美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

藤田美術館 ザ・コレクション 

藤田美術館が今回の「ザ・コレクション」展を以て、今の建物での展示を終わるという。
昭和29年の開館時からの趣ある建物だが、確かに老朽化というものはあった。
空調もないので自然な風だけがたよりという状況でもあった。
残念だが、仕方ないというのもある。
このお蔵の美術館は天井の梁などはしっかりしているものの、わたしたちの見えないところでやはり耐え切れなくなってきているのだろう。
なにしろ美術館になったのは確かに1954年だが、その以前から建っているのだ。

藤田男爵の邸宅の敷地内に今も残るのは、このお蔵(コンクリート製)、お庭の多宝塔、元の東邸(現在は淀川邸)だけなのだ。
あとはみんな空襲でアウト。貴志康一の生まれた家も焼失。
1910年代から次々と建てられていった建物のうち、かつての姿を多くとどめているのはここということになるか。

淀川邸は1910年に完成したが、保存のためにかなり手を入れている。
現役のお食事処なのだから当然の話である。
わたしなどでも何かめでたいことがあればここでごちそうをいただく。
古い大阪人はこことロイヤルホテル(現・リーガロイヤルホテル)が和洋の「ええところ」なのだ。
その淀川邸、何度か撮影しているのに、意外なことに挙げていなかったので、後に挙げることにする。

かつての敷地内にあったもので、後に大阪市長公館、現在はウェディング施設になった「ガーデンオリエンタル オオサカ」の写真はこちら

さてそうした話が世に流れて、わたしが訪ねたとき、かつてないほどに美術館が混雑していた。それも学生などの団体ではなく、個人客ばかりの混雑で、いつもの様子と大いに違っていてびっくりした。

この美術館のよいところは小ぢんまりとしたところで、名品を知らん顔して古いガラスの向こうに蔵って見せていることだった。
今<蔵う>しまう、と書いたがこの美術館ではその字が似合うように思う。

2階から眺める。

雪舟自画像(模本) 室町時代 サザエさんのアタマがもっとゆったりしたような帽子、あれをかぶって→むきの顔。あの頭巾の正式名称を知らないのでこういうしかないのだが、イメージとしては伝わると思う。

題雪舟山水図詩 了庵桂悟 室町時代 ラストの「大明阿育王」という字だけは読めた。

熊野懐紙 久我通親 鎌倉時代 後鳥羽院の熊野ツアーに同行した時に読んだものなのでこの名がある。
詠山路眺望和謌 のタイトルがついていた。

阿字義 平安時代 これは「阿」の種字を胸に抱いた人々が次々に現れる絵巻。
出ているのは尼さんと公家だけだが、なにやら音楽に乗って登場し、流れてゆくような感覚がある。「阿」の字はピカリと光っている。
詞書にはルビ有。

継色紙 伝・小野道風 平安時代 表具がいい。中回しには竹と鳳一羽。まだ若そうで、ちょっと可愛い。

金銅造釈迦三尊像(太和銘) 482年 緑青が吹いていて、光背も多少欠落しているが、釈迦も左右の仏もきれいはきれい。

二階の最奥の大きなガラスの向こうは畳四畳が並列している。
ここの記憶と言えば竹内栖鳳がヨーロッパから帰国後に描いた「大獅子図」がいちばん印象に残っている。
いわゆる獅子ではなくライオン。堂々たる姿。
今回は出ていない。

替りにここには鎌倉時代の金銅密教法具がずらーっ。
きちんと正方形に配置されている。まるでディナーセットのようでもある。
四畳のうちほぼ三畳分を抑えていた。

向って左端には掛軸がかかる。
物初大観墨蹟 山陰語 南宋時代 更紗風な唐草の表装がきれい。

ひずみガラスのケースに収まる名品を見るのも楽しい。
金銅荘唐組垂錺飾 飛鳥時代 赤地の唐織りも鮮やかな色と文様が活きている。
ティアドロップというか棗型鈴。金具は花柄で全体がとても可愛い。

二重切竹花入 銘 よなが 千利休 桃山時代 銘の「よなが」には諸説があるが、竹の節間を「よ」と数えることにも由来があるらしい。
竹製の楽器の代表に尺八があるが、その前身は「一節切」ひとよぎり というもの。なるほどと思う。
今回は添え状も展示。

古瀬戸肩衝茶入 銘・在中庵 室町時代 傍らに6つの仕覆があるのが微笑ましい。蓋は象牙製か、こちらは7つ。
屈輪盆に収めているようで、それが重ねリングのような形状なのもいい。

砧青磁袴腰香炉 銘 香雪  南宋時代 砧らしい水色青磁の色。香雪は藤田傳三郎の号。
火屋は傳三郎により新調された花唐草。とても可愛らしい。隙間のゆったりしたもの。

仏功徳蒔絵経箱 平安時代 箱の内外の絵はそれぞれ法華経の物語を記している。
イメージ (38)-9
蓋表、鳳が飛び交っている。他に琵琶や笙などの楽器が浮かぶ。
かぶせるタイプの蓋物で、5面それぞれ物語風な絵柄がある。
波の上をゆく仏たち。
本体の四面もいい。
正方形の側面1には雨が降る様子が、その対には坊さんと狼たち。妙にその狼らしきものが可愛いので、以前の展示のとき小さくメモを取った。こちら
正面には何かしら集まりそれぞの動きを見せる人々が描かれ、その対には木のそばにいる仏が描かれ、拝む人々もいる。

