美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

挿絵本の楽しみ ―響き合う文字と絵の世界―

静嘉堂文庫の「挿絵本の楽しみ ―響き合う文字と絵の世界―」展は好みの展覧会だった。
大体が挿絵好きなわたし。この展覧会は外せませんわね。イメージ (304)
喜んで向かったが、乗物の都合で出足が遅れたのがちょっと残念。
なにしろ内容が深いので時間不足になりがちですわ。

・錦絵の中の文字
浮世絵の場合、絵が主体で文字は脇。
国貞 新版錦絵当世美人合 文化12年当時人気の女形の役者を気取る市井の美人を描く。
粂三きどり、杜若きどり 

・神仏をめぐる挿絵
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姚秦鳩摩羅什・訳 妙法蓮華経変相図 この名乗りがなかなか… 本自体は南宋の写本。仏も罪人も坊さんも動物もみんなチマチマと可愛い。中には、唐時代の人気フィギュアの「平伏さん」(!)もいたり。唐子も可愛く、なんだか動物園と遊園地が一緒にあるところのアトラクションの最中、という感じ。妙にみんな和やかだし。
これは頭が大きくて二頭身半のキャラだからかもしれない。

太乙集成 明代写し なんだか神仏のよこした軍隊みたい。神兵。

善光寺本地 1718 阿弥陀像を引き上げた兄弟が像をおんぶして向かう所。
もうこの頃はすっかり信仰の地として高名だし、この話も知れ渡っているから、異本もたくさんあったろう。そして買い手は自分好みの絵師の本を選んだかもしれない。

・辞書、参考書をめぐる挿絵
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景徳鎮の五彩のやきものの図像も展示。大魚の上に立つ人の図像は即ち科挙に首席合格という意味だそうな。そうだったのか。
竜に乗るのは呂洞賓、鯉に乗るのは琴高仙人、鵞鳥に乗るのは帝釈天、口車に乗るのは…

初代秦蔵六 青銅文昌星像 1887 おお、笑いながら走る姿で表現、黄金バットのご先祖ですな。←チガウ。
この星の擬人化さんは大抵筆と硯を持って走っている。北斎も描いたし、泉屋博古館にも像がある。

以下、作者でなく編者の名があるのだが、もうそこまできちんきちんと記せない。
適当な書き方で悪いが、それでいきます。

郭璞 影宋鈔絵図爾雅 晋代のを清代に刊行。日本国内では岡山や新潟や静岡の大学が違う版のを所蔵しているみたい。←今調べた。
内容はわたしには正直わからないのだが、ただ挿絵を見ると二重写しのような絵ばかり。
本体に寄り添う影身とでも言うべきか。

解縉 永楽大典 古い青銅器の図解などがあった。犠尊図など。犠首や饕餮くんがいるね。

三才図会 半裸で体操する図が出ていた。
今調べると、この「三才図会」のDBを制作された方がおられました。こちら
ただし、DBは清代の絵。展示は明代に刊行されたもの。

和漢三才図会も並ぶ。

欽定古今図書集成 顔が9つある開明獣がいた。わたしは諸星大二郎「孔子暗黒伝」と佐藤史生「ワン・ゼロ」の開明獣のイメージが強いので、この顔が9つのはどうも違和感がありすぎるな。

中村惕斎 訓蒙図彙 寛文年間から刊行された図解本。絵と解説がセットで様々な分野にわたっている。わたしが見たのは松や杉の絵など。国立国会図書館デジタルコレクションで見ることが出来る。
こちら

元禄年間には「人倫訓蒙図彙」として職業の紹介本も出ている。

・解説する挿絵
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万暦年間に出た墨のカタログもある。なにしろ明の文房具はオシャレなのだ。
芥子園画伝、本草図譜などの綺麗な植物図鑑もある。こんなのは見ているだけでも楽しい。
イメージ (312)
やまつばき。丁寧に写生し、その特性を記す。

桜も石楠花もみんな丁寧。
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明から清に出ている本の三顧の礼図、雲南美人図なども楽しい。
谷文晁が模刻したのもある。

宋応星 天工開物 1637年刊行の、どう見ても1960―70年代の少年雑誌のグラビアにある「未来の生活道具」みたいなものが描かれている。不思議な面白さがある。一種の開発ものなのかな。
調べたら産業技術書だそう。なるほど、それで未来感があるわけか、楽しい。
平凡社の東洋文庫から今も出ている。

