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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

「芳年 躍動の瞬間と永遠の美」展へススメ

去年、今年と芳年の展覧会をあちこちで見た。
肉筆画以外は版画なので同じ作品を見るわけだが、それでも飽きることなく楽しめるのだから、やっぱり芳年はえらいものだ。
イメージ (706)
今回の展覧会は昨春の美術館「えき」の巡回もの。
副題の「躍動の瞬間と永遠の美」というのはこのチラシの絵をさしているのかもしれない。
八百屋お七が火をつけて鐘を打とうと梯子を上るところ。
眼は江戸のどこかにいるであろうお小姓吉三郎に向けられている。

この絵を見ると思い出すというより、常に思うことがある。
90年代初頭、友人らと能登へ行ったが、その時この絵が火の用心ポスターとして旅館に貼られていた。
当時の消防庁が拵えたポスターだったようだ。
あのころは今と違い、浮世絵を見たいと思ってもなかなか機会に恵まれなかったのだ。
ましてや芳年は今のような人気を持たず、当時は知る人ぞ知るという状況だった。
わたしは旅館の人のご好意でこのポスターを手に入れた。
ありがたいことである。
それでせめてこの宿の佇まいを忘れまいと思って目を凝らしたのだが、長い歳月の間にイメージは茫洋となり、今では軽トラに乗った番頭さんの姿が映るばかりになった。
番頭さんは細野晴臣によく似ていたのだ…

今回は展示リストなし。
版画は大抵知られているものがずらーっ
いい発色・保存のものが多い。
それもそのはず芳年コレクターとして名高い西井正気コレクションからの展示なのだ。

イメージ (707)

シリーズものもいくつか出ていたが、全部ではない。
「月百姿」「芳年武者无類」新聞挿絵などからピックアップされている。
ひたすら鑑賞に努めた。

細かいことを書く必要はないので、今回は書かない。
とにかく興味があって、行けそうなヒトは行くべきだと思う。
知ってる絵であっても、これだけ綺麗なのを見るとやっぱり感慨も新たになるし「ああ芳年、いいなあ」となるのだ。

この展覧会でしか見れないものもある。
それは版画以外のもの。
つまり作者の直接描いたもの、それだ。
肉筆画の完成したものだけでなく、スケッチや画稿の面白さが、近年になりますます沁みてくる。

芳年の画稿はみんな生き生きしている。
幕末から明治に代わっても、江戸の庶民は地続きの生活をしていた。
少なくとも芳年が活きていた頃は。
芳年の場合、芸術的苦悩というもので大幅に画風を変えることもなかった。
それだからこんなにイキイキした絵を描けた。
とはいえ明治になったことで芳年の神経が弱ったのも確かだ。
生活に新しいものが加わって無邪気に受け入れることが出来た人とそうでない人との差は大きい。

芳年の画稿のうち人々を描いたものは庶民の姿を活写していた。
その筆の走り具合が瑞々しい。

ところで西井さんは94年に芸術新潮「血まみれ絵師 芳年参上」でコレクションを展開した。
わたしはそれを持っている。あの頃は芳年の展覧会はほぼなかったのだ。
参考までに90年代から2000年までの芳年を中心とした展覧会を挙げる。
199208 月岡芳年 アクティ大丸
199209 國芳と芳年 DO!FAMILY美術館
199507 月岡芳年 神奈川歴博
199608 明治の浮世絵師 DO!FAMILY美術館
199608 浮世絵の月の風情 太田記念浮世絵美術館
199707 芳年・清親・國周 太田記念浮世絵美術館

2001年からは比較的多くなったと思う。
20010 月岡芳年 最後の天才浮世絵師 京都文化博物館
この展覧会を皮切りにして。

国芳―芳年―水野年方―鏑木清方―伊東深水、山川秀峰、寺島紫明・・・
この血脈の見事さ。
江戸から明治への転換期に芳年がいたことは本当によかった。
展示を見ながら改めてそのことを思う。

3/11まで神戸ファッション美術館で開催。
見に行く方がいい。





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