美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

手ぬぐい万華鏡 

手ぬぐいの世界は奥深い。
タオルではなく日本手ぬぐいの話。
染物として手ぬぐいは浴衣同様、様々な趣向が凝らせるうえ、宣伝もこなせる。
用の美だけでないものがある。
・・・ということを、今回改めて思い知らされた。
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大阪くらしの今昔館の企画展はいつもいい内容だが、今回は浮田光治コレクション5000点のうちから200点ばかりが来ていた。
展覧会のタイトルは「手拭万華鏡 名もなき職人たちの手仕事」とあるが、今回出ている手ぬぐいの幾種かは菅楯彦、横山隆一、芹沢ケイ介、稲垣稔次郎といった名だたる作家たちのオリジナルも含まれていた。
また浮世絵をモチーフにしたものも少なくない。
サイトの紹介を読もう。
「手拭は、江戸時代以来、庶民の暮らしになくてはならない日用品でした。食器や手を拭く、頭を覆うなどの他、年末年始の挨拶や土産などの贈答用、会社や商店の広告、さらに個性や雰囲気を演出するお洒落用。日常生活から離れたところでは、落語や歌舞伎など舞台の小道具として、実に様々な用途に使われてきました。
 手拭をつくる工程は下絵、型彫り、染めに分かれ、それぞれの職人が手仕事で作りあげていました。手間ひまがかかりますが、手拭は安価な日用品。使い込まれて図柄が分からない程になれば、最後は雑巾やはたきなどの掃除道具に転用されました。
 一方で、大正期から昭和戦前にかけて、富裕な愛好家や旦那衆に向け、高級手拭が作られ頒布されました。それらは、三都の名所、歌舞伎や文楽、浮世絵、カフェやダンスホールといった街角の一場面など、魅力に富んだ図柄が色鮮やかに染めあげられ、芸術品ともいえるものでした。このような高級手拭のなかには、高名な染色作家が手がけたものもありますが、多くは無名の職人の手によるものでした。
 本展では手拭収集家 浮田光治氏のコレクションのなかから、稲垣稔次郎(人間国宝)や徳力富吉郎など高名な作家の作品を含め、京都の舞妓手拭や大阪城をはじめとする百名城、写楽や広重などの浮世絵手拭のほか、特に秀逸な200点を厳選して展示します。明治・大正・昭和の名も無き職人たちの手仕事 ― 一幅の手拭に込められた技術と芸術と遊びごころ ― その魅力を伝えます。

浮田光治(うきたみつじ)コレクション
 手拭収集家 浮田光治氏(明治45年~平成13年)の約5,000点におよぶ手拭コレクション。
 明治45年、船場の文庫紙商の次男として生まれる。旧制中学(現大阪市立東商業高等学校)卒業後、船場の“ぼん”でありながら当時としては珍しく、京都の木綿問屋へ奉公に出る。別家を許されて独立するまでの11年間、一貫して手拭を担当し、そのかたわら手拭の収集を始める。独立後は大阪で手拭やタオルの卸問屋を経営。仕事を引退してからも収集を続け、自ら手拭のデザインも手がけた。」

長い引用になったが、それを踏まえて作品を見ると、色々興味深くもある。
手拭はおおむね明治から昭和の終わり頃のものが多い。

鯉のぼり これが今回の最古。幕末から明治初期のもの。大きく鯉のぼり本体をクローズアップし、鱗にぼかしが使われている。

手拭をアタマに使うのは、封建社会の身分制度に原因がある。髪型でその人の立場が分かるからだが、その身分を手ぬぐいで隠すのかと思いきや、なんだかんだと自分の立ち位置をアピールする人が多かった。
学芸員さんが描かれたか、妙に可愛い紙マネキンに浴衣と手ぬぐいが使われていた。
手ぬぐいのかぶり方の色々を紹介している。

これらは「守貞謾稿」を手本にしているそうだが、どの巻にあるかまでは書かれていない。
わたしもさすがにそれを調べるのはしんどいので、とりあえず国立国会図書館のデジタルコレクションの「守貞謾稿」ページを挙げておく。
いつかしっかりチェックしたいが、今のわたしは「ゲアンゴ」中なのでやめる。←をい。
とはいえやっぱり調べてゆくと、こちらの「東京史楽」さんのサイトが「続・江戸の話」として「守貞謾稿」の解説を連載されていた。
これはたいへんありがたいことです。

さて展示に戻る。
美人画の手ぬぐいがある。
浮田さんの描いた後姿の美人にリンドウの花を添えたもの、夢二のあじさいと美人、小唄の文句を記した暖簾を開く美人・・・
色んな手ぬぐいがある。

手ぬぐいコレクターの会がある。
絵葉書や蔵書票などでも新作を拵えて、会で発表したりもあったから、手ぬぐいにもそんな場があったとて不思議ではない。
「百いろ会」というのがその場だったそうだ。
みんな趣向を凝らした絵柄の手ぬぐいがたくさんある。
昭和5年から15年までの戦前の小さな自由の中での話。

船鉾、狐と豆絞り、安来節、破れ傘・・・破れ傘には巾着袋がセットにされていた。
何かのメタファなのか。とはいえわたしなどにはわからない。
わたしは破れ傘を見ると「てめぇら人間じゃねえ!叩っ斬ってやる!」とタンカをきる萬屋錦之介の「破れ傘刀舟」しか思い出せねぇ。←昭和の子ども。

