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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

幻想の新宿 ―月岡芳年 錦絵で読み解く四谷怪談ー

先日「みほとけ」の記事を挙げたので、今日はホトケの話で行こう。←チガウ
「幻想の新宿 ―月岡芳年 錦絵で読み解く 四谷怪談―」
八月だしホラーね。←何の脈絡があるのだー
イメージ (1207)

新宿歴博の企画展は大概面白いし「あっ!この発想はなかった」なのもある。
今回は四谷怪談を中心にした新宿にまつわる怪異な伝承を集めた展示。
以下、サイトからの引用。
「新宿区に伝わる数々の伝説の中で最も有名なものが、左門町に暮らした「お岩様」にまつわるものです。江戸時代に四代目鶴屋南北が戯曲「東海道四谷怪談」の着想源とし大評判を博したことで、伝説は広く浸透しました。
幕末から明治にかけて活躍した絵師・月岡芳年は、幻想や怪異を主題とした作品を多く手がけ、その墓は新宿区にあります。本展では晩年に手がけたシリーズ「新形三十六怪撰」を、前期・後期に分けて三十六点全て展示します。淡い色彩で静謐に幻想を描く本シリーズの中でも、四谷怪談を主題にした一枚は、伊右衛門の帰宅を待つお岩様の嫉妬心を高度な表現で描いた傑作です。
本展では四谷怪談を中心に怪談・奇譚を主題とした錦絵を展示するとともに、芳年と親交があり怪談噺の名人として知られた三遊亭円朝、そして小泉八雲や泉鏡花といった新宿ゆかりの文学者たちの資料を展示し、新宿という土地に刻まれた幻想を掘りおこします。」


楽しいなあ。
日本を代表する怨霊・お岩さん…いや、ここではやはり「お岩様」とゆこう、彼女を中心に様々な新宿の奇怪な話をみる。

まずは現在の新宿区の地図に往時の怪談の現場を載せたのを見る。
丁寧に場所の特定もされ、それぞれ物語も簡単に記されている。
この地図を持って季節のいい頃に新宿を探検するのも楽しかろう。
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地図の中にある大蛇の絵は何かと言うと「十二社の大蛇」で、詳しくはこちらのサイトに。
紀州出身の鈴木氏が新宿を開いたのか…
紀州の鈴木と言えば雑賀孫一の本姓も鈴木だったな。
鈴木主水もここらの関係か??

1. 新宿の伝説・伝承
新宿が今のような繁華な様子を見せるようになったのは、やはり関東大震災以降だそう。
それ以前は宿場の内藤新宿があったが、それが今の新宿の全てではない。
ところでわたしはお江戸のヒトではないのでここで新宿の伝説・伝承をちょっとばかり挙げる。
その方が後の話に都合がいいのだ。

・家康が「馬一息で駆け巡るだけの範囲を与える」と伝えたため、内藤清成は馬に乗り榎の大木を中心に東は四谷、西は代々木、南は千駄ヶ谷、北は大久保におよぶ範囲を駆け、その馬はついに倒れて、まもなく死んでしまったそうだ。

・太宗寺は、江戸六地蔵のひとつに数えられ、また閻魔像・奪衣婆像が安置されており、庶民の信仰を集めていた。ある時泥棒がはいり閻魔の目を取ろうとすると、その目の光にヤラレて動けなくなり、難なく捕まったそう。
まさに「眼からビーム」ですな。

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その閻魔さまの眼が転がっている絵が右に。
歌川芳豊 さてはえんまの目をとりて… 

左は国芳。仲良しの太宗寺の奪衣婆と近所のお稲荷さん。遊び方がこれというのもどうなんだとは思いつつ。

2.錦絵で読み解く四谷怪談
このジャンルだけでいい展覧会が開けるのが凄いよなあ。
元々は忠臣蔵外伝と言う「世界」設定なんだけど、そこに色と欲を放り込んでドライさを足した南北御大の大傑作。
絵師たちがいい絵をどんどん描いたのも素晴らしい。

