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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

応挙は雪松、呉春は白梅

逸翁美術館の開館60周年記念展第五幕は「応挙は雪松、呉春は白梅」。
呉春の白梅と言えばこの逸翁美術館を代表するお宝の一つで、わたしの持つ名品集の表紙絵にもなっている。
もう随分前から見ているから何度目かはわからないにしても、いつ見ても「ああ、ええなあ」という言葉しか出ない。
細かいことを言わずとも、この白梅図の良さは身に染みて・心に沁みる。

そして応挙の雪松といえば三井記念美術館の国宝のあれ、その関連作なのだ。
応挙は三井家に支援をしてもらっていたので、三井家のためによい絵を多く描いた。
先般の京博の国宝展でも雪松図屏風と三井の誇るやきものの代表格・志野茶碗 銘卯花墻とが一緒の空間にあった。
逸翁の雪松図はその習作。松ぼっくり可愛い。
そしてこの二つを併せたチラシが素敵だ。
イメージ (712)

今回の展示は「四条円山派」の作品が集まっているが、正確には四条派と円山派の作品が並列しているのだ。
円山派は応挙から始まり、四条派は呉春が師匠蕪村亡き後に応挙に学びにゆくや、師弟としてではないが温かな交友を結ばれ、呉春は応挙の薫陶を受けた。
後、四条界隈に一門の多くが住まうことでそう呼ばれた。
対立ではなく、方面を仲良く分け合ったのだ。
そしてそのことをこの展覧会は示した。
だからこそ今回のタイトルが活きる。

まず円山派から始まる。
応挙 瀑布図 1773  右側に大きく滝がある。途中に岩も突き出ている。とても大きく力強い滝である。
これを見て旧萬野コレクション(現・承天閣美術館蔵)の瀑布図を思い出したのだが、それも当然で、あの滝の翌年のものだった。
まだ応挙にあの滝の勢いが流れていたのだ。

応挙 嵐山春暁図 1780  応挙48歳の作。左手に橋が架かり、右側いっぱいに大堰川の流れと片岸がみえる。桜と松がみえる。人の姿もなく、筏もない。
そう、まだ人の動く時間ではないのだ。
その空気感がある。

応挙 月雁図 1784  満月の横にこれから着水しようとする雁の姿がある。下を見つつ羽を広げるようなしまうような形にし、しかし足は既に畳みつつある。目が優しい雁。
ちひろ描く鳥のように優しい目をしている。

応瑞 賀茂祭競馬図  装束などが古風だが、その当時のリアルなものだと思えた。見学は一般がいないようで、ゴール付近だと知らされる。
スタート地点に桜を・ゴール地点に楓を植えるのが決まりだそうだ。
これはそれぞれ「さア往こ桜」、「もうよい紅葉」という。
季節の流れをこうした所にも取り入れているのだ。
そして絵には青楓が若々しい色をみせていた。

応瑞 朝顔図  何度か見ているが、右側に寄って咲き乱れる青い朝顔と緑の葉っぱ、余白の白がとてもいい。白磁に朝顔を描いたようにも見える。綺麗。
夏の良さを思う。ああ、暑いのより、心地よさを感じる夏から秋の花。
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応震 秋草小禽図  いろあいの華やかな絵。三羽の瑠璃鶲が飛んできた。
下部には鵯らしきものもいる。薄黄色の女郎花、艶やかな竜胆と桔梗、薄紅色の野茨・・・和やかな花鳥図。
花鳥のいる風景に生きるこの優美さは、東アジア絵画とポンペイの壁画、そしてロココ絵画にしか見いだせないのかもしれない。

源琦 玄宗楊貴妃弄笛図  唐美人が得意な源琦だけに衣装や装飾品の隅々まで神経が行き届いていて、楊貴妃の豪勢な美を引き立てる。
比翼連理といい、二人の他はどうでもいい感があふれている。
かつては則天武后の血筋を追い払い、輝かしい武勲を立て、善政を敷いたというのに、この傾国に出会ったことで何もかもが失われたのだ。
しかし幸せそうなのは確か。だから可哀想でもある。

山口素絢 酔美人  和美人が得意の素絢。美人が酔ってぐにゃぐにゃな状態を描く。向かって右側の美人は胸もはだけ、キモチよさそうに目を閉じている。
随分と酔いが回っているようだ。
それを起き上がらせようとするもう一人は髷も着物も崩れてはいないが、表情に気取りがなく、誰かに見られている緊張感もない。
そうした二人の様子がいい。帯の跳ねかたも髷もどこか娘娘しているのもいい。
楽しそうな二人の娘のよい絵。

渡辺南岳 隻鯉図  これはまた美味しそうなくらいよく肥えた鯉が水中にいる。胴と言い口元と言い、なんだか唐揚げにして飴炊きにしたい位だ。
わたしのメモも「むまさう」とついつい古い言葉で書いている。

