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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

逸翁美術館「役者で魅せる芝居入門」前期をみた

先日、朝方に大きい地震にやられてびっくりした。
したが、それでなんもなしというのも気分が沈むばかりなので、ちょっとばかり書こう。
逸翁美術館「役者で魅せる芝居入門」の前期最終日に行った。
うっかりしてたらまさかの最終日で、とにかくカチコミ…やなくて駆け込み。駆け込みといえば太宰治「駆け込み訴え」最高。
まあとにかく、池田文庫と松竹の協力で見事な展示があった。

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・歌舞伎のいろは
歌舞伎図屏風 江戸初期  近世風俗画の方。絵は屏風に貼付。上下に刺繍で亀甲文の中に紋所の文様が並ぶ。
六曲一隻の5、6に舞台が描かれる。1扇目には見に行こうとする人の駕籠が続く。
中に一つ窓が丸くくりぬかれているのがある。絵としての演出で実際は違うのかもしれないが。
その中の貴女がなかなか美人。そしておつきらしき少女も可愛い。陸尺の中には奴ひげもいる。
木戸前ではそんな駕籠同士でケンカ。騒ぎに巻き込まれないように慌てて中へ逃げ込む人々も少なくない。
鷹羽のぶっ違え文の一座。木戸前の茶店では女が一人店を預かる。茶筅がみえた。
松も生い茂る。舞台では女歌舞伎が華やかに公演中。
男装の女がいる。「阿国歌舞伎」とは記されてはいないが、彼女以来現れた一座か。
下座は鼓のみ。三味線はなし。時代が本当に限定されてくる。

踊形容新開入之図・踊形容楽屋之図 三世豊国 1856  読み方が「おどりけいよう・にかいいりの図とがくやの図」で二階三階の様子を描く。
役者たちの多忙な様子、まだ少年姿の初々しい13世羽左衛門(5世菊五郎)がいたり、4世小団次もいる。
おやまさかの3世嵐璃寛もいる。河原崎権十郎と話すのは3世粂三郎(8世半四郎)、三階は当時鶴蔵の3世仲蔵が車鬢をつけているところ。後の7世海老蔵、4世芝翫もそれぞれ稽古したり、ワイワイガヤガヤと活気ある様子。

中村座三階稽古惣さらいの図 国貞 1833  三本立てろうそくの小卓をいくつか置いて灯りにしている。杜若と立ち話する鼻高幸四郎の横顔、暇そうなのは嵐冠十郎。

市川團十郎部屋にて支度の図 国貞 1826  見立てもので「暫」の支度をする團十郎を手伝う男衆が、丁度いま腰を締めてるところ。そこへ来た粂三郎と、既にいて火鉢に持たれる菊之丞。畳には「美艶仙女香」の袋が。
お客の見たい図を絵にし、更に宣伝もきっちり入れるところに職業絵師・国貞の良さがある。

月雪花名歌姿画 芳幾 1865  守田座で四世芝翫が演じた変化もののお役三つを一堂に描く。蘭平・傾城・見突(桜を担ぐ)。更に上手に清本連中・下手に常磐津連中を置く配置。
幕末頃は芳幾もこうして芝居絵を描いていた。

千歳座新狂言替利絵 四世国政 1885  仕掛けもので、幕のところに何枚も絵が重ねてあり、それをいちいちめくると舞台絵になるという。こういうの楽しくて好きだ。

江戸巷市街建前新工夫梁組之図 三世豊国 1855.12  市村座の新築の際の梁の組み方が長谷川勘兵衛新案の亀甲梁で、役者たちが感心しきりという図。そしてその亀甲梁の絵も絵の左上に別にしっかりと描いている。見てなるほどと思ったり。
大道具の大親方・長谷川勘兵衛にはやっぱり建築家の素養もあるんやなあ。
そりゃ仮設とはいえきちんと屋台組まないと事故起きたらあかんからなあ。

秋花先代名松本 よし国 1821.7 中の芝居 これで「はぎはせんだいなはまつもと」と読んで、五世幸四郎を江戸から迎えた三世歌右衛門とのがっぷりなわけだ。
三世歌右衛門が荒獅子男之助で、ねずみをしばこうとするところと、花道のすっぽんからドロドロと出現する五世幸四郎の仁木弾正。鼻高幸四郎の横顔というのも実にいいな。

