美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

白鶴美術館「作品は深く語る 中国・日本美術の地平」展をみる

二日続けて阪神間へ出向いた。
北摂と阪神間は近いが、それでも阪急宝塚線から阪急神戸線に乗り換えると、心持がだいぶ違ってくる。
関西は近接した地域が、それぞれみんな個性を別にしているのが面白くもある。

今回は御影の白鶴美術館と苦楽園の黒川古文化研究所で見たものの感想を続けて挙げる。
二つの展覧会に共通点が色々とあるので、一日のうちに挙げる方がいい。
それぞれ記憶が混ざり合うこともないのだが、分けて挙げるより一緒にした方がより楽しさが増すように思っている。
共通するところがいろいろある、ということが大きい。

この二つの美術館は共に山の上にある。
白鶴はまだそれでも歩いてゆけるが、黒川は土日のみだが送迎バスを出してくれるようになり、本当に助かった。
このバスがなければ市バスで栢堂からあの坂を上って…クラクラする。
相当な斜面なのである。
行かれる予定のある方はご好意に甘えて送迎バスのある日に行かれることをおススメしたい。
なお、白鶴は市バスが阪急ではなくJR住吉から出ていて、ほんの近くにバス停があるので、歩くのがつらい方はバスで往来することを勧めたい。

先に白鶴へ行ったのでそこから始める。
イメージ (382)

知らない作品よりも見知った作品の方が多く出ていて、再会に喜ぶ。
じっくりと眺めた。

唐三彩鳳首瓶 これも以前からのなじみもので数年前にはチラシのTOPを飾った。
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色垂れの具合がハーブソースのような感じで、鳥の丸焼きハーブソース添えに見えるのが楽しい。
「不易流行」

白地黒掻落龍文梅瓶 出ました。山中理さんの発見した肉球のある龍ね。
外線がけっこうとげとげしいのが、タコを食べない文化圏の人が描く悪魔の蛸ぽい。
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うまいことこのチラシには今回登場の作品が出ている。

白鶴美術館は十年ばかり前から解説も一新し、読み応えのある内容になり、とても勉強になる。
あんまりキャプションは読まない方なのだが、ここまで詳しいのはただただ勉強となる。
それは黒川古文化研究所でも同じで、特に中国青銅器、古陶関連のそれは、非常に勉強になり、知らないことを教わることも多いので、熱心に写す。
そこからまた自分でも調べたりするので、本当にいつも有難く思っている。
つまり自分なりに不思議に思ったり、興味を持ったり、疑問を懐いたりする要素があり、知的な愉しみが生まれてくるのだ。
そそのかされる喜びが大きい。

黒釉銹斑文茶碗 先の龍同様北宋の磁州窯の産だが、これは北方のもので「河南天目」というくくりの中に入るそう。
浅く開いた碗。銹斑は一名「銹花」とも呼ばれ、その呼び名は可愛い。

口当たりの良いように銀覆輪のついた禾目天目茶碗、見込みに1つ、周囲に12の梅花が咲く玳玻梅花天目茶碗、この辺りはおなじみ。

水色系の南宋の青磁鳳凰耳花生の兄弟は「千声」「萬声」。
オリーブグリーンの巨大な青磁鉄鉢は元代。
この二つが同じケースに入っている。

東洋陶磁には青花の魚藻文壺の良いのがあるが、ここには五彩のそれがある。
鯉はみんなオレンジ色。
壺の上の空間に、開放された窓から差し込む緑の影が拡がる。ガラスは戦前のもので、綺麗なひずみを見せている。
それが風と光で揺らぎ、水面のように見えた。
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2010年のチラシに睫毛獅子が現れたが、かれが住まうのは明代の大壺。
金襴手獅子牡丹唐草文八角大壺 胴部分と首回りの地模様はそれぞれ違う。七宝繋とそれからこれも連続文。

