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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

フルーツ&ベジタブルズ 東アジア蔬果図の系譜 その1

泉屋博古館の鹿ケ谷本館で面白い展示が開催されている。
「フルーツ&ベジタブルズ 東アジア蔬果図の系譜」
イメージ (1549)
また見るからにイキイキしたフルーツ&ベジタブルズが画面に躍っている。

日本・朝鮮・中国のいわゆる東アジアでは花鳥図・蔬果図というのが昔から活きていて、長く親しまれた。
これは西洋絵画の「静物画」とはまた違うもので、「静物画」はスティルライフ、死んだ自然を描くものであるのに対し、花鳥図・蔬果図は活きてる様子を描く。
野菜も果物も根から抜いた時点で死んだといえば死んだともいえるが、ある程度の時間までは新鮮でみずみずしく、元気そうに見える。
東アジアの絵師たちも観客もそのイキイキ具合を喜んだ。
ここには西洋の静物画と違い、宗教性はない。
ただし吉祥画の側面はあるので、願い事を絵に託した点では一種の宗教画かもしれない。まぁあんまり深く考えなくていい。
ちなみに西洋の静物画について、一つ見事な論考があるのでこちらをご紹介する。
「静物画 ヴァニタス(人生の空しさ)」


さて泉屋博古館へ行くには京都市バスがよいが、紅葉のハイシーズンの最中に5系統に乗るのは避けた方がいい。
そこでわたしは203系統を選んだ。四条河原町から祇園を抜けるまでは渋滞につかまりバス内も混むが、それが過ぎてからは案外気楽に乗れる。
東天王町で下車して徒歩数分で泉屋博古館に到着する。
いわゆる鹿ケ谷にこの住友系の美術館があるのだが、鹿ケ谷と言えば俊寛を思い出す向きもあろうが、ここでは京野菜の「鹿ケ谷カボチャ」を念頭に置いていただきたい。
それはヘチマのような形で真ん中にくびれのあるカボチャである。
毎年7/25には近くの安楽寺でカボチャ供養が行われ、中風封じの祈願がされた鹿ケ谷カボチャの炊いたんをよばれる。
わたしも以前食べに行ったが、おいしかったですわ。
その顛末はこちら
「大雨の中を遊ぶのはだれだ」 もう9年も前か。
その鹿ケ谷カボチャもこの展覧会で活躍している。

青銅器館のロビーに野菜の設えがある。
北野天満宮の10月最初に「ずいき祭」がある。
天神様に秋の野菜をお供えするのだが、これが野菜の拵え物でずいき神輿というのを毎年お供えする。
わたしはちょっとそれを思い出したが、別にそれとは関係がなかったようだ。
一茶庵宗家の佃一輝さんという方が設えたそう。
どうやら本物のような…
まぁ超絶技巧の作り物なのかもしれないが。



Ⅰ 蔬果図の源流 草虫画・花卉雑画
14世紀から16世紀の東アジアの絵画が集まる。

草虫図 明・15 世紀 絹本着色 1 幅   地に蒲公英が咲き、瓜も転がる。薄黄色の黄蜀葵もよく咲いて、小さな蝶々や虻たちが飛び交う。

草虫図 呂敬甫 明・15 世紀 絹本着色 1 幅 東京国立博物館   赤い罌粟が何本も咲く。その花の周りを小さな蝶々が舞い、地には蝗もいる。

この二枚の絵は並んでいるので続き物のようにも見えるくらいだった。丁度絹本の色の変容も同じだから背景が一つに見えたらしい。
どちらも和やかな空気に満たされている。

瓜虫図 呂敬甫 明・14-15 世紀 絹本着色 1 幅 根津美術館  同じ作者の瓜と虫の図。こちらは白いままなので趣が違う。大小の瓜が生っていてそれが芳香を放つのか、モンシロチョウ、蜻蛉、虻、バッタらが集まる。中には実の上に止るバッタもいる。
英語の題は“Melon and Insects”なので、普通の瓜よりやっぱり甘そうなのか?…なんてね。

仿沈周花卉雑画巻 張若澄 清・18 世紀 紙本墨画 1 巻 京都国立博物館  こちらは沈周の描いたのに倣って、という花卉雑画巻。薄墨でナス、大根、芙蓉、枇杷、青菜などが描かれている。
どれもこれもいわゆる「露地物」なのでおいしそう。

花卉雑画巻 徐渭 明・万暦 19 年(1591) 紙本墨画 1 巻 泉屋博古館  こちらにはカニ、魚、豆、筍がある。みんなおいしそうな様子に…まだ調理はされてませんが。

安晩帖 瓜に鼠図 八大山人 清・康煕 33 年(1694)  紙本墨画 1 冊 泉屋博古館  なんだかベレー帽でもかぶってそうなネズミが瓜を…  

瓜に鼠・蕪に蟹図 朝鮮・15-16 世紀 紙本墨画 2 幅 高麗美術館  二匹のネズミが仲良く喜んで瓜を食むはむ食むはむムハッ
それとやたらと偉そうな態度の蟹。
かぶらの蟹あんかけにして食ってまうぞ。←冬の味覚だ。

蔬菜図 栄存 室町・16 世紀  紙本墨画 1 幅 栃木県立博物館  丸々としたナスがコロコロ。これだけおいしそうに描かれた後、このナス自体の味てどうなるんやろう。
前に戸板康二の「ちょっといい話」にあったと思うが、ある洋画家が素晴らしい裸婦画を描いた後、モデルから味が落ちたとかなんとか…
まあ知らんけどやね。

蕪図 雪村周継 景初周随賛 室町・16 世紀 紙本墨画 1 幅 禅文化研究所  リアルにヒゲのあるカブラ…
イメージ (1554)

蕪菁図 「元信」印 策彦周良賛 室町・16 世紀 紙本墨画 1 幅 栃木県立博物館  こっちのカブラは葉が大きい。そして「心」の変字体のよう。小篆文字というやつ。
岩波から出た夏目漱石の「心」のあれね。祖父江慎さんデザインの。

枇杷蓮根柘榴柿図(果子図)の内から柘榴・柿 伝狩野元信 室町・16 世紀 紙本墨画淡彩 2 幅 東京国立博物館  英語で何というのか初めて知った。
(loquat, lotus root, pomegranate and persimmon)全然実感がないな。
柘榴 柿  それぞれ描写が細かい。食われてしまっているらしい柘榴と丸々した柿と。

Ⅱ 新旧の交差点―江戸前期から
様々な流派・描写の野菜と果実。

四季草花図屏風 「伊年」印 江戸・17 世紀 紙本金地着色 6 曲1 双 泉屋博古館  赤い茎の芋の葉が大きい。菊、萩、薄といった秋草から最後は冬の水仙。

茄子画賛  松花堂昭乗 玉室宗珀賛 江戸・17 世紀 紙本墨画 1 幅  おおーいい感じの茄子。

果物籠図 柳沢淇園 頴川美術館  去年の大和文華館での「柳沢淇園」展にも出ていた。
当時の感想はこちら
いつもは頴川美術館で見ていたが、別な場所で見るとまたこの絵の面白さがわかってくる。
イメージ (1553)


松に蔓茘枝図 鶴亭 江戸・宝暦 6 年(1756)  絹本着色 1 幅  Beach of Tarumi という英訳だった。これは先年の鶴亭の時に見ている。白い果実がべろんとなった具合がキモチ悪くて忘れられない。面白い絵。
イメージ (60)

桃果綬帯鳥図  戸田忠翰 江戸・19 世紀 絹本着色 1 幅  栃木県立博物館   大きな桃と派手な羽色の夫婦。

桃果図衝立 山本若麟 江戸・寛政 12 年(1800) 絹本着色 1 面 泉屋博古館  かなり大きい桃が三つ、辺りを制するよう描かれている。

長くなりすぎそうなのでここまで。



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