美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ファッションとアート 麗しき東西交流展を見た

ファッションとアート 麗しき東西交流展 を見た。
開港150年記念の展覧会が神戸、横浜で開催され、時代の転換期に流行ったものが集められているのは、面白かった。
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1.東西文化の交差点 YOKOHAMA
幕末から明治初頭の横浜の新しさ、覇気、とても好ましい。
その時代の横浜を描いた小説やマンガも好きなものが多い。
平岩弓枝「新・御宿かわせみ」、石川淳「至福千年」、大和和紀「ヨコハマ物語」などでは一足先に新時代を迎え、そこで働く人々がいる。

会場内へ入ると素敵な設えが目に入った。
明治半ばに輸出用に作られた和風な装飾のティーガウンと室内着が三着、モザイクが可愛いチェステーブル、豪勢な芝山細工の飾り棚といった家具に、菊柄のカップ&ソーサーなどがある。
いずれも日本製。形は全て外国製に合わせつつ、表装は和風なのである。
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この芝山細工の飾り棚はとても大きい。金地に螺鈿の抽斗の表や引き戸など、本当に凝っている。
わたしがこれまで見た中でも最大のサイズの芝山細工である。
そして次の設えにも芝山細工の屏風が出ているが、これもまたとても大きい。
これまで小さいもの、大きくてもせいぜい額やアルバムくらいのものしか見ていなかったので、びっくりした。
そちらは黒地に花鳥図で下は透かしの木彫。本当に凝った作品である。
そして盛り上がる作りの芝山細工の額ものは花をモチーフにしていた。
その「室内」では明治初期の輸出用室内着が三着、そのうちの男性用のものは現代でも着れそうだった。
こちらは宮川香山のデミタスカップ、高浮彫の大花瓶がある。
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これらを見ていると山岸凉子「ドリーム」に現れる明治の洋館を思い出す。
その洋館は装飾家具を全て和風なもので揃えていて、明治の西洋人の邸宅のように設えていた。建て増しに次ぐ建て増しのその邸宅は、奥に行くほど普通の家屋になり家具も現代のものになるのだが)

輸出業務に熱心だった高島屋の飯田新七、ここにもその仕事が少しばかり出ている。
高島屋史料館でも時折その時代の資料を主にした展覧会があった。
こちら

ここでは日常のものはなく、全て服飾品、装飾品そして客用のものが集まっていた。
その中でも特によかったのは薩摩焼のバックル、ボタン、ブローチである。
また、廃刀令により失職した刀装具職人らが活路を見出した仕事も少しばかり出ている。
刀鐔や目貫を拵えていた職人が製作したに違いなさそうな精妙巧緻きわまる小さなブローチがとても愛らしかった。
とはいえ、なにか物悲しくもある。
…横浜焼も芝山細工もやはり時代の徒花なのかもしれない。
その華やかさがせつない。

2.日本 洋装の受容と広がり
明治半ばの和洋折衷ファッション。取捨選択の流れを見るのは面白い。

昭憲皇太后着用大礼服(マントー・ド・クール)全長は大変な長さなのだが、本体のドレスは140cmくらいだろうか、とても細くて可愛らしいドレス。華奢な方だったのだなあ。それにしてもこの裳裾、本当にキラキラしている。すばらしい。
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見事な刺繍。萌黄色に菊が咲き乱れる。

御真影を元にした油彩画がある。庭園美術館所蔵。日本人で最初に洋装を公式の場で常に着けられたのだ。
インターネットミュージアム事務局のツイートにドレスとこの肖像画が一緒に見られる画像がある。

蜂須賀侯爵家、寺島伯爵家の旧蔵品の礼服やドレスが並ぶ様子、とても華やかで鹿鳴館の時代を想像させる。
上村一夫「修羅雪姫」で刺客・鹿島雪が依頼を受け鹿鳴館に潜入する話がある。修羅雪姫はなんでも出来る女性なので、諸国の大使とダンスに興じたかと思うや、山出しの少女に変身し、最後は刺客としての正体を見せる。
鹿鳴館の大混乱、そして鹿鳴館の終焉。
「修羅雪姫」はこの時代が背景なので、ところどころに日本人が西洋のものを受容してゆく情景が描かれている。
ズロース、記念写真、スェーデン体操…

山本芳翠 園田ケイ(金偏に圭)像  洋装の婦人。髪はひっつめている。昼のジュエリーであるロケットを首に下げている。
わたしはジュエリーに詳しくないので、時間帯によりジュエリーが決まっているのも知らなかった。
ロケットと言えば中に写真などを入れるものが多く、それが元で事件が起こったり、事件の核心がここに、というのをよく見たり読んだりする。

五姓田義松 細川護成像  細川家の嫡子で、末弟の護立を養子に迎えた。まだこの肖像画は数え二十歳になるかならない頃。端正な青年である。

明治の浮世絵師・周延の絵が何点か出ている。
幻燈写心競 女史演説と洋行とがある。1890年 憲法発布の年の絵で、女性も政治家になり演説をしたいというものと、外国へ行きたいという女性の絵。どちらも夢想なのだ。
本当にこれが叶うのはもっと後。
芳年の洋行したい女性の絵もある。そして楽しそうに散歩する若奥さんの図など。
やはり明治になるとそういうキモチが生まれているのを浮世絵師は捉えて絵にするのだ。

欧州管弦楽合奏之図 これはよく知られた絵で、男女の混合合奏図。若い人たちの晴れやかな表情の合奏がいい。周延は上流階級の人々の絵が多い。

安達吟行の貴女裁縫図もある。みんな洋装でミシンや火熨斗ならぬアイロンをかけたりこまめに働く。

他にも当時の女性を描いた浮世絵風俗画が色々。

浮世絵の次は三越のポスター。
知らない絵師のものだが明治末から大正元年のもの。
やや古めかしい。

岡田三郎助 ダイヤモンドの女  三郎助らしい可愛い女性の指にきらりとダイヤが光る。
これで思い出したが、黙阿弥の明治になってからの芝居で「島鵆月白浪」 ( しまちどりつきのしらなみ )に芸者・弁天お照がかまぼこ型の指輪をしていて、それが芝居でなかなか重要な役回りを果たしていた。1881年の初演。
それからやはり「ダイヤモンドに目がくらんだか!」と間貫一に蹴られる宮さん。
明治のダイヤの話はこれくらいにしよう。

清方の絵も色々出ている。鎌倉の記念館からの出向。明治のアイテムが色々描かれている。
・あさ露  バイオリンを弾く令嬢。二日月の下、白薔薇も豊かに咲いている。
・「魔風恋風」口絵  ハート形に囲まれたキャラの娘など。
・あしわけ舟  子爵をめぐる女たちの話らしいが、洋装の令嬢たちの集団の口絵。
・早春 これは大正の作品だが、アールヌーヴォーな髪飾りに菫色のショールがいい。
・嫁ぐ人 盛装の令嬢たち。中には当時流行の婦人向け海中時計を首飾りとしてかけている。孔雀柄の帯も明治以降のもの。
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山村耕花 婦人愛禽図  おお、ここの所蔵の。耳隠しをした五人の婦人たちがそれぞれ自分の愛鳥を自慢している。
みんな帯高でアールヌーヴォー風の髪飾りをつけている。

着物にアールヌーヴォー調のものは似合うが、アールデコはあまり合わないように思う。
時代が先走ったが、そんなことを思った。

束髪を生み出したのは大成功だと思う。
今に至るまで束髪もどきのヒトがいるくらいだから。
周延も束髪の色んなのを一枚絵にしている。中にはわたしもしたことのある髪型が出ていた。
その束髪に使える「束髪簪」がずらり。
大きいのはスペイン簪と言うたようだが、鼈甲製からセルロイドまで色々。アルミもある。
アールデコ風なものもあり、色々あるのがよかった。

この他にも帯、指輪、帯留めなどが綺麗に並んでいた。
時代は大正から昭和初期に進んでいた。
モダンな生活が広がり始めていたのだ。

帯びもいいのが多い。薔薇柄、小林かいちが描きそうなトランプと思わせぶりな何かの柄。
銘仙の着物もある。
華宵や加藤まさをが描いた少女たちが身に着けていたようなものばかり。

モダンライフを描く日本画や写真がある。
勝田哲 朝 この絵は好きな絵。ベッドに寝転びながらレコードを聴いているモダンな女。
山村耕花 少女 モダンな装いの少女。バッグも靴も素敵だ。
丹羽阿樹子 奏楽 二人の和装の女が合奏。どちらの着物いい。こうした着物と帯の取り合わせのセンス、本当にいい。
この画家は近年になり取り上げられるようになり、本当に良かったと思う。
もっともっと発掘され再評価されれば、と思っている。

3.西洋 ジャポニスムの流行
時代は再び遡る。

ジュール・ジョゼフ・ルフェーブル 扇の言葉 西洋婦人たちが日本のファッションや美術に夢中になる様子がとても興味深い。
キモノを着た西洋婦人の絵をちょっと思い出すだけでも…たくさんあるなあ。
そして彼女らの手には扇がある。
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サテン、絹シャル、楊柳…様々な素材が使われたドレス…
竹に雀、花菖蒲といった和物の定番文様が新鮮な驚きを以て愛され、受け入れられたのだ。

しかし丸きりのキモノではなくアレンジがきちんとなされ、自らの体型・社会に沿う形に変わる。
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川上貞奴の公演ポスター。これは最初に見たのはサントリーがグランヴィレコレクションを手に入れたときだったか、それとも工芸繊維大の…ちょっとわからない、
アメリカ公演をする貞奴を描いているが、色々と面白い様子なのがいい。
今でもこの時代の勘違いは生きているのを時々目の当たりにする。

バルビエのファッションプレートが何点も並ぶのも嬉しい。
そしてポワレ、フォルチュニィのドレスがある。
それだけでなく日本の文様に影響されたイブニングドレスがスゴイ。
青海波をイメージしてるのだが、その表現はシルバービーズとライトストーンとで構成されている。

面白い文様も多い。虎が向き合うイブニングコートなどもある。
やはり1920年代は素晴らしい。

ラリックの時代が来た。
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どれを見ても魅力的なものばかり。

ジャポニスムの熱狂は食器にも及ぶ。
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三菱一号館の所蔵品がずらり。あの復元された建物にこれらが所蔵されている、というのはそれだけでもときめく。

最後はアールデコ。
ラリックの香水瓶や花器のよいのが並び、そしてジャン・デュナンの化粧コンパクトに目がゆく。
彼は日本人に習ったアールデコの作家。
欲しいな、使いたいな、と思った。

とても心躍る展覧会だった。
6/25まで。

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