美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

富岡鉄斎 和泉国茅渟海畔の寓居にて

堺市博物館で「富岡鉄斎 和泉国茅渟海畔の寓居にて」展を見る。
「和泉国茅渟海畔」は「いずみのくに・ちぬのうみの・ほとり」とよむ。
茅渟の海とは今の大阪湾一帯。和泉の国は特に海と面している。
イメージ (373)

さて富岡鉄斎は長い長い生涯のうち四十代の三年ほどを、堺市の大鳥神社の大宮司として過ごした。
西暦で言えば1877年頃の話。
若き明治天皇が全国を巡幸されたその最中、関西にも来られることとなり、それで鉄斎の活躍がある。
「明治10年(1877)2月、明治天皇が堺県に行幸し、畝傍山麓の神武天皇陵に参拝しました。鉄斎は堺県令・税所篤に命じられ、行幸の道筋にある神社および御陵の位置を示した図巻を描いています。」


サイトにこうあるが、当時の堺市は大阪府とは別個の県として独立していた。
河内と泉州と奈良全域が堺県だったそうな。
「物みな堺に始まる」の気概を持つ堺の人々はその後の大阪府への編入をどう思っていたことか。
そう言えば京都の伏見も昭和6年に京都市に編入されるまでは「伏見市」だったな。

後に文人画家として愛される鉄斎だが、本人はあくまでもそれは手すさびだと見做していたとよく聞く。
しかし、実際に依頼を受けて、明治初頭の巡幸のためにその地の「神社および御陵の位置を示した図巻」を記しているのだ。
当時既にその技能は知られていたわけだ。
そういうことを思うと、鉄斎に対し、ある種の反発がわくのだ。

【大鳥神社大宮司・宮司として】
富岡鉄斎写真  大鳥神社  四十代の鉄斎である。今の人とは違う顔つきをしている。
かれは瓦解以前に成人していたのだ。そのことを改めて考える。

大鳥神社一覧表  明治11年3月  清荒神清澄寺 鉄斎美術館  この神社の祭神はヤマトタケルだとある。
わたしは寺社関係には深入りしないので、知らなかった。
古事記では死後に白鳥となり飛んでいくのを妻子が追ったという話がせつない。
その白鳥がこの地に止まり、一夜にして森になったそうな。

大鳥神社神幸図巻  明治11年  個人蔵  列は→の方向へと進む。獅子舞もいる。

平清盛歌碑拓本  清荒神清澄寺 鉄斎美術館  かなり大きな石なのでびっくりした。
そういえば清盛はどんな歌を詠んだのか。わたしは知らないなあ。

湊焼扁額「盥而不薦」富岡鉄斎下書・八代上田吉右衛門作 明治13年5月  大鳥神社  これはまた巨大なビスキュイというかなんというか。地元の湊焼と言うのがあったようで、それで焼かれた扁額というのがスゴイ。
字自体はちょっとばかり隷書体に近いような感じもするが、よくはわからない。

倭武大神御像  明治14年 大鳥神社  可愛い少年姿。草薙の剣を授けられたところ。筵に坐している。白衣の中に鎧が見える。

日本武尊像粉本  明治14年頃  清荒神清澄寺 鉄斎美術館  このヤマトタケルの表記は日本書紀の方。みずら姿で坐している。

事代主命神影  明治14年 清荒神清澄寺 鉄斎美術館  こちらもまた白衣で首には勾玉、手には釣り道具。小さい岩に座る。
この後えべっさんになってまうんやろなあ…

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【山水人物を描く】
日本名所十二景図屏風  明治12年 個人蔵  右隻が吉野、月ヶ瀬、松島、おのころ島(磤馭廬しま)、耶馬溪、那智滝。左隻は高千穂、厳島、富士山頂、那須…

漁夫打網図 明治13年 清荒神清澄寺 鉄斎美術館  二人いる。景行天皇の故事からだという。

茅渟晩景図 大勢の人との合作。鉄斎の描いた海畔には燈台が見える。

【御陵調査と明治天皇行幸】
巡陵日誌 明治9年  清荒神清澄寺  鉄斎美術館  

御陵図絵并書抄(筆者不詳・富岡鉄斎書入、包紙共) 明治9年頃  清荒神清澄寺 鉄斎美術館  崇峻天皇(雀塚)これは明治2年から22年までの名称。そんなに大きくはない。天武帝と持統女帝の陵墓、舒明天皇のきちんと整備された陵墓、畝傍山東北の御陵は神武天皇。四隅に柵がきちん。池のほとりにあるヤマトモスソ姫の墓、後醍醐天皇の陵墓も…

堺県行在所御飾付図巻  明治10年 荒川豊蔵資料館  なぜ荒川豊蔵資料館に?
行在所の設え。煎茶ブームもあり、それを取り入れたりも。唐物趣味の部屋もある。

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堺県行幸道筋官幣大社御陵位置図巻 明治10年2月 荒川豊蔵資料館  道明寺、今井町などもある。奈良がきちんと区画割されているのも見える。

鉄斎の若い頃の「仕事」を面白く見た。
こうした展覧会も他では見ていない。
とても面白かった。

7/9まで。
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