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伊右衛門だけでなくけっこう直助の絵が多いな。
直助は因果律に負けたので、その点では黙阿弥的キャラかもしれない。
伊右衛門は間違っても黙阿弥世界には現れないけれど。

錦絵とパネル展示とがあり、どちらもいい。

戸板返し、隠亡堀、庵室前の陰火、髪梳き…
いいシーンが多いので、いい絵も多い。

国貞、国芳、国周らの絵はこれまで多く見てきたが、意外な絵師の完全に初見の絵もあってそれがまた怖い怖い。

大坂の北洲のお岩様まであるとはびっくりした。
三代目尾上梅幸 お岩  立姿のお岩様がめちゃくちゃこわいんですけどー

芳艶 神谷仁右衛門・お岩  伊右衛門のことね。凄い青い顔。既に指は蛇。笹が背景に生い茂る。それだけでも何か怖いよ。

国安 お岩のぼうこん 尾上菊五郎 民谷伊右衛門 片岡仁左衛門  これまたうまい構図。火の車にお袖もいる。運命の火の車は回る回る。その下に小平と伊右衛門。

二代目豊国 南爾前来妙法経 みなみにくりきのむしぼし そう読むらしい。雨の中、菰包の女(お岩様)の髪を掴んで川へ・・・陰惨さがたまらない。

三代目豊国 四谷聞き書き 卒塔婆がいっぱい。そこにお袖、與茂七。

芝居では最近は直助とお袖が兄妹だということはスルーして、お袖は最後まで生き延び、夫の與茂七と復縁し、共に伊右衛門を討つ。
それも悪くはないが・・・

ところで実録の方の四谷怪談も紹介されていた。これがまた怖いのよ。
とにかく裏切られたことで鬼女となった女が「四谷方面」へ走り去り、その後事件の関係者が実に18人も横死するのだ。
タタリもタタリ。

三代目広重 東京名所 四谷左門町大巌稲荷社之真図  明治だけにスーツ姿の人も混ざっている。

3.幻視者・月岡芳年
ここで「新形三十六怪撰」が前後期展示替えありで展示。個人蔵。
好きな絵も多いので楽しく怖く拝見。
冒頭に挙げたチラシの「四谷怪談」や桜姫にストーカーする清玄の霊などがある。
後期は清姫の絵があるので、それもいい。
なおwikiで全図が出ているのでご参考までに。
こちら


4.物語から生まれる幻想
平成の終わりの今、江戸から昭和初期まで活きていた昔の伝説や物語・稗史の多くは忘れられ、廃れてしまい、次の世に伝わるかどうか知れたものではない。
しかし幕末から明治に生まれたこれら最後の浮世絵に描かれた物語はやはり面白いので、細々とでいいからなんとか命脈をつないでほしいと思う。

明治になってからの芳年の絵こそが芳年の本流というかパブリックイメージだと思うが、まだ瓦解以前の頃に描かれたものは師匠国芳の名残もあり、どこか楽しいような可愛げもあった。

和漢百物語の白藤源太の前で相撲を取る河童たちの絵もそう。それを暑さしのぎに見守る源太。構図は違うが暁斎のカエルの相撲を眺める美女と同じようなムードがある。

於吹島之館直之古狸退治図  福島正則の館で塙直之が古だぬきを退治する、という内容。直之は塙団右衛門。塙団右衛門はかつては講談の人気者で、逸話も多い。
三枚続きのうち左のおばけたち。
イメージ (1204)
ブサカワおばけたち。

新撰東錦絵 橋本屋白糸之話 1886 これも元の鈴木主水の話を知らないと面白味がない。
直参の鈴木主水が内藤新宿の橋本屋の白糸に入れあげて勤めにも出なくなる。
それを案じた主水の妻が男装して白糸に会いに来たところを描く。しかしそれでうまく行くはずもなく。主水は白糸と心中。
その実録がまず瞽女唄「ヤンレェくどき」となり、そこから清元、常磐津、八木節に。歌舞伎の新作にもなった。
絵は廊下に立つ白糸と御高祖頭巾の妻と。

