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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

「日本画の挑戦者たち ―大観・春草・古径・御舟―」展を見る

山種美術館の「日本画の挑戦者たち ―大観・春草・古径・御舟―」展を見た。
日本美術院創立120年記念での企画展である。
たいへんよい展覧会で、名品が並ぶだけでなく滅多に見ない作品も多く出ていた。
これらは全て山種美術館の所蔵品である。
言えばコレクション展だが、名品ぞろいのこの展覧会は貴重な機会・場となって、わたしたちを魅了する。
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名画が集まる理由の一つに、所有者と画家との関係の篤さを挙げていいと思う。
今から半世紀ほど前に生まれたこの美術館には、創立者の山崎種二氏と画家との暖かな交流から集まった作品も数多くある。
一つ一つのエピソードを思うと、こちらの胸もあたたかくなる。
茶道具の場合、その道具に付随する物語・逸話・噂じたいがその道具の華にもなる。
絵の場合、そこまで逸話は必須ではないかもしれないが、知っているとよいことも多い。

絵を見る。
最初に現れたのは小林古径の「猫」、そうエジプトの猫神様と縁浅からぬ風情の虎柄のお猫様である。
可愛らしさと気品のまざりあう、立派なお猫様のお出迎えで気分がよくなる。

1.日本美術院のはじまり
狩野芳崖、橋本雅邦といった幕末生まれの人たちの絵がある。明治の世になって描いた二作はそれぞれ明治初めと明治末の作品だが、どちらも新しい世に生きようと描かれた絵だと思えた。

横山大観 燕山の巻 明治末の墨絵の巻物。随分と長く、そこに建物とヒトの姿がある。建物のパースは崩れているが、それが妙な愛嬌と存在感になり、そこがやはり大観らしくていい。

下村観山 不動明王  凄い筋肉美。マッチョだわー。かっこいい。それが空を飛んでやってくるのだ。20世紀初頭の空を。

菱田春草の坊やと牛の絵が二点。どちらもとても可愛い。
初夏(牧童) 牧歌的で坊やも牛も童画風。
月下牧童  牛の雰囲気がリアルになり、強めの風の中で坊やもきりり。

イメージ (1371)

2.再興された日本美術院
朦朧体から離れ、新たな表現法を模索する中で生まれた名品たち

大観 喜撰山  いつみても感じるのは「まんが日本昔ばなし」に現れるような山だということ。とてものほほんとおおらかで、平和で、のびやかな心地よさがある。

今村紫虹 大原の奥  今は尼僧となった建礼門院徳子の立ち姿。舅であり敵でもある後白河院が自分を訪ねてきたことをまだ知らないらしい。素足が痛々しい。

古径の「清姫」全点が並んでいる。改めてその良さが胸に来る。
始まりの「旅立」だけごくシンプルな線描画で、そこから色彩が物語の加わる。
なまなましさは全くないのに清姫の執着の深さが何もかもを壊してしまうのがはっきりと伝わる。
情炎に焦がされた末の死。不条理な死を迎える男と、手に入れられなかった絶望感で死ぬ女と。
彼らの姿は描かれずとも、脳裏に想像がはしる。
文の間に活きる「行間」、その感覚がこの絵にもある。

富取風堂 もみぢづくし  この画家は初めて見た。多種多様なもみじを描き尽くしていた。18種くらいか、短冊にそれらの名前が記されている。

速水御舟 前期に「昆虫二題」、後期に「名樹散椿」が出る。
今回は写生帖が出ていた。薔薇が描かれていて、なかなか素敵だ。

3.戦後の日本美術院
今日に至るまでの道

前田青邨 大物浦  海の青さは多層的で、それが嵐を表現し、船に乗る人々の運命の暗さを暗示させているようだ。

青邨 腑分  若い女の刑死人の腑分け。胸の形が綺麗だとかねがね思っていたが、この死体のモデルはお孫さんだったのか!びっくりしたー

守屋多々志 葛の葉  既に童子丸を置いて家を出た後の葛の葉である。胸も腹も露わにしたまま嘆きの顔を挙げる。
しかし彼女はどこへのその哀しさ・せつなさを訴えることはないのだ。言葉に出来ぬ悲痛さが満ちている。
灰色の夜、星が一つ。それだけが彼女の悲嘆を見ている。

小山硬 天草(洗礼)  多くの隠れキリシタンたちが見守る中で、小さな赤子に洗礼が。
丁度いま隠れキリシタン、潜伏キリシタンの資料などが世界遺産になった。
長崎ツアーをしたわたしは、信仰の重さに負けた…
そのことを思いながら絵の前に立つ。

宮廻正明 水花火(螺)  投網する瞬間を水花火と。かっこいいな。これは現代が舞台の投網なのだが、江戸時代の昔、旦那衆は漁師に弟子入りして投網の稽古にいそしんだそうだ。

多くの名画と新しい絵とを見ることが出来てとてもよかった。
やはり日本画はいい、とつくづく思う。
11/11まで。
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