五彩武人図有蓋壺 出ました、好きな壺。
明代のこれを見ると、それより時代の古い北宋が舞台の水滸伝を想ったりする。
今回丁寧に眺めましたわ。
チラシにある位置を正面として、身分のある人の前で武人二人が演武を見せる。周囲には文武官。彼らをじっくりと観察した。
正面から向かって右へ逆時計回りにみてゆく。
・椅子に座る武官の獅子噛みバックル、その獅子にも睫毛があり、この獅子は左側で行われている演武を見ようと横目になっている。
・そこからずーっと行くと、城壁らしきものが見えてくる。三段くらいの段差のあるやぐら状のものが整然と並ぶのが遠目にわかる。
・正面の真後ろ。白馬を御す人はターバンを巻いて目が鋭い。胡人かもしれない。彼らを先導する若者は旗を持ち、なにやら嬉しそう。その若者の被り物には山鳥の羽が一本ささる。蛮夷の将兵のようでもある。
イタリアのベルサリエーリはワサワサとつけていたな。
・どんどん兵が増えてゆく。やがて正面の向って左辺りに来ると、衛兵らしきものがいるが、その手にしている棒先の斧の背には龍が噛みついている。
龍もまた演武が気になるような顔をしている。
・壺の下段の青獅子たちは時計回りに走りながら後ろを見ている。みんな睫毛が長くて、のんきそうな顔つき。

そう言えば模範演武といえば、今ではハリウッドスターのジェット・リー。彼は北京育ちの人だが、9歳の時ニクソン大統領(当時)の前で素晴らしい武術を披露したそうだ。
時々凄すぎる人がいるが、彼を見ていると本当に抜身の刃のようで、息を詰める。
この演武はけっこうのんびりしている。
「駿河城御前試合」とは違うのだよ。

鍍金獣型隅金具 戦国時代 これはちゃんと角を正面に見てみると、獣の顔がはっきりとわかる。そしてこの獣たちは「スキタイの影響を受けた動物文」ということで、なるほど確かに羊風な角を持つもの。胴は二つあるが顔を共有している。
「スキタイの黄金」を集めた展覧会は90年代にしばしば見ている。
京都文化博物館91年「南ロシア騎馬民族の秘宝」、92年「スキタイの黄金」などなど。

同じ辺りから出土した金銀象嵌飾軸金具は豹を貼り付けていた。細い象嵌で直線と豹の柄文@@を表現。

硬玉勾玉付金鎖頸飾 福岡の古墳から出たそうだが、非常に巧妙精緻な鎖で、説明を読んでも理解できなかった。とても複雑な構造の鎖。
中央で絞り、8の字に折っていったのを重ね折りして、同様に…
あああああ。
まあだからこそ綺麗なのだな。こうした構造は数学的要素で構成されている。
緑の勾玉は5つ。

物凄く細密描写なものを続けて観る。全て唐代
鍍金龍池鴛鴦双魚文銀洗
鍍金花鳥獣文銀杯
鍍金狩猟文六花形銀杯
ミリ単位の表現ですわ。凄まじい技巧。
怖いことに凝視し続けているとその細かい描写がくっきりと見えてくるのだよな。
寝そべる鹿、走る猪、小さな植物…
鏨でやる「蹴り彫り」という技法があるそうで、「楔形の彫りを連ねて線にする」とか。
こんな細かいものを彫るだけでもクラクラものなのに、更にそんな技巧が…
花鳥獣文の方は33匹の獣がいるそうで、見た限りほんと、みんな自由自在。
唐代の異常なまでの技巧に唖然とするばかり。

鏡を見よう。
白銅海獣葡萄鏡 銀色で綺麗。ここでこの金属の構成物質とその成分が紹介されている。
表面には葡萄、柘榴といっためでたい果実が巡り、その輪の中には狻猊がそれぞれ好き勝手な様子でくつろぐ。狻猊は何科か知らんけど、ネコ科の幻獣だろうから、やっぱりちょっと気まま。とはいえ獅子吼してるのもいる。
よくよく見ると爪も出てますな。牙も歯並びも見える。
裸眼でこんなけ見えるってわたしすごーい! と言っておこう。
じーっと凝視してたら見えてくるもんですなあ。
麒麟、天馬、鸚鵡らもいる。羽もシャギシャギしている。

銀貼海獣唐草文八稜鏡 鈕はうずくまる一角獣。周囲に8つの輪上の花びらが列び、それぞれに狻猊がたむろする。なかには親子連れもいる。その外には鴨、鶴、インコ、カササギがいるそうだが、そこまでは確認できなかった。

イメージ (383)


