美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

帰ってきた浮世絵動物園 後期

四月に続き「浮世絵動物園」展に行った。
今回もどんな動物が現れるか楽しみである。
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肉筆画をみる。
北尾重政 美人戯猫図 太夫の飼い猫らしく好き勝手に暴れている。太夫もちょっと困りつつ楽しそう。

月岡雪鼎 髪すき図 頭は人任せ、こたつに足を入れながら巻物を読む。その端で三匹の猫が暴れている。

三畠上龍 狆をつれた美人図 眉を落として笹紅の上方美人。縞柄の着物。すっきりはしていないが、艶な美人。

尾形月耕 甲子之図 対幅でネズミの花嫁と猿公家を描く。
もう明治の半ば過ぎの頃の絵で、なんらかの意図があるのだろうがわたしにはわからない。

落合芳幾 猛虎之写真 真を写す、というわりに虎ではなく豹が吠えている。西洋女性が手前にいるが、取り合わせがまたよくわからない。万延元年のフットボールならぬ万延元年のナゾな猛虎図。

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面白い絵はまだある。
広重 東都飛鳥山の図 王子道狐の嫁入り ちゃんと狐雨の最中の嫁入り。桜も満開。

広景 青物魚軍勢大合戦之図 コレラの流行っている頃で、風刺もきかせているそうだ。
そんなことを思わずに見てもとても楽しい。タコのビーム、小タコもいっぱい出てきた。「南無妙法蓮華経」の幟を掲げる南瓜もいる。野菜軍団も魚類軍団も一歩も引かない。

芳虎 家内安全ヲ守 十二支之図 出た、十二支合体生物。キメラとかヌエの親戚とか言うたらあかんのです。こういう掛け合わせは絵師の才能やわな。面白いしなにより可愛い。

次にウサギが出てくるが、ウサギの浮世絵と言えばボローニャから里帰りした「浮世絵の死角」展の時に見た「道行旅路花婿」お軽と勘平が最初だった。
当時の感想はこちら

ウサギは猫と違い目にハイライトがないので、擬人化するとけっこう怖い顔になるが、手先が可愛いので、妙なアンバランスがあるのが面白い。
目だけ見てたら初代ウルトラマンみたいな感じ。

明治初期に兎と万年青のブームがきた。そのころの狂騒の様子を大仏次郎が小説に書いているが、とにかく何が流行するか知れたものではないというのが明治の話。(兎と万年青の次には絵はがきのブームがきた)

芳藤 兎の相撲 筋肉隆々たるウサギの力士たち。四股名もこれまた力強いが、皆ウサギ関連のもので、柄も四股名になる。
しかし手先が妙に可愛いのでキュンとなる。
太田美術館の公式ツイには絵の一部がある。

四代国政 兎の草履打 「鏡山」をウサギで演ずる。「今ぶち」と「卯のえ」。(岩藤と尾上)
この文言がまたいい。
「根が野ウサギの育ち故」てか。
町民=野ウサギというのがええわ。

そういえば同時代の英国ではポター女史が一見二見したところ愛らしいとしか言いようのないウサギや猫たちで、けっこうエグい話を描いていた。
ピーター・ラビットのパパはウサギパイにされ、家系図にもパイの姿で紹介されている。子猫のトムは強欲なネズミ夫婦に危うく生春巻きにされて食べられかけている。
このセンスは浮世絵にはないものだった。

貞秀 蛸踊り 四匹のタコが浜辺で渋団扇を持って踊っている。どうも浮かれ坊主のような様子である。一人は傘を開いているから、太神楽か何か芸人のようでもある。

ところでこれは江戸の浮世絵なので蛸踊りというてもタコたちの擬人化なのだが、いつから始まったかしらんが、大坂の蛸踊りはこれとは違い、タコのかぶりものをした人が戦う姿を複眼レンズで見せる大道芸があった。
「たこめがね」または「数めがね」と言うそうだ。
春秋のお彼岸の時の四天王寺でよく見られたらしい。
このことについては小出楢重が詳しく書き残している。それを以前に紹介もした。
こちら

芳幾も師匠国芳同様「似たか金魚」を描いている。こちらはナマズが中央にいて、それは坂東村右衛門という役者だとあるが、わたしは知らないなあ…調べるとけっこう名前を変えていることを知る。
そしてそのナマズ、怖い顔なのだよ。

四代国政 しん板猫のそばや これはまた好きな絵の一つで、中でも蹴躓いてお客のにゃんこに盛りそばを上からぶっかけてしまう猫と、やられて「にゃあぁぁっ」な猫の様子が特に好き。いい表情してるわ。

