる。
大観、応挙の滝の絵などを見ると、実際にマイナスイオンを感じるような気がする。とても涼しい。

大観 月明 これもまた「墨に五色有」。濃淡で距離感・空気感が見事に描かれている。月はとても小さく遠いのに、その明かりが松まで照らし出す。
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大観 訪友 中国の高士が山中の友人に会うという図。木々の中にある白いシンプルな建物。そこから少し離れたところで立ち話をする二人。ぼうっとにじむような霞むような様子がいい。
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大観 夜梅 こちらも「墨に五色有」にさらに淡彩。黒い枝が伸びた先に白い梅が咲く。これはもう梅が「夜香」の花だということを改めて知る、そんな空気感がある。
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大観 春雨 これは大きな絵で実は本当の春より初夏に見るのが好きな絵。
大きな縦長の空間に桜と松と椿が見える。山の中、杜鵑が飛ぶ。峡谷の美。

生々流転のコピー絵巻が出ていた。
これはなんと1924年3月発行のもの。大震災の半年後に発行されたとは思えぬほどよく出来たコピー。
こんな立派なのを拵えたことで、復興気分が大きくなったそうだ。

その震災の炎上図もある。これは多くの画家に描かせたもので、表紙絵を大観が担当した。
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大観は今もある池之端の自宅を下谷郵便局に貸し、被害がなかったこともあり本人が威勢よくシリッパショリをして避難民の人々の救援をしたそうだ。

第二室へ入ると、富士山の絵が並んでいたが、それよりなにより目を惹くのが武山の観音図。
とても若くて美人の観音がパステルカラーのような色調でカラフルに描かれている。顔を挙げた若き観音の美貌と華やかさ。とてもいい。
そしてその向かい合う位置には同じ色調で描かれた「慈母観音」がある。
こちらはやや年長で、そして足元の幼児を見る優しいまなざしがいい。
こんな美貌の二人の観音図をこの配置で見ることが出来たのはとても嬉しい。

随分前にブリヂストン美術館で武二「天平時代」の美人と青木「わだつみのいろこのみや」とが戸口を挟んだ左右に配置されるという絶妙なものを見たが、それ以来の心地よさ・魅力を感じた。

第三室では仏画がメイン。
大観 千代田城 霞む松がしっとりしている。

武山 神武天皇 久しぶりに会う一枚。
この神武の飾り物もとても丁寧に表現されている。
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武山の八幅対の仏画が並ぶ。1932年
観世音、虚空蔵、文殊、普賢、勢至、大日如来、不動明王。
それぞれ紺地金泥、彩色の豊かなもの、金泥地に抑えた彩色のもの、と表現が変えられているのもいい。
これらは武山が大日堂建立を志した時に野間清治が賛助金を出したことへのお礼らしい。

最後の部屋は圧巻の十二か月色紙。全て武山揮毫。
1927、1928、1930、1932には4種も描いている。
花鳥画、虫も出演と言うものだが、月次図ではあるものの雀の出現率がとても高く、その愛らしさはチュン死するレベルである。
あまりに可愛すぎてこちらは振り回されてしまった。
くーーーー!チュンチュン言う奴らが小首をかしげてこっちを見ていたりすると、もぉ本当に可愛さにイライラするくらいだ。
それでもう「えーい、引っかからないぞ!」と知らん顔をしようとした途端、筍の影から無心に出てくる雀の絵を見てしまうのだ。
ヒーーーッ

あああ、可愛すぎてクラクラした。

5/21まで。
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