美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

「名作誕生 つながる日本美術」に行く その2

一つの事象から連想が現れ、新たな表現で形になる。
「つながる」とはそういうことでもある。

イメージ (913)

3.古典文学につながる
・伊勢物語
伊勢物語は連作構成で、一話一話になんらかの<事件>があり、それを意匠にすることが何百年にわたって続いた。
井戸があれば「筒井筒」、滝があれば「布引」、燕子花があれば「八つ橋」、男が女をおんぶしていれば「芥川」…
文章で表現されたものを絵画化・工芸の意匠にすることを大昔から人は好んできた。

伊勢絵の屏風がある。斎宮歴史博物館 いい絵で、右1扇下の文使いの子が可愛いのに惹かれる。左6扇の上に紺に紅葉の目立つところもある。
伊勢で斎宮といえばこれまた伊勢物語に話があるので、やっぱり伊勢はネタの供給元として絶対に知らん顔はできない。

光琳の八つ橋図、八つ橋をモチーフとした安土桃山時代から江戸時代の着物が数点。
中でもこの流水に燕子花はシンプルで可愛い。今は女子美大の所蔵だが、かつてカネボウ繊維資料館にあったころ、よく見ていた。

そして八つ橋を螺鈿と蒔絵で表現した硯箱。これは現代にも生きて、東博のショップの人気ものの一つになっている。
こちら
そう、わたしも持っている。
「つながる」という意味ではわたしもこうして光琳芸術とつながっているのだ。

伊勢と並んで絵画・工芸品に現れるのは何といっても源氏物語。
源氏物語も様々なエピソードが多いので、モチーフ提供には事欠かない。
「ああ、あれか」と見た人はすぐに納得しないといけない。
現代人はそこまで源氏や伊勢に執着しないが、少なくとも明治以前は多くの人が目の前にある意匠の意味をきちんと読み取っていた。

夕顔モチーフの手箱、鼓の文様。これが何から来ているかも古人は知っている。
初音に至っては徳川家の姫君の婚礼調度に用いられ、嫁入り先の尾張徳川家に伝わり、今日でも国宝として愛され、大事にされている。
小さな小さな鶯がちんまりと縁先に止まる構図がとても愛らしい。
前期に硯箱、後期に櫛箱が展示される。

子日蒔絵棚 「子日」はネの日。この日に行うことも決まっていた。そう、小松を引くのだ。
伝・光悦。とてもキラキラしている。本当にキラキラピカピカ。

4.つながるモチーフ/イメージ
・山水をつなぐ
三保松原図 伝・能阿弥 頴川美術館  ああ、これが来ているのか。頴川の小さな密接な空間で見るのと、広いハコで見るのとではやはりイメージが変わるね。大きい場所で見ると、この絵はやはり単独のものではなく、隣の絵ともつながりがあるように思える。

山水松原架橋図襖 等伯 1589 大徳寺にあったもの。先の三保松原は場所の特定されたもの、こちらはどこともしれず、実景ともいえず、想像かもしれず、といった場所。しかしそれら隣り合うと、不思議な融和を感じる。
そして次にこの絵の行き着く果てをみる。

松林図屏風 等伯  東博ほまれの松林図。日本が湿潤な土地であることから生まれた絵だと思う。
少し前に東博ではこの作品をモチーフにしたインスタレーションも行っており、香の再現もしていた。
風も吹き、心地よかったことが心や脳の記憶だけでなく、皮膚にも残っている。

山水画の次は艶やかな吉野山。
豊公吉野花見図屏風 細見美術館  様々な階級の人々が花見を楽しんでいる。中には大きな傘を差してその下で聴衆に説経の物語を聞かせているらしき男もいた。
花の色もいい。小さな食べ物屋もたくさん出ている。
賑やかで華やかなことが好きな太閤にふさわしい。
と言いつつ、その太閤がどこにいるのかがちょっとわからない。貴人に傘を差しかける姿を探したのだが…まさか説経師かと思ったあれでもないだろうが…

乾山の色絵吉野山図透彫反鉢と彼を慕った道八の色絵桜楓文鉢とがいい位置関係に並ぶ。
それを見る贅沢さ。いいなあ、吉野ゆえの喜びを感じる。

南宋から明、そして江戸時代に至るまでの花鳥をみる。
蓮から始まる。
蓮池水禽図がならぶ。名前は違っても描かれているのは等しい。
作者により構図の違いはあるが、蓮の清澄な美しさと無心な鳥たちの様子が心に響く。
海を渡ってきた絵画がこの国の人々の琴線に触れ、自分たちもそうした絵を描く。
美意識がつながるのを目の当たりにする。
能阿弥、宗達、抱一の蓮。表現は様々だが、南宋や明の絵師たちの衣鉢を継いだように思える。

愛らしい雀たちをみる。
雛雀図 伝・宋汝志 南宋 東博  ああ、この雀ちゃん見ているよ。籠の内外で鳴いている。
竹雀図 王淵 元 大阪市立美術館  これも可愛らしいなあ。
野辺雀蒔絵手箱 平安 金剛寺  貴人からの寄贈だろうか、とても愛らしい。色もいい。

本当ならここにも芦雪、竹内栖鳳の雀も仲間入りすれば、いよいよ以て近世・近代にもつながることがよりわかるのに、と思った。

・人物をつなぐ
戸を叩く男 これがテーマである。
思った通り昔男くんの訪問図がある。
梓弓図 岩佐又兵衛 トントンとんとんヒノノニトンというわけにはいかない。

紫式部日記絵巻 道長が紫式部を夜に訪ねてくる。戸は開かない。しつこい道長。
パワハラ・セクハラ・ストーカーという完全にアカン行為である。
この絵は初めて見た。

洛中洛外図や風俗図が現れる。わたしの大好きな世界。
舟木本が出ている。
イメージ (915)

ソヤソヤと思いついたことがあるので帰宅してから実行する。
以前にショップで購入した舟木本25%サイズの復元物を左右共にきちんと開いて向かい合って立ててみて、その隙間にミニカーすーっと通してみた。洛中洛外を通り抜けるミニカー。なんとなく楽しかったわ。

MOAから湯女図も来ていた。それぞれの表情が好きだ。苦界の前の公界で働いた女たち。
根津からは誰が袖美人図屏風。
そして意外さに打たれたのが師宣の見返り美人図があること。
なんだか虚を突かれた感じがした。

最後に現代と過去とがつながるものを見た。
イメージ (916)
北斎 くだんうしがふち
劉生 切通之写生
浮世絵と洋画。だが通じるものがある。
この展覧会が何を伝えようとしているのか、わたしがわかったのはここへたどりついたときだった。
最後に来て、展覧会の意義が掴めてよかった。

更に展示はひとの胸を衝く。
・寒山としての麗子
魁偉なといってもいい顔輝「寒山拾得図」と劉生「野童女」。
こう来たか…!

最後の最後に唸らされた。

大がかりな展示替えは5/8から。
見たい作品がそちらにもたくさんある。
関連記事
スポンサーサイト
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア