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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

チャペック兄弟と子供の世界

松濤美術館で「チャペック兄弟と子供の世界」展をみた。
カレル・チャペックは弟で、兄はヨゼフ・チャペック。
そうと知る前に既に作品に触れていた、という作家兄弟である。
イメージ (985)

ヨゼフはカレルの童話「長い長いお医者さんの話」の挿絵を担当していた。
そうと知り、「ああ!」となるわけだ。

ヨゼフの描いた絵を見る。
子供をテーマにした作品が多い。
キュビズムの画家なので、面白い線を選んでいる。
しかし子供の可愛さがそこに現れる。
「子供の世界」というタイトル通り、様々な子供の絵がある。
決して明るい情景のものばかりではなく、貧しい子供もいればどことなくせつない子供もいる。

彼らのいた時代を考える、プラハという土地のことを考える
そうしたことを踏まえたうえで作品と対峙する。
何も思わずに絵に対していい時とよくない時とがある。
この展示は後者のほうだ。
兄弟は弟が先に亡くなり、兄は終戦の年に死ぬ。
抑圧された時代・政権下の中でのこの愛らしい絵は、時代を踏み越えて現代へつながっている。

わたしはヨゼフもカレルも作品を通してしか知らないが、展覧会に来るとほかの情報も入ってくる。
例えばヨゼフは身体が弱く徴兵は無理だったことや、カレルの愛犬「ダーシェンカ」がテリアだということ。
ほかにもナチスに対し最後まで反対したことなど。

それらを踏まえながら、改めて作品と向き合う。
しかし作品にはその影響は見いだせないのが、実は物凄いことだと思う。
同時代のドイツのエーリッヒ・ケストナーの作品もそうだが、チャペック兄弟も暗澹たる思いを政権に対し、時代に対し抱いていたろうが、それを作品には見せない。しかも決して迎合することもなく、自分の世界を守る。
心の本当の強さというものを見た、と思った。

絵はどれも皆とても可愛らしい。シンプルなラインで的確な表現。
そこへ至るまでに削ぎ落してゆくものたち。

ヨゼフの絵とカレルの文で形となった物語のいくつかをみる。
イメージ (986)

カレル・チャペック『ふしぎ猫プドレンカ』 猫らしいなあ。可愛いわ。
愛犬を描いた『ダーシェンカ』も可愛くてならない。
わたしは犬種をよく知らないので洋犬だなくらいしかわからない。しかし可愛いのはわかる。

『こいぬとこねこは愉快な仲間』 
可愛さとはシンプルな線の中にある、と思ってしまう絵。
機嫌の良い線描がとてもいい。

『ダーシェンカ』 愛犬家のキモチがわかる気がする。
猫と犬とでは相手への対し方・愛し方は異なるが、共通するものは「大事にしたい」ということだ。

世界各国で展開される彼らの本も見た。
その中で中国語版が面白かった。
『こいぬとこねこ』だが『猫的小英雄』で一言も「犬」「狗」がない。表紙絵は顔の下半分のみ。
これはこれで面白すぎる。

『長い長いお医者さんの話』18052601.jpg
はこうして見てみると中野好夫の訳なのか。
中野は好きな訳者だ。
英米文学が主なヒトなので、本当の訳は別なヒトだとしても、文章として形にするのは中野が行ったのだろう。
今は新訳もあるそうだがわたしはこれでいいよ。

兄弟は弟が先に亡くなり、兄は強制収容所で亡くなった。
酷い時代に亡くなったこと、それを忘れてはならないのだった。

5/27まで。
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