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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

雪舟からポロックまで

急遽東京行きを決めたのは、ブリヂストンと大倉の展覧会がすばらしすぎる、という評をあちこちで見たからだ。
おカネはないし時間もないが、行くと決めた以上は・・・といつものパターンで出向いた。

ブリヂストンは『雪舟からポロックまで』と題して石橋美術館の名品と新収蔵品とをここで展示してくれていた。

わたしは'89にブリヂストンに初めて来て以来わりと足繁く通っていると思うが、その理由として青木繁とモローを見ることが出来る、ということを挙げている。
青木繁の『天平時代』や『享楽』はわたしにとってただただときめく夢のような存在で、高校生か中学生の頃に知って以来、愛し続けている。
モローもほぼ同時期に知り、愛してしまった。
高校生の頃は画集を買うしかなく、アサヒグラフの別冊や集英社あたりの画集を古書店で捜し歩いたりしたが、その中で心を摑まれたのは、『わだつみのいろこのみや』と『大穴牟遅命』である。
前者は、漫画家・山岸涼子が自作マンガにその模写を使っていたので以前から知っていたが、写真版とはいえ『本物』を見たときの衝撃は大きかった。
『大穴牟遅命』は民俗学者・谷川健一の『魔の系譜』でその評論を読んで以来憧れていたのだが、久留米は遠く、石橋美術館はわたしにとって幻の美術館に等しかった。
実際『大穴牟遅命』の実物を見たのは、三年前の東京近代美術館での『青木繁と近代ロマンティシズム』展でのことで、実に永い間わたしは待っていたのだった。
無論それだけでなく『わだつみのいろこのみや』もなかなか実物に会えなかったのだが、こちらは『大穴牟遅命』以前に実物に会えていたのでそんなに苦しくはなかった。
わたしは青木繁の作品に苦しい恋をしていたのだった。
彼の作品は古代を描くもの、特に神話の時代から天平時代までの作品にわたしは深い思い入れがある。実際『海の幸』以外の名作は全てそうした浪漫を描いたものなのだ。

わたしは平安時代より奈良朝を愛している。最近でこそ『陰陽師』などから平安朝にも意識が向いているが、やはり奈良朝の方が好ましい。
(源氏物語絵巻や刀剣等は別としても)
十年前、ブリヂストンでは藤島武二展を開催し、わたしはそこで初めて武二の『天平の面影』の女人を見た。
この作品への愛もまた深くなってしまった。

今回、『わだつみのいろこのみや』と『天平の面影』が通路を挟んで並んでいた。そして古代竪琴を持った女人の視線の先には青木繁の『天平時代』の女人群像がある。
水遊びをする女たち。わたしは彼女らの視線の交わる地点に立ち、古代の女人のような笑みを浮かべていた。
この位置に立てる事が出来ただけでも来た甲斐があったと思った。

しかしこの展覧会はそんなささやかな喜びだけで済むものではなかった。

池田 孤邨『青楓紅楓図』 
この青楓の良さは言葉にしにくい。明るい気持ちになる、としか言いようがないのだ。そしてそれはこの一枚に留まらない。
松の絵がある。金地に松の木がどーんとある。見事な松の枝ぶり。緑の枝。胸がすくようだ。狩野派の松。この前で仕舞いを見せたくなる。
そんな気分になる。
あんまり良くて何度もここへ立ち戻り、警備員さんに不審がられたほどだ。

器も良いものが並んでいた。
可愛い花々の意匠。白磁の上に咲き乱れ、枯れることがない。
飛青磁がある。これは東洋陶磁美術館にもある分の親戚だが、なかなかよい。ああ、石橋美術館はやはり九州だけによい器を多く持つ。

それから雪舟。
わたしはあまり四季山水図などに関心がない。禅機図も好まない。文人画も南画もニガテだ。
高い精神性と言われても見る側のわたしにそれがないのだから理解も出来ぬのだ。
しかし、とわたしは考え直した。
わたしはいつもその絵の中にいる自分・その絵を飾る場所にいる自分、という風に彼我の関係を求めすぎているのではないか。
純然たる興味を持って眺めてみよう。
・・・・・・なにやら水木しげるの世界に入り込んだような気がしてきた。
蓬莱山逍遥。そんな気分で。
面白い。これはこれでまた。

近代日本画はないものの、二月に見た大いなる遺産 美の伝統を髣髴とさせてくれる展覧会だと思った。
そう、実際絵巻もよいのがある


絵巻の1シーン1シーンがイキイキしている。
牛飼いの青年、オトコマエやん♪・・・などと喜ぶ。
わたし一人がそう思っているだけではないらしく、これはハガキとして販売もされていた。
なんとなく嬉しい。

