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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

浮世絵の妖術とモノノケ―「奇術競」と「和漢百物語」―

和泉市久保惣記念美術館「浮世絵の妖術とモノノケ―「奇術競」と「和漢百物語」―」はわくわくする展覧会だった。
遠くから訪ねたその先には喜びがある。

今回の展示は久保惣の所蔵品からなので、ぐるっとパス関西版で無料になる。
それだけでも嬉しいものです。

三代歌川豊国「豊国揮毫奇術競」37枚と月岡芳年「和漢百物語」27枚。
これらがメインで、他に国芳と広重のおばけものも並ぶ。
まことに「おばけ好き」にとっては嬉しくてならない展覧会だった。

リストと一口メモを美術館が出している。
pdfだがこちらへ。

そして「豊国揮毫奇術競」の画像についてはこちらが詳しい。

国芳の武者絵・オバケ絵・戯画がこの20年ですっかり世に浸透したあおりを食ったようで、国貞の人気が今の世には薄い。
しかし近年再び国貞の魅力を広めようとする動きもあり、わたしなどは喜んでころこんでそれに乗る。
国貞は師匠の名を継いで「豊国」となった。
本人は二代目のつもりだが間に一人挟まったので「三世豊国」というのが彼の後身となった。

とにかく作品が多い。それも客本意というか、お客の喜ぶのを描き倒した。
弟弟子の国芳は北斎に私淑したというが、あの奔放で豪快な精神は、「自分が描きたいものを優先」するという点で北斎と共通していた。
しかし国貞は師匠の豊国同様「お客の喜ぶもの」を描いた。
お客が見たいもの、たとえば芝居で見たもののその先の様子、演じられることのない情景、見たくても舞台ではそれ以上はしてくれない濡れ場…
それだけでなく、国貞の色彩感覚は明るく華やかで、それらが作品を「綺麗」にする。
かれは美人画の名手であり、芝居絵の達人として、とても楽しめる。

その国貞の脂の乗った頃の「豊国揮毫奇術競」全編がずらりと並ぶのだ。
楽しくてならないのも当然のことだった。

イメージ (1295)

さてその「豊国揮毫奇術競」を少々。
目録 芳虎  これは当人でなく芳虎が描いたもの。なかなか凝っている。
廃墟の様相を呈した荒れ果てた場所という設え。
扁額もおどろおどろしく、蜘蛛とねずみが巻物を開くようにみせるが、そこには様々な登場人物を演じた歌舞伎役者たちの名前が記されている。
和風ではあるが、どこかアメリカの仕掛け絵本ぽい妙な明るさがある。

将軍太郎良門  大きい緑色の蝦蟇を乗っけている。そして馬の絵(将門の息子だから)の描かれた一反木綿のような幟を開いている。裾は鼠が咥えてお手伝い。
姉の滝夜叉姫とは使い魔が違う。

チラシ中央の男女は左が蛞蝓をあやつる「勇婦綱手」、右は蝦蟇をあやつる「児雷也」
児雷也は八世団十郎がモデルのように思う。紙の蛙たちが空へ昇る。
綱手の乗る蛞蝓がシルエット風なのも妖しさを増す。

白菊丸  といえば普通は「稚児が淵に沈んだ稚児」というイメージがあるのだが、この少年は荒波をゆく鰐の背に乗り、誰のものか髑髏を差し上げてその夜の海を行く。
この白菊丸は間違っても恋の為に自死するようなタイプではなさそうだ。

犬山道節  火遁の術を使う道節。印を結び、もう片方の手で刀を握る。足元には鋭い光を放つ珠が。
「伏姫ゆかりの八犬士」の一人ですから。

蒙雲国師  出た!国貞随一のポップな絵。
イメージ (10)
「椿説弓張月」の悪人。尚寧王に「ワザワイとサイワイの形が見たい」と言われて妖獣ワザワイを出現させる力も持つ。

若菜姫  「しらぬい譚」のヒロイン、男装し「白縫大尽」として豪遊する姿も好きだが、ここでは巻物を開いて妖術を使おうとしている。その足元には使い魔の蜘蛛がいる。

馬琴「開巻驚奇侠客伝」に登場する楠姑摩姫は楠公の娘。
波の上に立つ「赤姫」の手には弓矢がある。

滝夜叉姫 こちらは将門の娘。秋草生い茂る野に捨てられた髑髏の目から蜃気楼が立ち、そこに丑三つ参りと維摩行をしているらしき滝夜叉の姿がある。頭には五徳をかぶり、揺らめく蝋燭の炎、胸には鏡、手には鋭い剣と鈴または小さな鐘、そして燃える松明を咥える口。
かっこいいなあ。

謎なのがいる。
藤浪由縁之丞  蝶々のコスプレをする若い男にしか見えない。足元から幾千もの蝶が飛び立つ。手には巻物。
蝶の妖術を使うらしいが、これをみて江戸の空に時に現れた「蝶合戦」を思い起こした。

怪人物はまだまだいる。
今回こうして全員を見ることが出来て本当に良かった。


イメージ (1296)

次に芳年「和漢百物語」
これも折々によい発色のものを見ているが、今回のも綺麗な色のでよかった。
27点を全部見たのはもしかすると初めてかもしれない。
有名どころの清姫、華陽夫人などの絵はよく見知っているが。

下部筆助  「箱根霊験」の忠実な下僕。初花の霊と対話する。
イメージ (1301)
初花は夫の為に命を落とす。

この蛙たちはまた別な話。

他にも師宣「異形仙人づくし」、北斎漫画のほか、国芳の黄表紙の挿絵で地獄太夫、暁斎の髑髏などなど。
広重「小倉擬百人一首」シリーズのうち、おばけ関連いろいろ。
葛の葉と童子丸、前述のと同じような様子の髑髏を持つ白菊丸。
国芳は桑名屋徳蔵などがある。

背景を二代広重(茶箱広重)、人物を三大豊国のコラボ「観音霊験記」シリーズが出ていた。
三室戸寺 何故かここで蟹満寺の故事が。
播磨法華山 米俵が空を飛ぶ。でも信貴山のあれではないのです。
などなど。

おばけ好きな人にものすごくおススメな展覧会だった。
とても楽しい…

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