美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

仏教入門 祈りのかたち

出光美術館では「仏教入門 祈りのかたち」展が開催中。
今夏わたしは奈良博「源信 地獄・極楽への扉」、三井「地獄絵ワンダーランド」、東博「タイ」展と続けさまに地獄と極楽とを眺めた。
この「仏教入門 祈りのかたち」展は全て出光美術館の所蔵品。
こんなにも多くの仏教美術の名品があったのか・・・
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第1章 仏像・経典・仏具 ―かたちと技法

絵因果経 奈良時代  おお、ブッダに迫る魔族。矢もダメ、ハニートラップも効かない。天女に化身して出向いた三美女、あっという間に婆さんにされちまったよ。
魔王が眷属を送り込んでもブッダに無視され、何をしても払われるのみ。
水桶いっぱい円状につけたのを持った魔族もいるが、けっこう熱心に働いている。
この絵の可愛さが結局「奈良絵」のルーツに見なされるわけなのだね。
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供養礼拝者像 石造 ガンダーラ 2-3世紀  半円形の段状にずらりと並ぶ。ちょっと「歩かないでください」のエスカレーターに立つ人々にも見える。

青磁神亭壺 青磁 西晋時代  今までも見て来ているが、改めてこの壺、すごい動物ぎっしりですな。サル、イノシシ、ヒツジ、カニ、カメ、ヤモリ、ブタ、玄武らしきのもいる。それと神様。あれだ、「幽霊城のドボチョン一家」的な何かかもしれない。
みんな仲良く住まうのか、それとも神様の食糧なのか・・・。

北魏から唐くらいの金銅仏がずらり。
これを見たとき、傍らのカップルの彼氏の方が「やっぱり北魏の仏像っていいなー」とうっとりするのに遭遇。

青銅観音菩薩立像 明代  長衣に身を包み、ちょっと見返る像。こういうポーズもいい。

金銅聖観音菩薩立像 白鳳時代  冠が山形というかパイプオルガンの中央に管の長いのを集めたような形のをかぶっている。それでわたしも白鳳仏だなと認識する。
去年東博でみた「ほほえみの御仏 二つの半跏思惟像」の良いのを思い出す。
当時の感想はこちら

釈迦三尊十六羅漢図 仙厓  え?この様式的な仏画を描いたのですか。なにやら意外な感じもするが、新鮮味がある。

不動明王画賛 仙厓  眼が上下それぞれ向く不動なのだが、その目のすぐそばの焔がまるでイルカのようで、そのイルカが片目とだけ会話している。キュッキュッうむうむ そんな感じ。

十六羅漢図 伝・土佐光信  8幅並ぶがこうしてみると羅漢それぞれに日常があるわけですね。猿が桃を渡そうとするのもあり、思えば涅槃図でも猿は花を一輪持ってきていた。
手が利くのと猿知恵とで仏に何かをあげようと思うのだね。
箕面の猿などは百円を拾うと自販機でジュース買うものなあ。
他にカメをお土産にしたもの、煙つき龍の登場図もある。

聖徳太子勝鬘経講讃図 鎌倉時代  きりっとした太子。そばにいる人々は黙ってじっと聴いているのだ。花弁が舞い終わった後の様子。

百万塔と陀羅尼経 神護景雲2年(768)  一斉に作られたものの一つ。子供の頃、陀羅尼という言葉の意味が全く分からず(今もわかっていないが)陀羅尼経と陀羅尼助丸があることを不思議に思った。

扇面法華経冊子断簡 平安時代  女と少年が水際で楽しそう。こういう時ついつい「お経がちょっとよけてくれたらなあ」などと思うのである。

蝶文蒔絵経箱 南北朝時代  たくさんの蝶に飾られた経箱。

朱漆鎗金火焔宝珠文経帙板 木造鎗金 明・永樂年間  チベット文字も併記。読めない国の文字があると、それだけでときめく。
2008年に京博で「シルクロード文字を辿って ロシア探検隊収集の文物」展を見たが、その時もドキドキがあふれだしてしまった。
当時の感想はこちら