黒田清輝や小磯良平の女たち。久留米から来たというが、元からここにいるような顔をしている。
元からここにいるのは武二の『黒扇』のひとでした。わたしも彼女にニッと笑いかける。武二の女はみんなとても好きなのだ。

戦前の小磯の勤労少女たちは重苦しい色をまといながらも、限りなく清楚だ。改めてそう感じた。

いつもの見慣れた絵画や彫刻にもわたしは挨拶して廻る。
エジプトの猫。ギリシャの壷。

小出楢重の自画像。この絵を見てから小出のファンになったのだ。
ブリヂストンで私は多くの喜びを得ている。

ああ、長谷川利行の『動物園風景』
何故わたしはこの画家の回顧展に行かなかったのだろうか。

他にも古賀春江や佐伯をみてうれしい気分になった。

やはり無理をしてでも来てよかったと思う。その価値は、あった。




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コメント
大倉に初めていったのは十年前とかブリヂストンにはじめていったのは89とかよくおぼえていらっしゃいますねー。
展覧会に行かれた記録のメモ帳をつくっておられるのかな。
西洋絵画より日本洋画にご関心がおありのようで、久留米の石橋美術館はたずねられたことはあるのですか?

ゴールデンウィーク中の遊行さんの動きにもひそかに期待です/笑。
2006/04/29(土) 11:32 | URL | oki #-[ 編集]
記録魔
このブログは始まりの日にちが出ているので「ああ、一周年か」とわかったりしますが、それ以前の展覧会や芝居や映画などはわからないですよね。
お察しの通り、最初はノートに、今ではDB作成しているわけです。'80からの自分の記録は『調べたらわかる』状況にあります。コワイな~~

秋に呉ー下関ー門司ー博多ー久留米ツアーを企画中です。
近代建築と美術館の旅。

ブリヂストンの西洋絵画は以前からよく見ているので今回はそちらに重きを。
okiさんの書かれている通り、これからのブリヂストンには期待が出来そうですよね。
2006/04/29(土) 21:49 | URL | 遊行 #-[ 編集]
生業中の拾い読みにてご容赦くださいませ。見巧者とは縁のない、偏向趣味の者ですが・・・今回の展示は、気持ちは分かるのですけれど、「たっぷりとご馳走を食べさせてやりたい」という主催者の気持ちが些かあだになった気がしてなりませぬ。

ブリヂストンはゆったりと観るのがご馳走と思い込んでいたフシもあるのですが、
一つ一つを(今まで当方が行ったときと比較してみて)間を空けずに展示されたのは
かなり残念であったことです。会期を2~3回に分けてやってもよかったのではとも思います。どなたも仰せではないのですが、そう思われた方は、おられませんのでしょうかな?・・・久留米へ行かれる由、常設展に1回行っただけですが、大・石橋とはいえ限界ある個人のコレクションを、精一杯、ゆったりと、疲れさせられることなく観ることができたことは、印象に残っています。殺伐とした焼き鳥フェスティヴァル(あるのでございます、そんなものが)なんかと組み合わせた自分を恨みました。

別項(昨年のもの?)名古屋の近代建築の記事を目にして、過日の名古屋行きにおいて見逃したことを悔やんでおります。予習に用いて、次回こそは!
・・・ご健筆をお祈りしております。それでは。
2006/05/09(火) 18:56 | URL | TADDY K. #-[ 編集]
こんばんは
TADDY K. さん はじめまして

ブリヂストンは今年が節目の年だとかで、アタマに鉢巻巻いてエイヤーッとがんばられたようです。
会社帰りの人々のために時間もゆったりしてくれているし、てこ入れも欠かさないし、とわたしなどにはありがたい美術館です。

焼き鳥フェスティバル?おいしそうですね。一応博多で鳥の水炊きとか梅が枝餅とか予定していますが、そういうのを聞くとうずうずします。調べてみます。

名古屋はこれはじっくり見て回るほどに奥深いなと思います。
とりあえず二葉御殿は必見です。ステンドグラスの華麗さにはクラクラしました。

またよかったらおいでください。
2006/05/09(火) 22:28 | URL | 遊行 #-[ 編集]
こんばんは。
TBとコメントありがとうございました。

青木繁は、以前、この美術館で開催された回顧展ではそれほど感銘しなかったのですが、
不思議です、今回はかなり魅了されました。
何度と鑑賞を重ねるうちに引き込まれていく作品というものもあるのですね。

雪舟はまだ分かりません…。サッパリでした…。
いつかは!!
2006/06/04(日) 00:27 | URL | はろるど #GMs.CvUw[ 編集]
雪舟は・・・わたしには歌舞伎や稗史の中の、足の指でねずみを描いた人だという認識しかなくて・・・←叱られそう。
どうも水墨画とコンテンポラリーは苦手なのです。
でもよい展覧会でしたね。
2006/06/04(日) 08:15 | URL | 遊行 #-[ 編集]
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