交趾大亀香合 清時代  かつては明から清と表記されていたが、今度は清代となっている。
近年のサントリー美術館での「国宝曜変天目茶碗と日本の美 ―藤田美術館」展、先般の東博「茶の湯」展でもこの亀さんは大人気だった。
サントリーでの感想はこちら

待ち望んだ末にようやく藤田男爵の手元に来た大亀さん。
これで茶会を開きたかったろうが、気の毒に実際に触れることなく、九日後に没している。
それでも死の床に大亀さんを連れてきた息子は孝行ものだ。
江戸時代から香合番付で横綱クラスだった。
この亀さんはカラフルな甲羅を持ち、黄色い手足を出している。
よくよくみれば首のすぐ左横にちょっと釉の剥がれているところがあるが、瑕ではない。可愛い大亀さん。

二階はここまで。
なお、以前にこの藤田美術館二大スターを使ったチラシがあった。
mir918.jpg
当時の感想はこちら

ちょっと建物のことを書く。
二階の天井を見上げると、継のない立派な梁が長く伸び、垂木は5本ずつ。
一階はやや天井が低いものの、こちらも強固な構造に見えた。
この辺りを見ただけではまだまだ大丈夫そうにも思えるのだった。
だが、わたしは素人なので、耐震性などは観ただけではわからないし…
使いまわしはしないだろうな…

一階へ。
こちらも随分な人出である。

春日明神影向図 高階隆兼 鎌倉時代 以前に記したことを転用する。
これは藤原北家の流れを汲む鷹司冬平の夢に現れた神の姿である。牛車に乗って庭にまします。
しかし牛も消え、さらには神の顔は御簾で見えないままである。神や貴種は顔を描かれないことが多い。
更にその牛車の上には5つの円内に収まる神仏が居並ぶのだ。
「先年余夢中奉拝祖神春日大明神俗躰着・・・」
藤原家の祖神は鹿嶋から来ている。それが春日大明神になった。そのことを記している。
わたしは「平安貴族の見る夢にはどことなく恐ろしさがある。」と以前に書いた。
今回はそこまで思わないものの、どこか水底にいるかのような心持になる。

玄奘三蔵絵 巻五 祇園精舎へ着いた玄奘だが、彼らの前には荒れ果てた廃墟が広がる。
秋の日のことで、残された庭園の木々にはまだ季節は訪れているが、荒涼としたわびしさがある。
誰のか知らぬ髑髏も転がり、狐たちの住まいになってもいる。
一体いつからここはこんな風に衰退したのだろう。
sun721.jpg

千体聖観音菩薩立像 平安時代 大半は剥落しているが、首飾りだけは金色に光っていた。
なにかお年寄りが若い頃の記憶と共に大切にしてきたネックレスが、老境の今となっても輝きを失わない、というイメージがわいていた。

平家琵琶 銘・千寿 室町―桃山時代 「平家物語」を演奏するために特化した琵琶。
イメージ (19)
名は平重衡の側女の千手前から。撥面に山水図。銀月がある。その月で平家琵琶だということになる。
琵琶についての詳しいことはこちら

古代裂帖 刺繍で三人の天女が描かれている。頭上で二つに分けて括った髪をぼてんとしているもの、きちんと結い上げたものなど三種。三人の会話が聞こえてきそうなくらい、表情がはっきりしている。

花鳥海賦文辻が花染残闕  桃山ー江戸時代  シマシマに四種の文様を集めている。波模様がなかなか激しい。

国司茄子茶入 宋―元  可愛らしい。四つの仕覆がある。しかし前回みたとき「元々に包まれていたお仕覆は白極緞子とかで、今は木枠に嵌められて保管されている。濃縹地に文様が入ったもの。」と記していることから、もう今はあまりこの仕覆を身に着けないのかもしれない。

紫式部日記絵詞 鎌倉時代  長々と伸びて5シーンが出ていた。
9/15 秋の日、親王誕生の祝宴の引き出物を肩に担いで帰る公卿たち。庭には篝火が2つばかり。

9/16-1 道長の子らや女房達が大騒ぎしながら庭の池に舟を浮かべて遊ぶ。女4男2のグループ。

9/16-2 門前には天皇仕えの女房達の牛車と牛たち。斑の牛を曳く牛飼いは目元しかわからないが、なかなか可愛い。

9/17 紫式部による中宮彰子のお見舞い。中宮や乳母たちへの贈り物の包みがたくさんある。御簾の中の話。

日時不明 一条帝の行幸時に遊んでもらう用の竜頭鷁首のチェックをする道長。
このシーンが一番よく表に出ていると思う。

奈良時代の舞楽面の蘭陵王、江戸時代の能面の般若がある。陵王の鼻が欠けていた。般若の金目・金歯がよく目立つ。

大井戸茶碗 銘・蓬莱 朝鮮時代  細い金継がまるで首飾りのよう。カイラギもまた…

曜変天目茶碗 南宋時代 光り方がとても綺麗。中の星はそれぞれの大きさと方向性の違いがはっきりしている。
傍らの螺鈿の天目台もいい。

いいものをこの場所で見た、ということを忘れずにいたいと思う。
6/11まで。

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