美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

江戸の生きもの図鑑 ―みつめる科学の眼―

最近「博物画」を見る機会に恵まれている、と思う。
2013年には「大野麦風 大日本魚類画集と博物画にみる魚たち」展を見た。
あれは待ち望んでいただけに二度も見た。
あの展覧会を見たからこそ、博物画への愛が生まれたと言っても過言ではない。
当時の感想はこちら。大概長いな。

薔薇を特に愛したルドゥーテの絵もそう。
それからキャプテン・クックの航海に同行したバンクスが諸国の植物などを記した、キャプテン・クック探検航海と『バンクス花譜集』展も見たな。
最近では静嘉堂の「挿絵本の楽しみ」展もそう。当時の感想はこちら

徳川美術館で「江戸の生きもの図鑑 ―みつめる科学の眼―」展をみた。
展覧会の紹介文をサイトから引用する。
「博物学は、動植物など自然物を観察し、その種類や性質・産地などを分類して記録する学問です。日本では、東洋医学における薬学である「本草学(ほんぞうがく)」として古くから研究され、江戸時代には中国や西洋の新たな手法による研究の影響を受けながら大きく発展しました。「図譜(ずふ)」はその研究成果の一つで、今でいうところの図鑑であり、対象が正確に、わかりやすく記録されています。ただ、写真のように対象をあるがまま写し取るというわけではなく、科学の眼で取捨選択された情報によって構成されているのが特徴です。
 知的好奇心と、探求への情熱に満ちた博物図譜の諸相をご覧いただくとともに、伊藤圭介らの活動を中核とする尾張地域の博物学についてご紹介します。」

とても関心が湧いて、いそいそと出向いた。
イメージ (499)

展示は蓬左文庫で行われている。
徳川美術館の武具・能・茶の湯・嫁入り道具などをみてから文庫へ入る。

1.美しき図譜

本草図説 195冊のうち 高木春山筆 岩瀬文庫  これがまた途轍もなく凄い。様々な「生きもの」が描かれている。
ここにあるのは鮎、オコゼといった魚類、芍薬、烏頭の漢方薬になる植物、そして見開き+継ぎ足し紙に描かれたセグロサギ。
フルカラーでこれらが非常に丁寧に描かれている。
この感想を書くにあたって徳美のサイトを訪ねると、紹介があった。
「植物だけでなく、昆虫・動物・鉱物など、あらゆる自然物を採り上げた手描きの図譜です。作者の高木春山は、全ての項目に詳細な図が備えられた図譜を製作するため、遠くまで実物の調査に赴き、財産をなげうって「本草図説」を製作したと伝えられています。」

こうした情熱があるからこそ、後世に残る名作も生み出されるのだなあ…
先日初めて岩瀬文庫を訪ねたが、あの膨大な知の集積施設が無料だというのも驚いたな。

この本は東博にもあるそうで、画像検索可能。
ちなみに岩瀬文庫のサイトには動画まである。
そして国立国会図書館デジタルコレクションはこちら

更に荒俣宏さんの本まであるようだ。

本草図譜 岩崎灌園著 1830 蓬左文庫、岩瀬文庫  日本初のフルカラー本だそう。「山草」「喬木」の項目をみる。
イメージ (504)

この本は国立国会図書館のデジタルコレクションでも見れる。こちら

国立公文書館も一部公開している。

やっぱり博物画を大事に思う人が多いということなのだ。

草木花実写真図譜 川原慶賀著 江戸―明治 蓬左文庫  先般展覧会があったが、行き損ねたが、こうして一部でも見ることが出来て嬉しい。
凌霄花、栴檀、辛夷の絵が出ていた。色々詳しいことがわかりやすく書かれていた。
国立国会図書館デジタルコレクションはこちら
この本は他に早稲田、長崎大、外国にも収蔵されている。

飯沼慾斎というヒトに描かれた魚図鑑がある。いずれも名古屋市東山植物園蔵。
魚譜  ウスバハギの大きいのがページいっぱい。  
魚介譜  白描によるオコゼなど。
禽虫魚譜  …リアルやな。
幕末から明治のヒトは工芸だけでなく絵画も「超絶技巧」な人が多いのだろうか。

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伊藤圭介筆・編の著作がずらり。名大附属図書館蔵 江戸―明治の刊行
錦窠植物図説 きんか・しょくぶつ・ずせつ。
この「きんか」シリーズがたくさんある。錦窠は伊藤の号。
シーボルトの弟子で、日本初の理学博士。随分長生きし、「花粉」「おしべ」「めしべ」という言葉を拵えた人だそう。
・・・花粉症のことを知ったらどうされていたろう。