二階に上がり青銅器を楽しむ。
饕餮くんがたくさんいるのが楽しいですよ。
犠首も羊角をつけたものからちょっと違うものまで。

尊で、犠首の上に向かい合う四足獣がいるのがある。
四隅に角付き犠首くんがいて、大きな目を開く。饕餮の目も大きく丸い。
この尊で学んだことがある。
「中に『亜』の字が」あるそうで、亜〇となっているらしい。
他のにもそんな字があったことから、それは葬送儀礼の職能集団の名称かもしれないようだ。
こういうことを知るのがとても楽しい。
このことから、「他の青銅器に残る文字を知りたい」と思うし、調べたくなるのだから、本当にいい導きだ。

饕餮文斝 この器の口べりに二つの飛び出たものがついているが、遠目には明治製菓の「きのこの山」の大きなのがある、という感じ。そしてその茸の笠には6の字を回転させていったような文様が入っている。

今回、ゾウさんが三点。
象頭兕觥 ゾウトウ・ジコウと読むのだったかな。取っ手の犠首は角付きで胴長。ゾウさんは耳がロバっぽい。

象文卣 ここのゾウさんはあれよ、ちょっと様子が違うのだよ。
「くまのプーさん」で言うと「ゾゾ」、「指輪物語」でなら「オリファント」ですわ。少なくとも現行のゾウさんとは別な生命体ですな。

あと尊もある。その尊の出土場所からはゾウさんの骨と象使いの人の骨とが出て来たそうな。

象柄で一番好きなのは出光美術館のゾウさん。
しかしここのゾウさんたちも可愛い。
哀しいのは藤田美術館のゾウさんたち。
ザザビーズでどこかに引き取られていったようだ…

法隆寺の金銅小幡もあった。目ヂカラ美人の飛天三人組。

賢愚経もある。やっぱりいい手蹟やな。
軽くそんな感想が言えるのもありがたいことです。

楼閣人物文螺鈿盒子 元 ここの楼閣は婦人や子供らもいて、みんな色々楽しんでいる。巻物ひろげる人もいれば、琴弾こうかというのもいるし、操り人形を見せる子供に、それを差す子供もいる。

こういう風に色んな人が楽しそうなのはいいのよ。働く人から遊ぶ人まで。
山水画や禅画がイヤなのは、おっさんの身勝手さが絵になってるからなんよね。

伝・住吉如慶 源氏物語画帖 薄い金と薄い墨の落ち着いた画帖でこの温和な様子、いいなあ。

薬師如来画像 敦煌出土 これは初見。五代時代 どうやら仏画(供養としての)制作集団がいたそうで、パターンを決めておいて受注製作していたみたい。
なるほどなあ。
敦煌の仏画と言えば大谷探検隊が真っ先に思い浮かぶけど、実は映画「敦煌」で柄本明が廃人になり、絵を描くだけで生きているシーンを思い出すのよ…
あれは怖かった。

伝・狩野元信 商山四皓図 大きな松のそばで世から逃れてきた四人組。侍童の背負う籠には金色の霊芝がたんまり。いくらでも長生きできそう。

冷泉為恭 石清水臨時祭屏風・年中行事騎射図屏風 桜の頃で右はのんびり。
左はちょっとトラブルもある。この絵も二年ぶりか。

円山応挙 楚蓮香 三年ぶりの再会。最初に白鶴美術館のチラシを手に入れたとき、この美人に惹かれたのだよなあ。もう随分前の話。震災前かな。
甲寅仲冬とあるから1794年
楊貴妃以前は細身美人が人気だった。
スカートは亀甲花柄、腰巻は白地に金で花柄、袖や襟の飾りは青地にモクモクと白雲のようなもの。見ようによっては刃の紋。これは他の応挙唐美人に共通するものだそうで、好みだったのかも。
髪飾りは金製の小花寄せ。ビーズの飾りも左右にある。
白い蝶々がひらひら。

最後に別館の絨毯。
20世紀半ばの絨毯もあったが、あれは初見。
花柄のものも羊の小さいのが歩くのもいい。幾何学的なものよりちょっと可愛い目が好きだ。

ああ、今期もいいものを見たなあ。
次は秋からだが、ほんと、楽しみ。
いい季節の頃に向かいたい。

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