美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

アカデミー・バーの壁画を描いた作家たち 

大抵の人には自分の記憶に残る場所があるだろう。
それは図書館だったり映画館だったり、あるいは校庭の片隅、坂道の途中、または何かの店。

アカデミー・バーと呼ばれた店がつい近年まであった。
場所は昔の関西学院の近く。
いい環境だった。場所柄そのバーはみんなから「アカデミー・バー」と呼ばれたそうだ。
そこには壁があり、みんながそこに絵を残した。
この展覧会はアカデミー・バーに絵を残した画家たちの紹介をするものだった。
神戸ゆかりの美術館「アカデミー・パーの壁画を描いた作家たち」展
イメージ (489)
わたしには縁もゆかりもないものの、心惹かれる展覧会だと言える。

この壁画を閉店したバーが剥がして保存している。
それが今、神戸ゆかりの美術館に来ている。
今後のことは知らない。

壁画の絵についての説明がある。
誰がどれを描いたかということ。
一つ一つを見ると納得もし、また新鮮な驚きもあり、初めて知る人の絵も多く、面白い。
全体で見ると抽象的に見えるこの壁画もそうした説明があることから、観る眼も変わってくる。
面白いと思う。

作家たちの絵をみる。
イメージ (493)

小磯良平の絵は全て同じ六甲アイランドのご近所さんである記念館からのもの。
なので見知った絵が多い。こういう時は「なんだ」などとは思わない。
「来ていただけますか」「もちろんですよー」
そんな会話を想像するのが楽しい。
学芸員さんたちの会話ではなく、小磯良平の絵たちと、その「企画展」そのものとの会話を想像するのだ。
「たまにはよそでおひろめされるのもいいねー」
とかそんな声を聴くのだ。

そして当然ながら見ていない絵にも会うことがある。
フレスコ画だった。
鳩と婦人 1959 色が妙に魅力的だった。

田村孝之介 彼の絵も色々並ぶのが嬉しい。
以前に小磯記念館で田村の回顧展があった時、うっかり行き損ねてしまった。
たいへん残念な記憶がある。
わたしは彼の油彩より先に挿絵をみて、それで好ましく思った。
シンプルな線描でさらりとした素敵な絵だった。
里見弴の小説の挿絵だった。
今、こうしてかれの油彩画のいくつかを目の当たりに出来たのは嬉しい。

N嬢の像 1932 目元の綺麗なモガ。個性が強い。

二人の裸婦 1957 一人は俯き、一人は横顔を見せる。肉のリアルな実感がいい。たるみもいい。

海をたたえる 1959 群舞する人々。好きな絵。
イメージ (490)

生涯にわたり神戸の洋館を描き続けた小松益喜の絵は11点。
戦前の英三番館、終戦直後の居留地、そして神戸を出て大阪中之島界隈を描いた絵もある。

中之島風景 1950頃 朝日新聞社と界隈に残っていた洋館とを、肥後橋からの視点で描いている。
今では失われた風景であり、絵としても面白いが、資料としても貴重。

淀屋橋風景 これはミズノかな…こうしたかつての情緒ある都市風景画を見るのはとても楽しい。

神崎川 1950頃 線路沿いの工場などもある。この頃の神崎川はたいへんだったろう…

自宅近辺 1950前半 おや、ごく普通の和洋折衷の民家の並ぶ町。

津高和一 阪神大震災で亡くなった画家。
まだここにある作品は形を見せたものだった。
わたしはこの人がなくなったことで初めて作品を知った。
手遅れの愛。

榎倉省吾 丘と内海 1933 これは最初に見たとき、何を描いているのか本当にわからなかった。
姫路市美術館の「描かれた姫路」展のチラシで見たと思う。
まさか大根がたわわなんて本当にわからなかった。

今ではこの神戸ゆかりの美術館に所蔵されている小出卓二の作品は以前は相楽園会館にあったものだそうだ。
相楽園はいいところで好きだが、そんな会館があったのか。知らなかった。
以前撮影した相楽園の写真はこちら

真っ赤な絵がいっぱいあった。
神戸、大阪を描いた風景なのだが、みんな赤い。燃えているかのようだ。
神戸や大阪がこんなに赤いのは空襲を受けたみたいではないか。
描かれた時期は大体昭和30―50年代だった。もう戦争は終わっている。

火の海(阪神夜景)1959 摩耶山の掬星台からの眺めらしい。なんでこんなに赤いのか。
日本画で真っ赤なのは奥田元宋だが、洋画では小出卓二なのか。

神戸港 1964 赤い船、赤い影。ううむ、赤の使い方が派手だ。
埠頭を描いた他の絵も真っ赤。

牡丹 1970頃 これは他の色彩がある。造花のような牡丹。なにかしら官能的である。

大阪の尻無川を描いた絵も二点あるが、何を言うてええものやら。なんだか体力が消えた。

詩人・竹中郁の絵もある。
アトリエにて 1951 絵を描く女を描く。
こういう構造は入れ子式というのか、錯覚が続くようで面白い。

坂本益夫 このヒトも初めて知った。
風景(山手)1950年代 御影だろうか。乾邸に似た感じの邸宅がみえた。

ブイのある風景 1953 モダニズムというべきか、時代も丁度そうだし。建築のモダニズムを絵でもやった、そんな感じ。

港 面白い形の建造物がある。形の説明はちょっと難しい。

伊藤継郎 このヒトの描くのは外国とそこに住まう・いる人々らしいが、戯画にしかみえなかった。

今回の展示で唯一の日本画家がいる。
松村小琴 野口小蘋の姪らしい。随分古風な画風で、明治の絵かと思ったら戦時中のものなので、意外な感じがした。

他にも何人もの画家の絵があった。みんな絵を描き、時間をみつけるとアカデミー・バーへ通ったのだろう。

壁画があった頃のバーの様子である。
イメージ (491)
そして実物の壁画がある。

一つの時代を描いた展覧会だった。
かっこいい、と思った。
6/25まで。

こちらはそのアカデミー・バーのあった頃の原田の森を描いた絵。
「煉瓦色の記憶」展のチラシである。
イメージ (492)
画面中央の左端にバー・アカデミーの表記がある。
神戸文学館で7/30まで。
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