美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

ふろくの楽しみ その1

兵庫県立歴史博物館の「ふろくの楽しみ」展に3時間ばかりいた。
耽溺していた、と書くのが正しいか。
あまりに楽しみ過ぎて3時間過ぎていたことに気付いてびっくりした、ということだ。
そうだ、めちゃくちゃ楽しかったのだ。
「明治ー平成の子ども雑誌から」という副題通り明治からの新聞や雑誌のふろくがずらりと並ぶ。
あまりに楽しくて、もう本当に次から次へと現れるふろくを見ていると「めくるめく」とかいう状況になってしまった。
ああ楽しかった。
イメージ (758)

基本的に「自分が楽しめる」ものを優先して見ているので、こうした展覧会はもう本当に大好きだ。
弥生美術館、野間記念館、芦屋美術博物館などでこれまで見てきたふろくの展覧会の良いところが思い出される。
そこへこの兵庫歴博が加わって、大いにときめいたなあ。

最初に現れたのはチラシにも雄姿を見せるエンパイヤ・ピルデングのペーパークラフトである。
本当に丈が高い。複製で再現した作り手にも感心する。
設計者は中村星果。男性である。昭和初期の大日本雄弁講談社(現・講談社)発行の大人気雑誌「少年倶楽部」の堂々たる付録である。
ここには当時の設計図、実際の図面がある。一応写真付きの製作手順書があるが、到底わたし如きでは対抗できない。
やる前からやれないと言うなという言葉もあるが、やれないとわかることも少なくない。
これがそれだ。
6枚ばかりの大きな製図にしっかりしたパーツが掲載されているが、実際のところ当時の少年たちも自分だけでは完成できず、親や年上の兄たちの手を借りて製作するのが多かったそうだ。

軍艦「三笠」の大模型に至っては8枚の製図、他に自分で支度するのは厚紙と杉箸(マストなどに使用)と黒糸である。
ここにある再現模型も大変立派で、救命ボート、ブリッヂ、甲板の様子、スクリューなど、素晴らしい出来だった。

「愛国」号大模型は翼に「あいこく」の文字がある。この画自体は鈴木御水が担当している。
国会議事堂は車寄せも素晴らしいし、パノラマ式大模型・流線型の新機関車はちゃんと山とトンネルとランプ小屋も付随。
どこまでも見事なペーパークラフトである。
のぞくとトンネル内には後続車両の先端が見えるのもニクい。

この辺りは以前にも野間記念館などで見ているが、実際に再見するとただただ驚くばかり・感嘆する一方だ。
江戸の昔から「立版古」「組み立て絵」と呼ばれて愛好されたペーパークラフトだが、昭和初期に頂点を極めたと思う。
そしてそれは「少年倶楽部」のふろくなのだ。

「のらくろ」で有名な田河水泡によるパノラマ画「無人島探険パノラマ」がある。
とても大きい図面で無人島内で繰り広げられる様々な状況や現場の様子を面白おかしく描く。
鷲に襲われたり、海では怒るタコもいるし、がけから落ちたり、選択を干したり。
「これみんなバナナだぜ」とバナナの木を前にして喜ぶものもいれば、ジャングルを行くものもいる。
軍がある時代なのを踏まえながらその絵を見なくてはならないが、細部描写が面白くて仕方ない。

「快傑黒頭巾」の挿絵画家・伊藤幾久造による「絵巻大日本史」も面白い。応仁の乱から本能寺の変、関ヶ原までが開かれていた。
全て紀元で年数が記されている。
講談社は大人向けの「キング」誌でもふろくに明治からの時代絵巻をつけているから、この時代「歴史」あるいは「稗史」は人々に浸透していたのだ。都合の良い史観であろうとも。

ぺーパークラフトだけでなく、ちょっとしたミニ本もふろくになる。
これは現代も同じことで、今もしばしば「創刊号」や特定作品の第一話などをミニ本にしてつけたりもする。
山中峯太郎「敵中横断三百里」があった。「壮烈物語画集」と銘打ってある。梁川剛一・樺島勝一の挿絵が使われているようだ。
この本もとても人気だった。
他に「のらくろ突撃隊」のミニ本も出ている。

少年倶楽部絵はがきが数点。
山口将吉郎
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この人は武者絵が特によいが、リアルサイズの甲冑ペーパークラフトを作成し、子どもに着せてそれを観察して描いたそうだ。
それでか躍動感が素晴らしい。
「神州天馬侠」の挿絵がみごと。あとで現物も展示されるが、戦後の一時期GHQの検閲を受けて「神州」が「新州」になったことがある。今は元のタイトル。

伊藤彦造
イメージ (754)
ときめくなあ。この人の展覧会は過去数度弥生美術館で見たが、いつもドキドキする。
2014年の伊藤彦造展 感想はこちら
2006年のはこちら

夏休み愉快袋 これはアソートもので手品を始めゲーム等の入った付録で、カッコいいものだけでない楽しいふろくの様子がわかる。

「幼年倶楽部」のふろくは同じペーパークラフトでも手数の少ないものだった。
とはいえそれでも簡単とは言わない。
人造人間 要するにロボットなのだがこのペーパーロボットは目玉をグリグリ動かせるようになっているし、手にはピストル、鼻下には八の字髭があり、勲章もついて、どこかドイツ風な様子である。

大たから船  きちんと鳳凰首と羽を差し込む。七福神もそれぞれ個性を見せる。多田北烏の図案だけにデザイン感覚も優れている。

ニコニコキネマ  回転させることで連続コマが動くように見えるアニメーションの元祖のようなもの。
宮尾しげを「平助とクマの相撲」、吉本三平「コグマのコロスケの馬跳び」の2本がある。
こういうものは小さくて楽しい。

兎の餅つき 可愛いなあ。ぺったんぺったん。

万国コドモ博覧会 本田庄太郎  楽しそうなマップになっている。ああ、こうした博覧会案内図、中世の参詣図、近代の鳥瞰図はどうしてこんなにもドキドキするのだろう。

幼年倶楽部100号記念お祝い袋  ぬりえ、カードゲームなどが集められている。うさぎさんやねこさんの顔のゲームも楽しそう。

自動車  この組み立てはわたしでも作れそうである。クラシックカー。紙が大きいから細部はそんなに精密ではないが、これもよさそう。

少女雑誌のふろくが現れる。
中原淳一登場。「少女の友」のふろくである。
幻想 組立舞台  チラシ右の少女とバルコニー。これは少女の他にシスター、もう少し年長の令嬢など3パターンの紙人形があった。

お雛の屏風
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随分前のわたしの手に入れた画像から。
中原淳一作品は戦前の方がわたしの好みに合う。

少女雑誌ではかるたのふろくも愛された。
日本画出身の村上三千穂原画の羽子板、百人一首かるたもある。
中原は「啄木かるた」  啄木の短歌を抒情画で表現。
松本かつぢ「隣組かるた」
イメージ (765)
相互扶助の隣組である。相互監視の側面は言わない。

少女あるばむ  抒情画の大家の絵ハガキサイズの一枚絵が並ぶ。
高畠華宵、林唯一、加藤まさを、須藤しげる、かつぢ、深谷美保子の絵に村上の装幀。

かつぢ絵の西条八十詩集、中原のシンデレラ、吉屋信子と中原の「花詩集」などなど…

イメージ (755)
シンデレラの背景は切り抜きものでそれだけでも素敵だ。

楽しいユーモアブックもある。

長くなるのでここまで。
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