このコーナーでは特に新宿に拘るわけではないようで、「箱根霊験」」の初花、滝夜叉、佐倉宗吾などの絵もある。
番町皿屋敷、殺生石、かさね、牡丹燈篭…
あ、圓朝の「牡丹」は牛込が舞台だから新宿区やな。
引越しマニア・北斎の北斎漫画もいくつか出ていて、おばけに摩利支天に俵藤太の帰還などがある。
そういえば北斎は新宿区内に住んだことはあるのだろうか。

馬琴は古希の頃に新宿に移転している。
その縁でか「八犬伝」のゝ大法師がこども時代の八犬士たちと「子とろ」遊びをする口絵が出ていた。
信乃と毛野は女児姿。可愛い。

怖いのが一点。
圓朝の「真景累が淵」がやまと新聞に掲載されるので芳年が広告絵を描いている。
それがモノクロだからか非常に怖くなっている。
元の鬼怒川の累が淵の話は非常に好きだが、圓朝のこれは生理的な恐怖がある…
随分前に沢村藤十郎の「豊志賀の死」を見たが怖かったなあ…
「変體累ヶ淵ネイキッド」は現代に舞台を変えているが、これが圓朝のに近いか。

そういえば松浦だるまさんの「かさね」もいよいよ最終回が近い…

5.それからどうなる?新宿ゆかりの文学者によるこわーい話
八雲、漱石、鏡花らの作品が紹介されている。
八雲の「怪談」はちりめん本にもなっていた。
イメージ (1205)
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「心」の草稿が一部出ているが、どうやらこれは「門付」のあれらしい。
「阿弥陀寺の比丘尼」もある。どちらも怪談ではなく、なるほど「心」に収められる話だと思われるもの。
せつないのだ…

漱石は「漾虚集」があった。「琴のそら音」の入ったもの。わたしはこの中では「幻影の盾」が好きだ。
そして「夢十夜」。あの第三夜は本当に怖い。
近藤ようこさんのマンガでもあの話は怖い…
第七夜はムットーニのからくりボックスのがいい。世田谷文学館にある。

鏡花は「高野聖」「国貞ゑがく」「日本橋」があったが、純粋な怪談は「高野聖」であと二つは違うぞー
むしろ「海異記」や「眉かくしの霊」の方がいいのでは。

他に怪談つながりでか柳田國男の本もある。
そうそう、鏡花「山海評判記」はいろんな要素の入った作品だが、怪談部分には柳田國男がモデルの博士一家も関わっている。
博士の家へ移り住んだ大正生まれの若いオシラ様は活発で、令嬢のピアノを聴きに来たり、令嬢から「フランスへ行きましょう」と話しかけられるとその気になり「参ろうよ」と夢枕に立つのだ。


6.こわいもの、あやしいもの、おかしなもの
なんでもあり。

鳥山石燕の「百鬼夜行」「百器徒然袋」などからオバケたちが紹介されている。

芳虎 道外武者 御代の若餅 1849  なんとこれ発売半日で発禁処分に!そして手鎖の刑をうける。
おおおおお、師匠国芳もされなかったことをしたなあ。家康の天下取りを諷刺したのだけど、幕末でもまだ黒船来てへんしなあ。

十二支の動物と有名キャラをかけた絵がある。
十二支見立けうにん尽  子年で仁木弾正、牛若丸、虎の助、辰は清姫、申は藤吉郎、戌は小文吾、亥は勘平。

幻灯機、双六、かげやとうろくじんの絵も。
夢二の「かげやとうろくじん」は可愛いが、綺堂「影を踏まれた女」は怖い小説。

1968年の少年雑誌が展示されていた。50年前。
「少年画報」は「怪物くん」が表紙絵。藤子さんのだから、ちっとも古くない。むしろポップでは。
水木サンの口絵「土ころび」もある。
「ぼくら」は鬼太郎、リアルタイガーマスク、妖怪人間ベムの連載中。

参考図書に楳図かずお「おろち」「赤ん坊少女」「黒いねこ面」…
めちゃくちゃこわいですがな…

8/26.まで。
この展覧会が無料と言うのは本当に凄いわ。
あの新宿オバケマップを手に入れたい人は急げ。





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