積恋雪関扉 国芳 1832.11 市村座  左から12世羽左衛門の頼信、四世三津五郎の黒主、三世菊五郎の小町桜の精。花道で大鉞担ぐ黒主。観客はどうやら団体さんなのか、それぞれ「なんとか連」とかそんな字のついた手ぬぐいを頭にかぶったりまいたりで、役者の応援をしているらしい。こういうの見たら今のアイドルコンサートとあんまり変わらない。

・制作部
これがよかった。資料展示なんだが、面白くて仕方ない。
夏祭浪花鑑 台本  図書館用に合冊にしたもの。開いているページをみると「長町裏の段」だった。そう、義平次が団七を挑発するところ。「人殺し、親殺しじゃ」と騒ぐ。とうとう団七が殺しにかかるシーン。

書き抜きもでていた。歌舞伎役者特有のもの。ここにあるのは「敵討岩見譚」

チョボ床本 義経千本桜 道行初音旅 歌舞伎になった義太夫狂言。

長谷川勘兵衛の道具帳がある。
廿四孝 大きな灯籠、橋、室内もある。例の仏間である。
ほかに長谷川勘兵衛の考案した数々の仕掛けの種明かし本もある。刀のΩなのとか色々。

戯場楽屋図会 1800  三味線ひく女たちもいる。女形もいて、宴会中。

歌舞伎や浮世絵に詳しい漫画家・一ノ関圭の絵本作品に歌舞伎小屋を描いた作品がある。
あれを思い出し、江戸博にある中村座の実物大模型を更に思い浮かべると、実感が湧いてくる。

・宣伝部
顔見世番付、紋番付、絵尽くし、辻番付といった宣伝ものなどがある。
辻番付は夏祭の全段のシーンが双六のように配置されたものがでていた。
ネタバレというてもいいが、1シーンだけのコマなので、よけいにそそられる。

・役者の生涯
いきなり写真パネル。先日三代で襲名した高麗屋の皆さん。
めでたい。それぞれのいい写真が出ている。

昔の襲名のもある。
戦後しばらくの13世片岡仁左衛門の襲名時の絵看板も立派だ。上方役者らしく近松の芝居をし、半年後には東京でも行ったが、こちらは鳥居派の絵看板。

当代の仁左衛門が孝夫から襲名した時、上村松篁さんの描いた絵を基にした手ぬぐいか扇子かが配られていた。

寺子屋 国貞 1823.5 中村座  鼻高幸四郎の松王、三世三津五郎の源蔵、三世粂三郎の女房戸波。さぞやええ眺めであったろうなあ。
13年後の「車引」図もある。鼻高幸四郎のいい横顔。

明治の勧進帳もある。天覧歌舞伎から12年後の歌舞伎座での上演。配役は前回とほぼ同じらしい。あの天覧歌舞伎があったればこそ、地位向上が叶ったのだ。

幡随長兵衛精進俎板 国貞 1818.3 中村座  腕組の長兵衛は幸四郎、ドクロの眼窩から薄が生える柄の着物着た寺西閑心の七世團十郎、その前で長兵衛の子が俎板で何やら見得を。妙に可愛い。

・豆役者
すし屋 三世豊国 1856.7 市村座  四世小団次のいがみの権太が子の善太をおんぶ。可哀想にこの父子らは義理のために…情愛を見せるからよけいに哀れなんだよな。しかもその権太の「献身」も無駄に終わるわけだし。

1940年の抜き書きがある。四世嵐鯉升のための。映画界で北上弥太郎と名乗り、復帰後は嵐吉三郎。調べると武智鐵二のところにもいたのか。
北上弥太郎はうちの母にいわせると、映画よりTVの単発時代劇でよく売れていたとのこと。なかなかかっこよかったそうな。

ここにある書き抜きは子役時代のもの。
「あつい はあい あつい あっつー」
浜松屋の小僧役。

写真集 廓文章 新町吉田屋 1914.11歌舞伎座  びっくりした、五世歌右衛門が立ってる!!この頃はまだ立てていたのか。
「大成駒屋」の夕霧と「大松島屋」の11世仁左衛門の伊左衛門とは、これはまた凄い顔合わせやなあ。