芳藤 しん板猫のたわむれ踊のをさらゐ 踊りの温習会はなかなかたいへんなの。ここの坂東三毛治一門もそりゃ券を売りさばかなあかんし、あちこちに愛想せなあかんしで、しかもちゃんと弟子たちがええように踊れるかたいへんやし、終わった後も御馳走せんならんし… という様子をうまいこと描いている。

北尾重政 虎 竹に柱巻してるぞ、こいつ。多分モデルは虎猫がニャアとしながら竹筒にぐるりぐるり…

広重 獅子の児落とし 白獅子の親と青獅子の児。白が年配、青が若者なのは白秋・青春だからええのだが、雰囲気的に仮面の忍者赤影の青影が崖から上がろうとしてるところに見えるよ。それで上から白さんが「どうしたーっ」青ちゃん一言答えて「ダイジョーブ」あのポーズをやってくれそうです。

芝居や説話をモチーフにした絵が並ぶ。
芳虎 西海蜑女水底ニ入テ平家ノ一族ニ見 そうミタでなくマミユ。だから海女さんも土下座。海底の亡者でも身分は高い。

国芳 牛若鞍馬修業図 烏天狗らと稽古中なんだが、ヒト形でなく完全に鳥形ですがな。それで棒もって襲ってくるから、さすがの烏天狗。水飲んだりもしててリアルやな。遠くに鬼三太が上ってくるのがみえる。
ヒトの姿やなしにトリというかガルーダみたいな感じで描くところがさすがの国芳。
誰もほんまの烏天狗なんか知らんもの、「あっカラスが闘う!」と言うのは面白いよ。

国芳 五十三駅 岡崎 はい、化け猫です。そういえばこのヒトの「猫飼好53匹」シリーズの岡崎は「おがさけ」の化け猫だったな。ぴったり。

二階に上がるとまたちょっと雰囲気の違う絵が並んでいた。

服部雪斎の博物画もある。
サンショウウオ、オサガメ、アサノハガメ。
ナマナマしさのにじむ水棲動物たち。

作者不詳の「いつかく」は一角の水棲動物。
本当にいるのかどうかは知らないが、なんだか面白い。

国芳の「尽くし」がいくつか。
蝦蟇手本ひゃうきんぐら、道化なまつ尽、どちらも大真面目に蝦蟇なりナマズなりが気張ってキメてるのが面白い。
そして弟子の芳藤はたぬき尽くしを描く。

桃太郎と金太郎を競演させるのが好き、という向きは多い。
明治初期の浮世絵、寺田ヒロオのマンガ、auのコマーシャル。
ここで改めて気づいたが、桃太郎の所にはイヌ・サル・キジ。金太郎には
クマ・サル・ウサギ、時々シカと言うメンバー構成。どちらにも縁があるのは猿なのだった。

国貞 豊国揮毫奇術競 須美津冠者義高 なかなかかっこいい。着物も脚絆も同色の水色、帯は前結びで群青色、片肌ぬぐと赤地の着物。そして巨大なネズミに乗る。
これを見ると亡くなった勘三郎が「手鎖心中」で「ちゅう乗り」をしていたことを思い出す。冥土に行くのに大ネズミに乗り、宙乗りならぬちゅう乗り。

有名どころの動物たちもぞろぞろ。
北斎漫画、江戸百の浅草田圃、窓辺で外を向く猫、国芳の山海愛度図会の猫たち、北斎の狆などなど。

擬人化ではなく、日常の中のあるあるな日常のヒトコマを描いた絵もある。
国芳 教訓善悪 小僧揃 猫が喧嘩するのを止めようとする小僧、それをぼーっと見ていて、手持ちの荷物を犬にやられる小僧。
どちらの立場にもなりそうだ。

広重 紫陽花に川蝉 色合いが綺麗。広重の花鳥画は90年の花博記念の展覧会でかなり多く見たが、これもあったように思う。垂直落下するカワセミ。顔つきが「コブラ」に出てきたロボット使いのマリオに似ている。

2代広重 鰈の天日干し なかなか壮観。ずらーっと並ぶ。買いにいきたくなったわ、産地直送の鰈。おいしそう。
そしてやっぱりこの人の名を見ると一ノ関圭「茶箱広重」を想うのだった。

風景に存在する動物たちの絵も多い。
浮世絵や18世紀の京都画壇の絵には和やかな心持になるものがたくさんある。
これは西洋の絵ではなかなかないものだと思う。

ナンセンスなのも大好き。



そうそう、八犬伝の毛野の着物がわんこ柄と言うのもあった。

どこを見ても楽しい浮世絵動物園でした。
こんな企画は言葉がわからなくても楽しめるから、外国人や子供のお客さんもみんな楽しめる。
また数年後さらなるグレードアップした「またまた帰ってきた浮世絵動物園」に期待している。
5/28まで。





 
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