奥文鳴 花鳥図  他派の影響をうけるというか、他派の良い所を吸収するのも円山派のよいところだ。
中央に岩に止まる黄色の目立つキンケイがいる。その上部には薄紅色の長春花(バラ科)と3羽のシジュウカラ。キンケイのそばには白い躑躅、地には雀がコロコロ5羽遊ぶ。
色遣いは南蘋派ほどのエグみはなく、あっさりしてもいて、そこがいい。

やがて応挙の雪松図屏風が現れる。その対面、少し斜め先には呉春の白梅図屏風。いい組み合わせだ。

芦雪登場。(表記は展覧会に拠る)
四点の芦雪が並ぶ。対ものから。
長春亀図  岩の上に3羽の雀が並ぶ。長春花が彩りを添える。岩の下の水中から亀が顔を出し、そばには小さいエビが2匹みえる。
スズメが岩に止まってこちらを見るというのは薬師寺の襖絵で見たのと同じ。
薬師寺の名画 板絵神像と旧福寿院障壁画
当時の感想はこちら
・・・これが岩でなく家の裏の前栽に雀が三羽止まって・・・だととんだ「悪魔の手毬歌」になるが、岩だからなごやか。

藤花鼬図  名古屋や和歌山での芦雪展でのときもそうだが、彼の描く動物たちの愛らしさ・妙な親しみやすさがたまらなく好きだ。
鼬もトボケた表情で横を向いているが、ふと話しかけたら返事をしそうだ。それでハッとなって「しまった、つい返事をしてしまった」と鼬が冷や汗をかけばいい。そんな様子まで想像できる。
藤はまだ咲いていない。紫なのか白なのかもわからず、葉の青々した様子だけがわかる。そこにモンシロチョウもヒラヒラ来ている。
イメージ (714)クリックしてください。
イタチの顔。
イメージ (714)2

牡丹孔雀図  大層派手な絵である。中央に大きく豪奢な孔雀が描かれていて、他を圧する。牡丹はその背後に咲きこぼれる。
しかしよくよく見るとその周囲がいい。
3羽の文鳥が頭上に飛ぶ、地には雀や他の小禽が餌を探し、中にはおいしく虫を食む雀もいる。小さな黄蝶も飛んでいた。
中央の孔雀よりむしろ周囲の小さいものたちが目を惹いた。
この絵は98年の春の展覧会ポスターにも選ばれているが、調べてみたら惜しいことにその時に行った記憶と記録がなかった。

降雪狗児図  芦雪のわんころたちのうち、毛並みが洋風表現なわんこ。可愛い喃。
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木下応受と吉村孝敬の合作もある。
右幅の唐美人を木下が・左幅の蓮を吉村の描いた「唐美人採蓮図」である。
官女らしき二人はそれぞれ似た色合いだが、柄の違う衣装をまとい、仲良く蓮採りの小舟に乗る。髪には金製の繊細な装飾冠というよりサークレットのようなものがつけられ、そこにはそれぞれ黄色または青色の花の飾りがつく。
蓮は大きく茎の伸びた葉が一本、その後ろに一輪の満開の蓮、そしてあとは蕾。
国貞と広重の合作を思い出した。国貞が美人を描き、広重は風景を描いた。
こういうコラボがとても好きだ。

中島来章 六歌仙図  丁寧に描き込んだ六歌仙。表装はかれの子・有章が担当し、金泥で桜と楓の小さいのを鏤める。

来章は茶箱にも絵付けする。
駒沢利斎 雲錦彩画茶箱  千家十職の指物師・駒沢利斎が拵えた小さ目の無垢の茶箱につつましく桜、楓を描く来章。
この茶箱は南鐐の小皿、赤楽に小さくウサギ文様の筒などで構成されている。


四条派をみる。
蕪村から呉春へ渡されたものはのんびりした空気だったと思う。
俳画と南画とが混ざり合っていい空気になったところへ応挙の薫陶をうけ、いよいよ良くなる呉春。
呉春はいい師を二人も持ったことになる。

呉春 十二月行事句画賛巻  味のある字が躍る。蕪村、呉春とホント、味のある字を書く。いいなあ。なんだか春の蕨や土筆や菫が芽を吹いたような心持になる字。

呉春 三十六歌仙偃息図巻  みんなのんびりと好き勝手な遊びに興じている。
腕相撲する素因法師、首っ引きする紀友則と猿丸太夫、あやとりの小町、ならめっこするのもいる。碁盤をにらむのもいる。
ここには開かれないが、遠眼鏡をのぞく女もいた。
以前この展覧会で見ている。
俳画の美 蕪村と月渓
当時の感想はこちら
楽しそうで何より。

