美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

セーラー服と女学生 ~イラストと服飾資料で解き明かす、その秘密~

セーラー服の展覧会だと聞いてちょっと戸惑ったのだが、弥生美術館はいつも以上に観客の表情が充実していて、よかった。
「セーラー服と女学生 ~イラストと服飾資料で解き明かす、その秘密~」
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服飾を中心にした展示は先年の「耽美・華麗・悪魔主義 谷崎潤一郎文学の着物を見る ~アンティーク着物と挿絵の饗宴~」以来二度目だと思う。
当時の感想はこちら

わたしは一観客に過ぎないが、この弥生美術館そのものが好きなので、ここがにぎわい、多くの観客が満足している姿を見ると、とても嬉しい。

セーラー服の歴史の説明とリアルタイムにそれを着ていた少女たちの絵が現れる。
高畠華宵の挿絵に現れるセーラー服の少女たちのたおやかにして、美しい様子がいい。
松本かつぢのはつらつとした元気のよい少女たちは、そうありたいと願う気持ちが形になったようだ。
加藤まさをの少女たちに漂う哀愁もまたセーラー服には似合う。個人的にいちばん好ましい女学生たち。
深谷美保子、藤田ミラノ、藤井千秋らのセーラー少女もいい。

西条八十と抒情画家のコラボによる企画シリーズが好評を博していたようだ。
それは女学校のイメージソング+イラストで、多くのリクエストと言うか応募があったらしい。
実際に八十の作詞の校歌を持つ学校も多々あった。一覧表を見てその数に驚いた。

セーラー服の現物を見る。歴史の古い学校について想いを馳せる。
わたしは中学はジャンパースカート、高校はブレザーにネクタイだった。
セーラー服と言えば中学の卒業祝賀会の余興で当時流行の「セーラー服と機関銃」の歌を歌うのに、誰かのお姉さんのセーラー服を借りて着たこと、その一度だけだ。

かつての少女たちの写真を見ながら微妙に複雑な心持になってきた。
この感覚は口には出来ない。

ところで日本で描かれたセーラー服でいちばん古いのはどうやら右田年英の「日露戦」の軍服としてのセーラーらしい。
甲板を走り回る水兵たち。妙にえろいな。
これをみて思い出すのは馬堀海岸駅近くのマクドで見かけた海自の学生たち。正統な装いとしてのセーラーを身に着けていたなあ。

西洋での印象的なセーラー服の紹介がある。
英国のエドワード王子(七世)の幼児期の写真。セーラー服である。ただし「フォントルロイ・スーツ」である。
そう、この名は「小公子」のセドリック。
当時の萌えがわかるなあ。
わたしが最初にこの形のスーツを知ったのは竹宮恵子の絵からだった。なつかしい。

映画「ベニスに死す」でのビョルン・アンドレセンが着ていたセーラー服。
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この映画では母役のシルヴァーナ・マンガーノの白いドレスも印象深い。
当時はアイロンがなかったので(その装置がないという意味なのか・習慣がないということなのかは不明)裾のよれた感じが目に残る。ヴィスコンティ監督の細部への執着が見て取れた。

セーラー服が日本で受け入れやすかった理由の一つにその作り方にあるという話だった。
和服と同じ平面裁ちが可能だからということだった。そうか立体裁断とは違うのか…
そういうことを知るのも面白い。

マンガでセーラー服と言うと色々甘酸っぱいのを思い出すのだが、その中で三つばかり挙げる。
・山岸凉子「千引きの石」 転校生の少女の制服が間に合わず、彼女は毎日「セーラー服ぽい」ワンピースで通学する。それが少女たちの反感を誘い、女子の友人が当初は出来なくなるという設定があった。後にセーラー服が出来てからは普通に付き合う。
ホラー作品だが、こうしたところに山岸さんの鋭さがある。

・森本梢子「ごくせん」 アホでどヤンキーな男子学生らをちょっとでもまともにするには共学だ、ということで色々案を練る教師たちだが、校長が熱心に描いていたのは女子のセーラー服の図案。それも絵柄は古臭いのに妙にエロチックなもの。
結局この絵の毒気?にやられたか、共学案は立ち消え。笑えたなあ。

・作者名・タイトル不詳 随分昔に読んだ作品だが、女子が学生服を男子がセーラー服を着て悦に入ってるところへ互いにバッタリ。それで立場を変えて仲良くなる高校生カップル…セーラー服に憧れ、女装する男子の夢みる様子と、学生服を着た途端に暴力をふるいだす女子の変化が印象深かった。 

二階へ上がると今度は現代のセーラー服の世界が広がっていた。
森伸之・中村佑介・武内直子の三氏のセーラー服絵の紹介である。
森氏の制服への愛情と言うか執念というか、少し怖くなった。
そして自分はたとえ現役の学生の頃であろうと、ここに描かれた少女たちの群れから排除されていたろうと思った。

中村氏の少女が今回のチラシとなっている。
作品を見るうちにああ、あの人かと他の作品が蘇ってくる。
ほっそりしたセーラー服少女たちの群。

セーラームーンの原画とインタビューがあった。
先年六本木ヒルズでセーラームーンのイベントがあり、たまたまのぞくことになった。
その時にようやく主人公の少女の名前を知った。それ以来のわたしのセーラームーン体験である。

武内さんの絵をたくさん見たからか、旦那さんの「HUNTERxHUNTER」の再開が待たれるなあ…


三階の高畠華宵室へ。
生誕130年と言うことでか、再び大作屏風「移りゆく姿」が出ていた。
わたしは圧倒的に左にいるケットショールを巻く明治の美人さんに惹かれている。
顔も好きだが、彼女に「風流線」の龍子を見ているからかもしれない。

「君よ知るや南の国」、「華麗の夢」といった美少女絵、そして弁天小僧を描いた「刺青」などの美少年の絵もある。
他に「七転八倒開運出世双六」というなんだかもうとんでもなさそうなのもあった。

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夢二美術館の方は「くらしを彩る小さな美」
絵はがきや絵封筒の良いものが並ぶ。夢二は美人画より童画やこうした植物などをモチーフとした意匠のものが特に好きだ。
蝶々に囲まれる少女、近年になり世に出てきたこの絵が好きだ。
双六も三つ。家族双六、おとぎ双六、そしてパラダイス双六。
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セノオ出版の仕事、童謡の歌譜、良いものが多い。「少女の友」の表紙絵。
風の子ども 1922  釣鐘層に振れる羽根のある少年。仲間はどうしたのだろう。
仲良しの恩地孝四郎への手紙などなど。
そしてお葉さんのスナップ写真がずらり。

今期も興味深い展覧会だった。6/24まで。
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