モダンガール これは胸高に締めた帯の和装にパラソルの二美人。
洋装では「昔恋しい銀座の柳」と歌詞も書かれたモガの手ぬぐいもある。
  昔恋しい 銀座の柳
  仇な年増を 誰が知ろ
  ジャズで踊って リキュルで更けて
  明けりゃダンサーの 涙雨
「東京行進曲」ね。この頃はJAS▲ACなんてのもあったんかなかったんか知らんけど、今と違うて文句も言わんわな。

垣間のぞき これが素晴らしいトリミングもので、垣根の下の隙間から除く様々な人々の足模様。下駄もハイヒールもみんな色々。

螢狩 前川千帆 木版画家の前川の原画。浴衣を着た婦人とワンピース少女とか身をかがめながら「ほーほーほーたるこいー」そしてその手にある団扇にはそれぞれ「MISS」「JAPAN」の文字。

黒猫 チラシの左上におるか、これが全景。
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どことなく目つきの悪いウナギイヌに似てなくもない。

ガイコツ 外面如菩薩内面如夜叉  赤地に黒で、鏡台に向う骸骨を描く。

大津絵モチーフのものもいくつか。
雷さんの太鼓釣りが可愛い。他に瓢箪ナマズ、藤娘など。

手ぬぐいはサイズも決まっているが、それでも業界や地域により違いもあった。
堂島手拭がそれ。厚手木綿で長尺上等のものを言う。
商店の宣伝が染め抜かれていた。

魚佐旅館手ぬぐい 横山隆一  「ノンキナトーサン」と「フクチャン」が描かれている。奈良にあった老舗旅館で、つい近年惜しまれつつ廃業になった旅館。ノンキナトーサンたちが鹿と遭遇、フクチャンはおもちゃの鹿のついた棒を持つ。

尼崎利太郎というヒトの原画による手ぬぐいが色々現れた。
大坂城築城400年祭り、四天王寺舞楽、旧四ツ橋などがある。
特に旧四ツ橋がいい。木材連合会の名がみえるので、信濃橋近くの昔の欄間関連の所の人々かもしれない。

住吉踊りは菅楯彦。まあそうでしょうなあ。

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今は亡きヴォーリズの名作だった大丸モチーフのものもある。

さてここまでは戦前。戦後の手拭を見る。
縦横自在なのは戦前と変わらない。
万博やそごう心斎橋90周年記念、「かしまし娘」の留守文様…ギター、三味線、旧鴻池家の表屋などなど。
浪花言葉を記した手ぬぐいがあったが、「えっこれ方言?」「えっ!」と言うものが多くて笑った。

手ぬぐいでなくタオルで小さい幼女の喜ぶ絵をプリントしたものもある。
当時のマンガの人々を描いたもののようだが、中で一つドキッとしたものがある。、
「たからづか」と書かれた手ぬぐいには和装の少女が推薦を背景にしつつ、可憐な眼で首をかしげている。
その少女の顔、どう見ても初期のわたなべまさこのキャラなのだがなあ。

そして再び「百いろ会」で出たものに屏風仕立ての手拭いがあった。
京都十二か月と銘打って年中行事が描かれているが、これがとても興味深いものだった。
1月 建仁寺十日戎、2月 廬山寺節分、3月 祇園都踊、4月 島原太夫道中、5月 葵祭、6月 藤森祭、7月 祇園祭、8月 松ヶ崎お題目踊り、9月 石清水放生会、10月 広隆寺牛祭、11月 八坂の舞楽、12月 南座顔見世
いずれもはきはきした絵で良い感じの月次屏風だった。

ほかにもやはり京都の風物をいろいろ描いた手ぬぐいが多く、ヒットしたのがよくわかる。

そして荻原一青「百名城手ぬぐい」シリーズが素晴らしかった。
103枚のシリーズのうちから75枚がコレクションにあり、色々と並んでいたが、実に多様な構図で各地の名城を描いていて、興趣のつきない手ぬぐいとなっていた。

歌舞伎をモチーフにしたもの、広重の名所絵を今の時期写したものもある。他に浮世絵美人たち。
それから夢二の「黒船屋」そう、黒猫を抱っこしたあれ。
昭和初期くらいは版権もそんなにうるさくなかったのだ。
小村雪岱「おせん」の挿絵でよいものが選ばれてそれも勝手に手拭になっていた。
おせんが忍び足でくるところと、庭での行水シーンである。
どちらも随分人気だったのだなあ。

小林かいちの作品を世に送り出した「さくら井屋」製の「京名所十景」シリーズもいい。
このシリーズは大ヒットしたそうな。こんな昭和7年くらいで既に京都は確たるブランドとなっていたのだ。
一寸狭い「知多手ぬぐい」に藍一色のものを染め上げて。

他に作家性の高いものがあるのでよくよく見れば、稲垣稔次郎の染色ものだった。
京都をモチーフに描いている。
岸田竹史という作家の仕事もいい。芹沢銈介まであるのにはびっくりしてしまった。

法被手拭と言うものが可愛かった。手拭を法被型にして様々な企業や団体にしている。
こういうのも楽しくていいな。中華の「ハマムラ」、枚方の菊人形などなど。

都都逸、鬼が島、だるまなどなど色々面白いものもあった。
子ど向けではなく大人向けの手ぬぐいも楽しい。

手ぬぐいは本当に奥が深い…

7/23まで。
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