馬琴の歴史考証本もある。
その馬琴の息子で早く死んだ宗伯と渡邊崋山は仲間だったそう。

崋山 芸妓図 静かな美人である。賛があり、その翻訳を静嘉堂は別摺りで配布。
読んだらけっこうナマナマしいことを崋山は書いている。
イメージ (311)

・記録する挿絵
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紀行本、漂流記など一括して「旅先スケッチ」の本が集まっている。
長久保赤水 東奥紀行 これはタイトルしか知らない。 水戸から松島などを巡ったそうだ。文化財オンラインにもある。

司馬江漢 西遊旅譚 なにやらシュールな挿絵だなあ…

菱屋平七 筑紫紀行 どこやらで清人の揮毫を見たところが出ていた。
こういうのを見ると思い出すのは谷崎「瘋癲老人日記」で老人が昔見た風の中で拓本を取る中国人の姿。
そう、とても上手だという話。

山本清渓 あたみ紀行 温泉本。四角い浴場が二つ。熱海は人気でしたからなあ。
そうそう、「鬼平犯科帳」でも長谷川平蔵が骨休みに熱海に行き、事件を解決する話がある。

間宮林蔵述/村上貞助記 東韃紀行  交易の様子をカラーで描く。一人乗りのカヌーが描かれている。

松浦武四郎 天塩日誌 アイヌの人々の絵がある。
面白いのは「知床日誌」の挿絵。四頭のゴマフアザラシ、白アザラシなどが丁寧に描かれたページ。
種類色々。

漂流記が三種。
大槻玄沢・志村石渓 環海異聞 アジア、アメリカの地図があっさりと。なんか変なパーティ図もある。

大槻玄幹(玄沢の子息) 広東漂船雑記「続海外異聞」巻6 聞いた話をまとめるのもなかなかたいへん。

前川文蔵・酒井貞輝/守住貫魚 亜墨新話(初太郎漂流記) メキシコ漂流記。地図もあり、三階建てビルや船の絵もある。

漂流記と言えばジョン万次郎が思い浮かぶが、異国ではみんななかなか親切にされているようだ。
大黒屋光太夫もエカテリーナ二世から「おお、可哀想に」と同情され、よくしてもらったというし。
鎖国してあんまりよそさんとお付き合いがないと、情報を得る存在として向こうでは貴重な扱いになるよね。

・物語る挿絵
イメージ (310)
この「琵琶記」は蔡邕と趙五娘の物語だが、その展開と挿絵を見ていると、蔡を罵りたくて仕方なくなる。
流されて生きている。そしてその場その場でにやにや笑いやがって。
元の妻の苦労、今の妻の健気さ、どちらもこんな男のために尽くすな、勿体ない。

隋煬帝艶史 タイトルだけ見てたらあれだが、要するに煬帝がいかに遊び過ぎでむちゃくちゃかを記している。なにしろ暴君で有名だからやることも本当にめちゃくちゃ。だから絵はけっこう華やか。

唐書志伝通俗演義 隋から唐建国の話。煬帝の妻・蕭皇后が突厥へ送られる辺り、李世民の戦闘シーンなどが出ていた。
ここらはとても面白くて好きなのだよ。

邯鄲の夢、豫譲、三顧の礼など江戸時代によく知られたエピソードが根付や印籠のモチーフになっていた。
江戸時代はこうした話を多くの人が共有していたのだ。

伊勢物語 水無瀬で花見するシーンがある。

羅生門 奈良絵本 これは「大江山」の後日譚ということで、黒鬼は牛鬼らしい。綱の兜を掴んでますな。
イメージ (314)

大織冠 フルカラーのミニ本仕立て。豪勢な本。

他に「雨宿り」「住吉物語」なども出ていた。
京伝、北斎らの挿絵の狂歌本もある。

西廂記図のある青花瓶もきれい。
粉彩封神演義図缸。太公望が変な獅子に乗り軍を向かわせるところ。三軍司令は馬に乗るがなかなかの美丈夫ではないか。
誰だったかな、これ。

とても楽しい展覧会だった。
こういうのをまた見たいし、見ててその本を読みたくなった。
調べものをするのも楽しかった。
後まで残る、いい展覧会でした。
5/28まで。

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