呉春 孤鶴款冬花図  こかく・かんとうか・ず。真鶴が一羽首を曲げている。このカントウカとは何かというと、鶴の足元に二つばかり咲く植物をさしている。葉っぱだけならフキに似ているが、花は黄色の群れ咲くもの。
「フキタンポポ」のことだそうで、漢方の生薬になるそうだ。
知らないので調べて納得。

そして白梅図屏風。かつては雅俗山荘の新館で展示されていた。本館では見ていないと思う
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以前のチラシもある。
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なんと新しい調査で「絹本」だったこの絵が実は絹ではなかったことが判明したとか。
わたしは以前に絖だと聞いていたが、研究が進むと色々状況が異なってゆくものだ。こういうことも面白い。
布は一扇につき上から五枚張り合わせる。染むらも景色となる。はっきりと描かれているのは白梅だけなので、その地の色にムラが出るのもいい。

呉春の対幅がある。
岩上孔雀図  墨画淡彩で華麗奔放な孔雀を描く。以前はフルカラーこそが素晴らしいと思っていたが、年降るにつれ淡彩の良さを知るようになった。孔雀もほんのりでわるくはない。

松下游鯉図  薄い水色の中に潜む鯉。

秋夜擣衣図  山家の庭でとんとんと砧を打つ。
この家どこかで見たなと思ったが、水木しげる描く妖怪で藁頭巾をかぶったあれか、諸星大二郎描く妖怪・無支奇、どちらかみたいな顔をしていた。

ここからは呉春の弟子や一門の作品が並ぶ。
景文 花鳥図  景文の花鳥図の和やかさは多くの人に好まれた。客見せのためだけでなく、自分の生活の楽しみのための絵。
薄灰紫の木蓮。暗紫ではない色。中の花弁は白い。そして白い桜、薄紅の長春花。尾長を始め小禽たちがゆるやかに辺りを飛ぶ。
追記:3/6 公式ツイートより。



景文 紫雲英雲雀図  蓮華が群だって咲く地から雲雀が飛び上がる。蓮華や土筆が歓声を上げて雲雀を見上げる。
雲雀はどんどん揚がってゆくが、まだここでは飛び立ったばかり。
すぐそばには揺らぐ水面も見える。雲雀の小さい翼の羽ばたきで揺らいだのか。
これを見てヴォーン・ウィリアムズ「揚げ雲雀」の旋律が脳内再生され、同時に谷崎潤一郎「春琴抄」ラスト近く、春琴と佐助が放った雲雀がどんどん高く揚がり、やがて見えなくなり、鳴き声も聴こえなくなり、ついに帰らない。その様子を思い出した。

景文 夏汀遊魚図  鮒や鮎などがスイスイと泳ぐ。こうした小品は季節ごとに掛け替えて楽しむもので、キモチにゆとりがあると、本当に愉しめる。

岡本豊彦 雪中竹雀図  雪が大きく膨らむ中、その竹笹の上に二羽の雀がちょこんと。寒いが一方で暖かそうにも見える寄り添い方をする。

小田海僊 桜花小禽図  左幅 目白が桜の周囲を舞う。右幅 キツツキが木をつつく。春と夏だろうか。薄草色の絹なのだろうか、そこに描いているのか、染めているのかはわからない。

呉春 牛若丸句画賛  久しぶり。鞍馬の山で牛若丸を鍛えた大天狗が彼に背を向けて座る。二人の間には数人の「くらま」をネタにした句が入る。

呉春や景文が下絵描きしたやきものや印籠などがあるが、印籠は絵が見えないし、やきものは卵色の地に埋もれるような薄いベージュ色で、華やぎはないが、慎ましい可愛さがあった。
そのやきものには呉春えがく楓や銀杏の落葉があり、この蓋物は弟の景文がずっと持っていたそうだ。

景文の扇子がある。土筆柄、早苗螢図など、どちらもほんわかしたよいもの。
派手でなくても上品なもので、持ちたい扇子だった。

伝・景文 秋草図巻  黄蜀葵、白い葛の花、露草、枝豆などが描かれていた。枝豆、おいしそう。

道八と景文のコラボ作品があった。
イメージ (713)
こういうの、いいなあ。ほかにも平等院鳳凰堂の屋根辺りを描いたのもある。

西山芳園 絵手本帖  三冊披いていた。雀バサバサ、椿、紅梅。どのページもきっとよいだろう。

西山芳園 洋楽渡来図 篠崎小竹・鍋島侯賛  マーチな人々。洋楽軍楽?そして賛は鍋島侯の過激な攘夷文なんだよなあ。
けっこうコワイぞ。

最後に解説にいいことを書いていたのでそれを少しばかり。
円山派 対象そのものを描写
四条派 対象の背後に広がる情感も含む。
なるほどなあ…

3/11まで。
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