好きなものが二つ並んでいる。
青銅銀象嵌蒲柳水禽文浄瓶
青磁象嵌蒲柳水禽唐子文浄瓶
いいなあ。やはり高麗のものは魅力的。

第2章 神秘なる修法の世界 ―密教の美術

不動明王二童子図 平安末期から鎌倉初期  親方は天然パーマではなく半円形に頭を固めて、左側に偏って三つ編み。子方は二人とも色黒。珍しい位よく焼けてる。

愛染明王図 鎌倉時代  線のはっきりした立派な仏画。
上等の壺の上に水晶体があり、中にフィギュアのように収められた愛染明王。その周囲にはレモンの輪切りのような法輪や貝殻、チェリータルト風なものがころころ。

五髻文殊菩薩図 伝 藤原信実 平安末期から鎌倉初期  なかなかの美少年。今回知ったのは、この髻の数により修法の種類が異なるということ。5つのまげだと息災祈願。
文殊美少年は剣と花を手にする。

一字金輪曼荼羅図 江戸時代  これは綺麗な。

真言八祖行状図 八幅 平安・保延2年(1136)  空海、龍猛、龍智らのエピソードが描かれる。出奔して唐へ行ったり・・・
禅宗も真言宗も祖師は逸話の多い人が多い。

第3章 多様なる祈り―弥勒・普賢信仰の美術

青銅陽鋳弥勒菩薩図経筒 平安・久安3年(1147)銘  絵自体はよくわからないが、なんとなく仏の線は見える気がする。
千年経つ前に世に出ている。効力はどうなんだろう・・・

解説を写す。
「仏教が基本的には女性の往生を説いていない中で、縁なき女性信者をも護り導く普賢菩薩に対する信仰が広まり、貴族女性の間で多くの普賢図が制作されました」
地獄でもわざわざ女性の人権無視なのがあったなあ。
みんな救わないとあかんでしょうに。

その普賢菩薩騎象図が二点ある。どちらも鎌倉時代。せつない願いが寄せられたのだろうか。

青銅桔梗唐草文透彫釣燈籠 慶長18年(1613)銘  ☆型の透かしが可愛い。

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第4章 極楽往生の希求 ―浄土教の美術
ここでの展示は意欲的な試みがなされていた。
なお、今回は「十王地獄図」に当館蔵の地蔵菩薩󠄀像を組み合わせ、本作礼拝時のあり方の一例を復元し、新たな画像解釈を試みます。
どういうことだろうと思いつつその場に立つと、なんとなく納得した。
場所は当然のことながら東京・丸の内の出光ビル9階の出光美術館なのだが、寺の中で地獄図を見ているような心持になった。
…こういうことを言うのかもしれない。
わたしではきちんと言語化出来ないが、十王と地蔵が共にいるのを見ると、たとえ逃げられなくてもなんとかなる、という希望が湧いてくるのは確かだった。

十王地獄図 鎌倉末期から南北朝  被虐と嗜虐の鬩ぎ合いにみえる。

地蔵菩薩立像 鎌倉時代  すがる。すがろう。

六道・十王図 室町時代  補佐官たちがほぼ全員色白で可愛い。こっち向きの青年もいる。
一方で、現世の哀しさが沁みる。地獄に来ても生前(過去)はいつまでも貼りついてくる。

阿弥陀来迎図 鎌倉時代  オーケストラつきのお迎えもあれは、やさしい花のプレゼントもある。

當麻曼荼羅図 鎌倉末期から南北朝  極楽アイランドである。そしてその周囲のコマもはっきりと描かれている。
左は下から上へ向かって王舎城の悲劇が描かれる。
右上1は日想観、そこから右の縦は極楽との対峙が続く。
ふと思ったが、今昔物語の「阿弥陀仏よや、おいおい」を仏画に組み込めば、それはそれでいい絵が出来るように思えた。

第5章 峻厳なる悟りへの道 ―禅宗の美術
以前にも展示のあった一休ゆかりの床菜菴コレクションと白隠、仙厓の絵がずらりと並ぶ。
一行書、禅師の描かれた頂相図、仙厓の〇△□、斬猫、だるまなどなど。

やっぱり悟らなくていいや…
そんな風に思いつつ、民衆に分かりやすいようにと可愛い絵柄を続けた仙厓は偉いなと改めて思う。

極楽の仏ばかりでなく地獄を思わせる展示品が多く、ここもまた「地獄・極楽への扉」が開いていることを知った。

9/3まで。


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