口上 芳雪 1863.2 角の芝居  上方役者が集合。松島屋一門に浜松屋の嵐璃寛も。
とはいえこれ、巡礼姿の子らと亡霊らが。

・歌舞伎好き
座付引合之図 芦ゆき 1826.12 二世関三十郎  「花王」印の揃いものを身につけるひいきの人々。花の字の上に王の字を重ねる。そしてその人たちが関三(と称された)に進物を贈る。

歌舞伎は名調子の台詞が多い。それを好きな役者の声色をまねて再現するのもファンの楽しみ。
勧進帳の富樫と弁慶のやりとりのシーンの台詞が書かれた本があった。ルビが振ってある。

ブロマイドは弁慶の飛び六法、勧進帳と鎌倉三代記のもの。

イメージ (1078)

長谷川勘兵衛の仕事の紹介パネルがあった。とても面白く興味深い内容。本雨、差し金、早変わりなどなど。
工夫は無限にある。

・芝居の魅力
寿式三 春芝 1831.11 中の芝居  二世尾上多見蔵  舞う。めでたいものはまず三番叟で言祝ぐ。
ところでこのヒトの話で笑いすぎて苦しくなった話がある。
息子の二代目尾上和市に関することだ。
誰の芸談にあったか忘れたが、和市はどうも名人の息子と言う立場にありながらも色々とややこしいひとで、妙なことを言いだすひとだったそうだ。
松王丸を演ずる心得などを人に訊かれて語っているが、その内容は素晴らしく、皆なるほどとと思う。話しもそこまではいい。
だが、和市はさらに続ける。
松王が首実検する時(演出として松王はその時「病身」という触れ込みで非常に顔色が悪いという設定)すうっと半眼になるが、
「そのまま百日鬘の糸を引いて髪をパカパカ上げればお客は喜ぶぞ」
…あかんがな。わたしは笑いすぎて苦しかった。

義経千本桜 四の切 三世豊国 1848.3市村座  どういう工夫か、三味線の胴から飛び出す狐忠信。びっくりの人々。
八世市川團十郎(源義経)初世坂東しうか(しづか御前)四世市川小團次(源九郎狐)岸沢式佐(三味線)

神霊矢口渡 国芳 1850.5 河原崎座  五世市川海老蔵(わたし守頓兵衛)三世岩井粂三郎(娘おふね) 悪人の父を必死で止めようとする娘

絵看板 神霊矢口渡 芦国  櫓の太鼓を打とうとする娘と、舟でそこへくる父。
この絵看板はこれまで何度も見ているが、緊張感がある。
この絵看板はこれまで何度も見ているが、やはりかっこいい。

本朝廿四孝の特集があった。後期は夏祭浪花鑑。
「奥庭」「十種香」を描いている。狐たちの活躍もいい。

写真集 楼門五三桐 1896.3. 四世中村芝翫 (石川五右衛門)  このお役と言えば二世延若のが最高だというのを思い出すが、さすが四世芝翫だけにいい押し出し。

忠臣蔵  五段目 国芳 1851.2 市村座  左右に分かれてことが同時進行する。左奥に走る猪、そして勘平と弥五郎。
右側ではチラシのとおり、傘を開いた定九郎が与一兵衛を殺す。
三世嵐吉三郎(斧定九郎)初世中村翫右衛門(百姓与一兵衛)七世市川高麗蔵(千崎弥五郎)八世市川團十郎(早野かん平) 

七段目 国貞 1832.9 河原崎座  一力茶屋、今しもおかるが大星に呼ばれて梯子を降りるところ。
ここの台詞がけっこうえっちくさいのだが、今はあまり言わなかったか。
二世岩井粂三郎(おかる)三世尾上菊五郎(大星由良之助)

・歌舞伎であそぶ
茶室のところに立版古で巨大な奥庭。狐たちも八重垣姫も立体。部屋の複雑な構造もよく作られている。

鬘合わせも楽しかった。これは実際複製品で遊べたので色々やってみたがけっこうハマる。

今回の展示は「阪急文化アーカイブズの「浮世絵・番付」でこの記号を検索すると画像をご覧いただけます」とのことで、pdfのリストから作品を追うのも可能なのが嬉しい。
こちら

後期は6/23から。今度は早めに行きたいと思う。
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