ところで展示説明によると、
「圭介の図譜のうち伝存する手稿本(しゅこうぼん)の多くは、自作に限らず蒐集した図や印葉図(いんようず)(植物の拓本)も貼り込まれています。」 
とのこと。 
出ていたのは桐の写生、クルミなどの拓本、椿もある。

全く知らないことばかりなので、とても興味深く見、そして後日こうして調べるのが楽しい。

虫譜、魚譜、獣譜のシリーズもいい。グジが出ていた。アマダイ。
そして伊藤の使った顕微鏡もある。ヨーロッパ製。島津製作所はまだ。

安喜多富貴印葉図 宮越精之進作・伊藤圭介識 1882  拓本を取ることで葉脈の細かい所まで余さず写せる。
以前に聞いたが、写真よりも正確なのだそう。
巨大なフキの葉っぱの印葉。コロボックルが雨宿りに使えそう。

萬花帖 巻9 24冊のうち 山本章夫筆 江戸―明治 岩瀬文庫  ユリの絵が選ばれていた。山本は大阪の森徹山に学んだ。
他に果物で葡萄、禽品で鶉が出ていた。
そして獣類写生 ミダヌキ(アナグマだろうか)、ベロを出す豹の子、虎子、毛並みのいいロバなどなど…

このコーナーだけでも随分楽しめた。

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2.日本の本草学略史

・江戸時代前期
本草綱目が出ている。1ページに4コマずつ展開する。
何度か見ているが、本当に興味深い。
貝原益軒も本草関係の本を出している。

・江戸中-後期
平賀源内らの登場。時代がいよいよ博物学を更新・昂進させる。
阿蘭陀のを元にした本草ものもある。菩提樹の成分もかいてある。
リアルな絵が多い。
しかしどこか優しい。

3.園芸の流行と植物図
江戸が世界的にも植物大好き時代だということはよく知られている。
品種改良もうまいこといった。
江戸の染井、上方では平井山本が植木屋さんの総本山。
接木太夫の碑が山本駅のそばにある。
尤も接木太夫は江戸時代より百年前のヒトだが。

菊、朝顔、万年青などの本がずらーっ椿の比較図もある。可愛いなあ。
万年青と言えば明治のうさぎブームのとき、万年青もブームになっていたのだったな。
投機目的なので熱が下がれば早く人気が無くなる。

4.尾張の本草学
大名に博物学ブームが来たというのは知られていること。
去年、和歌山まで殿様の所蔵する博物学関係の品々をみてきたところ。
当時の感想はこちら
イメージ (503)

それにしても本当に奥が深い。
植物、禽獣、さまざまなものを描き・調べ・発表する。
ここでは伊藤圭介の本がたくさん出ていた。
標本も素晴らしい。

5.尾張の殿様と本草学

百鳥図 1886 立派な図鑑だ…中国の花鳥画写しと言うことだが、東アジアの花鳥画の系譜を想うと、本当にこの本は素晴らしいと思う。
西は西。東は東なのだが、植物画というか、花鳥画というものがある界隈に活きていることが嬉しくなるのは、こんな時だ。

ところで天保4年(1833年)にアザラシだかオットセイだかアシカだかか来たらしい。見世物でなく、勝手に泳ぎ着いて。
銅版画もある。置物まである。どうやらゴマフアザラシだったようだが、大騒ぎになっていたようだ。
全然関係ないが、再開したNHKのコント番組「LIFE」でオットセイに扮した連中の話があり、ハーレムを作れなかったオスの悲しみをやってて、ラストのオチがまさに落ちで、笑えたなあ。

大名自身の仕事もある。
砂糖鳥というインコの仲間の鳥の絵を描いた人もいる。
尾張家14代目さんは自ら収集するだけでなく執筆もしている。
時代だなあ。泰平だからやっばり学問しなくちゃな。
中でも群蟲真景図はコウモリやトンボもいる。よく出来ていて面白い。
構成もいい。

標本もとても丁寧に拵えて飾りも綺麗にしている。縁は墨流しにしてみたり。
植物標本は「腊葉」サクヨウというそうな。

この展覧会でいろんなことを教わった。
チラシの魅力に引っぱられて本当に良かった。
図録はないが、今の時代はありがたいことにある程度はデジタルデータを見ることも可能だ。
とはいえこの集まりを再現するのは不可能。
やっぱり実際に行くのがいちばん。
7/9まで。


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