FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

鳥瞰図 空から見る大正 昭和の旅

石神井公園ふるさと文化館で開催中の「鳥瞰図 空から見る大正 昭和の旅」展に行った。
ここの企画展・特別展はいつもとても面白い。
今回は鳥瞰図なので「吉田初三郎作品が見たいな」くらいの気持ちで現地へ向かったのだが、やはりというか、その期待よりはるかに面白い展示を見ることになった。
18110101.jpg

工房を率いていたから多くの作品を生み出すことも可能だった初三郎。
全国津々浦々という言葉が誇張でもなんでもなく、実際に訪ねているのもすごい。
「大正の広重」と称えられたのも頷かれる。
違うのは広重の頃になかった乗り物が出来て、日本のみならず東アジアを舞台にできるようになったことか。
初三郎の旅の成果は全て作品に結実する。

「昭和の広重」と謳われた川瀬巴水も多くの旅をし、名品を多く世に贈った。
実際に旅をすることで風景が心に入り込むことは多くの人にもある。
しかしそれを咀嚼し、形に出来る人はそう多くはない。
安藤広重、吉田初三郎、川瀬巴水の三人の描く風景には抒情性が活き、見るものに旅への憧れを懐かせる。
表現はちがっても共通するものがあるので、広重を元祖に「大正の」「昭和の」とそんな風に呼ばれたように思われる。
それは広重の風景がそれほどに人々に愛された証拠であり、初三郎の絵が世に知れ渡った証拠であり、巴水の絵が郷愁を誘う力を持つ証拠であるのだ。

初三郎の絵には楽しさがある。
一カ所だけを描いた絵ではなく、広域図である。
これはむしろ広重にはないもので、中世の寺社参詣図・近世の洛中洛外図こそがその祖だと言えるだろう。
初三郎の新案を練りこんだ鳥瞰図は世の多くの人に受け入れられ、愛された。
皇太子だった昭和天皇が初三郎の鳥観図を開いて「これはいい」と喜んだことも、その人気に拍車をかけた。
その町の詳細を頭に入れつつ、大胆なデフォルメを施し、緯度・経度も少しずらして、とても楽しい町の図・地図を拵える。
彼の作品が愛されたからこそ、現代の旅行ガイドの図面の様式が成立したのだ。

展示は様々な地域を描いた作品が並ぶだけでなく、小さな区域を描いたものも多い。
つまり「沿線案内図」である。
これがまたとても楽しい。楽しいのも当然で、「出かけよう」というキモチを起こさせるために拵えられた作品なのだ。
それを見て「行きたくない」では困るのだ。
だから多少の誇張は当然で、なおかつ遊び心をくすぐるものでなくてはいけない。

実際、観客であるわたしやほかの人々は鳥観図を見ながら「あー、ここはこうだったのか」「あっここ知ってる」などと独り言ちることが多い。
現実の風景や地図を踏まえつつ、目の前にある鳥観図の虚構にも惹かれ、そのあわいを楽しみもするのだ。

西武電鉄の沿線図などはわたしには遠いものでしかなく、どこまでがリアルでどこからが誇張かもわからないが、ただただ楽しく眺める。

初三郎の工房から独立した弟子たちの作品も並び、ご当地の沿線案内図もある。
そうしたところがいかにも石神井公園ふるさと文化館らしくていい。

小さい展示かもしれないが、ここはいつでも楽しい展覧会を見せてくれる。
なお常設室にも少しばかり関連資料があった。

藤澤で見た鳥瞰図の記事はこちら。
「空から見る相模と日本 鳥瞰図の系譜」 @藤澤浮世絵館 その1

この二つの展覧会を見て、改めて吉田初三郎の仕事の多さ・旅の広範囲さに感心した。
鳥瞰図、なんて楽しいのだろう…

11/4まで。
関連記事
スポンサーサイト
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア