fc2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

宋と遼・金・西夏のやきもの

大和文華館で北宋から南宋時代にかけて生み出されたやきものをみた。
今回は特別出陳として愛知県陶磁美術館と京大総合博物館から名品がいくつもきていた。
イメージ (670)
イメージ (671)

展覧会の狙いをサイトから引用する。
「中国の北宋から南宋時代(北宋:960-1127年、南宋:1127-1279年)にかけては、中国全土に多くの窯が築かれ、活発に陶磁器が作られました。北方では耀州窯や定窯、磁州窯、鈞窯など、南方では龍泉窯や南宋官窯、建窯、吉州窯などが台頭し、多様な陶磁器が登場するようになります。この背景には、陶磁器を享受する層が民衆へと拡大し、需要が高まったことが挙げられます。
多様な需要に応えて装飾技法も発達し、印花や刻花、劃花など凹凸による施文技法や、唐三彩の流れを受け、色釉を駆使した技法も展開されます。それらは唐時代までの技法を受け継ぐだけでなく、技術や作風を取り入れた新しい陶磁器としても生み出されています。
また、北方に勢力を持った契丹族の遼(907-1125年)やタングート族による西夏(1038-1227年)、女真族による金(1115-1234年)においても、磁州窯や定窯、三彩技法など中原の影響を受けながら製陶が行われ、それぞれに特色を持った陶磁器が作り出されています。これらの国々が栄えた時代は、中国陶磁史の中でも特に華やかな様相を呈する時代といえるでしょう。」


11世紀頃の面白い時代背景を踏まえながらやきものを見ると、いよいよ楽しくてならなくなる。

唐までの名品もいくつか出ている。
唐文化を尊敬し、我らこそその文化的子孫である、と遼の人々は誇った。
このことを踏まえてやきものをみる。

青磁雕花花文合子 越州窯 南北朝  浙江省から。米色に近い青磁。常盤山文庫で見たものと色めが似ている。

白磁蟠龍博山炉 隋―唐  ぐるぐる巻きの龍がついている。これは下にお湯をためるように出来ているそうな。今まで知らなかった。
というか、香炉だと思っていたがどういう使い方をしていたのだろう。

小さくて釦のようなものが二つ。唐後期―五代
白磁褐斑花文合子
白磁褐斑蝶文合子
形ではなく表面に ・ が5つあるのが花文で4つあるのが蝶文。それが釦穴のようで可愛いのだ。

唐代の紺地の三彩壺と盤もいい。色付けは白化粧してから。


【北宋】
青磁多嘴壺 北宋・元豊三年(1080)銘 龍泉窯  これはいつもなんとなくモヤモヤしていたが、今日になって何か分かった。
心臓だわ、これ。蓋なしだから余計そう思える。それで嘴は全て大動脈。
蓋有の方のも並ぶが、そちらにはそんな感じがしない。
ああ「心臓を捧げよ!」

青磁雕花蓮華文瓶 北宋 耀州窯 彫りの深さで色が変わる。オリーブグリーンの優品。
青磁雕花牡丹文鉢 北宋 耀州窯  こちらは一輪の花が咲く。折枝文という。

白磁緑彩瓔珞文輪花合子 宋  モコモコ風味。白地にユズ餡な感じが美味しそうに見える。
白磁印花蓮花文盤 北宋~金 定窯  愛知県陶磁美術館から。印花は人気がある。それにしてもこれはとても細かい。

北宋の定窯は白が中心。
他に白磁刻花蓮華文輪花鉢、白磁印花牡丹文鉢などがある。
しかしその「白が中心」に対し、珍しいものがあった。
柿磁金彩碗、黒地金彩碗、柿磁輪花碗。
濃いねえ。


【遼】
遼には唐の文化を継いでいるという意識があった。
それについてはこちらの展覧会で知った。
契丹 草原の王朝 美しき三人のプリンセス
当時の感想はこちら

緑釉皮嚢壺 遼 缸瓦窯 愛知県陶磁美術館  おお、リアルに皮嚢風。
ところで先ほど「心臓を捧げよ」と書いてしまったのでそのまま書くが、「進撃の巨人」の調査兵団の兵士たちはそれぞれが皮嚢を持って水を飲んでいた。
皮嚢は丈夫なので水漏れしないのだ。パラディ島の彼らは故あって文化の発達をある程度まで止められているので、その皮嚢を使用していた。

鳳首掻落緑釉牡丹文瓶 遼 缸瓦窯  肩下から胴の半ばまで緑釉のベルトが回り、そこに貼り付けの花が開く。掻き落としの線も入った花。とても個性的。素敵だ。

三彩印花魚文長盤 遼 缸瓦窯  集まる魚たち。2013年の「中国陶磁の広がり 愛好・写し・展開 」展以来の再会。
当時の感想はこちら

その時はこの鹿枕もあった。
三彩浮彫鹿文枕 北宋~金 枕を支える首のところに鹿が浮かび上がる。

張文藻というヒトの未盗掘の墓があったそうだ。
その写真が参考資料として出ていた。
その墓には明器だけでなく生きていた頃同様に食事の支度もされていた。
やきものも残っている。
ここにあるものはそれに似ている。

京都大学総合博物館からもいいのが来ていた。
白釉碗  繊細な文がある。
蕎麦釉壺  焼みそをつけているようだ。妙に美味しそうに見える。
どうも露胎はニガテだ。


【南宋・金】
青磁鯱耳瓶  龍泉窯  親しい感じがある。色もいい。

月白鉢 北宋ー金 鈞窯  ああ、いい色。綺麗な水色。

紅斑文盤 北宋ー金 鈞窯  月白地に紅が取り返しのつかないように広がる。

玳玻釉碗 南宋 吉州窯  内側の文様がどうも人魂がたくさん飛び交っているように見える。

油滴天目碗 南宋 建窯  たいへんおとなしい…


【西夏】
黒掻落牡丹文梅瓶 霊武窯 「経瓶形」の梅瓶…勉強不足でビール瓶とかワイン瓶がアタマに浮かんできた。
実際にはそんな首も長くはない。周囲に青海波が刻まれているのもいい。

磁州窯の特集もあり、これまで親しく眺めていたものが多く出ていた。
白地黒搔落緑釉牡丹文瓶 北宋  チラシには白く出ているが、実際に見たところ緑の玉のような色だった。

赤絵牡丹文小壺 金  小さい中に眼いっぱいの花を咲かせるのが愛しい。

赤絵蓮華文碗 金  どうもこの兄弟を逸翁美術館でも見ている。あちらではうまく継いでいて「家光」と銘を付けられている。

やはりやきものは楽しい。
いいものをたくさん見れてよかった。

2/18まで。

関連記事
スポンサーサイト



最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア