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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

フルーツ&ベジタブルズ 東アジア蔬果図の系譜 その2

続き。

Ⅲ ふたりの蔬果図-若冲・呉春
青物問屋の若冲と稀代の食通・呉春の描く野菜と果物!! 
それぞれの長い絵巻は前半部・後半部と展示替えあり。
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菜蟲譜  伊藤若冲 江戸・寛政 2 年(1790)頃 絹本着色 1 巻 栃木県佐野市立吉澤記念美術館  大きいシイタケから始まる。ぬめっている。生シイタケだから乾燥してないのね。トカゲや青虫が可愛く、カエルはファンキー。本人はまじめに描いていると思うけど、なにやらそこはかとなく妙にユーモラスでもある。

果蔬涅槃図 伊藤若冲 江戸・18 世紀  紙本墨画 1 幅 京都国立博物館  いつみてもなんとなく好きな作品。大根の周囲に集まる野菜たち。どれもこれも描写が良い。
白黒なのがいいのかもしれない。
しかしここへ集まる野菜に果物、みんなまとめて鍋でぐつぐつ炊いたら、とんだ地獄模様になるな。
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蔬菜図押絵貼屏風 伊藤若冲 江戸・寛政 8 年(1796) 紙本墨画 6 曲1 双   やたらと大きい野菜たちで、妙にミスコンを思わせる…シイタケ美人、南瓜麗人、慈姑佳人、可愛いかぶら、キュートな里芋などなど。わりと

こちらは呉春。呉春は食通だったそう。京都から池田にきて「呉春」となったこの人は、その地でよい仲間に恵まれて美味しいものを食べる会をよく開いた。
なおその呉春の名をとった日本酒が池田にはある。逸翁美術館に行くがてらそちらもちらっと見学もいい。

蔬菜図巻 呉春 江戸・18 世紀 紙本淡彩 1巻 泉屋博古館  さらりとよい表現で空豆、筍、二種のナス、茗荷、シメジ、ゆりね、水菜、クワイ…美味しそうやなあ。

なんだかんだ言うてもやはり静物画とは違うわけですな、この野菜たちは。
こんなけ美味しそうでみずみずしいのは生命賛歌でもある。
静物画の「ヴァニタス」とは対極にあることがわかる。
ただし、どちらがいいわるいはない。考え方が違うので同じ対象を描いても比較はできない。

芋畑図襖 呉春 江戸・18-19 世紀 紙本墨画 4 面 京都国立博物館  やたら大きい芋の葉の襖絵。英語を見るとTaro Fieldとあるので、この芋はタロイモ系らしい。というかやっぱりあれだ、里芋だろうね。
タロイモといえばパプアニューギニアではかつて主食だった。芋文化も奥が深い。

南瓜画賛 呉春 暁台賛 江戸・18 世紀 紙本墨画 1 幅  でかっっ!ちょっとびっくり。

Ⅳ その後の蔬果図―江戸後期から近代へ

稲・菜花・麻綿図 松村景文 江戸・19 世紀 絹本着色 3 幅 泉屋博古館  この温厚な景文の三点セット。稲には蝗もいる。季節も春夏秋と。やはり景文はいい。

梅実図衝立 山口素絢 江戸・文化 7 年(1810) 紙本金地墨画 1 基 泉屋博古館  応挙門下の美人画の名手・素絢の梅はコロコロしていた。可愛い。

草花写生図巻 第四巻 狩野探幽 江戸・17 世紀 紙本着色 1 巻(5 巻のうち) 東京国立博物館  なんとトマトですがな。左端の赤い奴。食べずに鑑賞用だったそう。
「トマトが赤くなると医者が青くなる」のはまだまだ後世の話。
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筍図 円山応挙 江戸・天明 4 年(1784) 絹本着色 1幅  二本の筍がごろんと横倒し。ああ、この皮をはいで…いろいろ想像するだけでヨダレが湧くわ。

本草図説 岩崎灌園 江戸・19 世紀 紙本着色 4 冊(78 冊のうち)
東京国立博物館  ここにあるのは朱欒、唐辛子、苦瓜、甘藷。リアルな表現。

農作物・果樹類図 山田清慶・服部雪斎ほか 明治 5-18 年(1872-1885) 紙本着色 6 枚(107 枚のうち)東京国立博物館  これまたリアルな。里芋、鹿ケ谷南瓜、キャベツ、ニンジン、菜の花。みんな甘そう。

蔬果蟲魚帖 浦上春琴 江戸・天保 5 年(1834) 絹本着色 1 冊 泉屋博古館  かぶらを狙うバッタやウマオイらの大きさが妙だな。

扇面菜根図 富岡鉄斎 大正 12 年(1923) 絹本墨画淡彩 1 幅 泉屋博古館分館  青菜に里芋。鉄斎らしい墨のかすれがまた妙に美味しそうにも。大胆な構図。

文房花果図巻 村田香谷 明治 35 年 絹本着色 1 巻 泉屋博古館  なんでもあり。そこへ文具も加わる。更に絵は濃厚。ほんと、濃いわあ。金魚鉢もあり、最後にはだるまさん。

小特集 描き継がれる墨葡萄
ここでは東アジアの吉祥画としての墨絵の葡萄画が並んでいた。
黒い葡萄を見ると「巨峰かな、案外デラウェアかも」と思ってしまうのである。

野菜涅槃図 富岡鉄斎 明治-大正・20 世紀 紙本墨画淡彩 1 幅  
やはりここでも大根が主役。レンコンやニンニクが取りすがっている。
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蔬果図 幸野楳嶺 明治・19 世紀 絹本着色 1 面 泉屋博古館分館  なんだろう、多幸感が満ちているような。あれだ、ディオニュソス的な雰囲気なのか。
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果蔬図 田村宗立 江戸・元治元年(1864) 紙本着色 1 枚 東京国立博物館  これはまた明治初期の油絵と同じ雰囲気がある。
切ったスイカにビワと賀茂茄子に鹿ケ谷南瓜をはじめ色んなのが転がってて、なんとなく日光浴しているかのように見えた。

蔬果図 伊藤快彦 明治・20 世紀 板地油彩 1 面 星野画廊  これこそ明治初期の油絵なんだが、バナナ、桃、百合他と言う取り合わせが妙に面白くもある。

野菜盛籠図蒔絵額 池田泰真 明治 35 年(1902)頃 漆、金属、貝 1 面 泉屋博古館分館  朝顔に貝を使って螺鈿。凝った造りなのが素敵だ。

最後に岸田劉生の三種の技法で描いた野菜と果物。

冬瓜葡萄圖 大正 14 年(1925) キャンバス油彩 1 面 泉屋博古館分館  暗い中、巨大な冬瓜によりそう小さい葡萄たちの沈黙。

四時競甘図 大正 15 年(1926) 絹本着色 1 幅 泉屋博古館分館  南画風な面白味がある。青い桃にビワに瓜に柿に…宴会で酔っぱらったような風情が楽しい。

塘芽帖 昭和 3 年(1928) 紙本着色 1 冊 泉屋博古館分館  シンプルに茄子がちょこんと。隠元も少しばかり。日本画。古径の絵に近いものを感じた。

いいものを見たなあ。

最後にこの展覧会の図録について。
コンパクトでとても愛らしい。


泉屋博古館の学芸員さんの論考・解説があるが、それも面白い内容だった。
またお名前がこの展覧会にとてもふさわしくて、そのことがとても嬉しくなった。
実方葉子さん。
今後も素敵な企画展を期待します。いい展覧会をありがとうございました。

12/9まで。
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