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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

カール・ラーション展にいく

生活に潤いと美が欲しいのは、多くの人の願いだと思う。
それを実現できる人は幸福だ。

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カール・ラーション展に行った。
新宿の長い名前の美術館である。
全然関係ないが、仕事で取り扱う商品にアルファベットだけで40字近く使う品名があり、あまりに面倒なので「長い名前の〇〇」と呼んでいる。これがいつしか浸透し、誰もかれもがそれをそう呼んでいた。
ここの美術館も早いところ名前を決めないとこんなことになるかもしれない。

さてわたしは前知識なしに出向いた。
知っているのは「良い展覧会」という評判だけだ。
そもそもこのカール・ラーションという画家を知らない。
スゥェーデンの国民的作家だということで、そういえば北欧の画家と言えばムンク展を見たなあ、もうすぐムーミン展もあるなあ、くらいのことしか考えていない。
あまり北欧の画家を知らないのだ。不勉強で済まぬ。

展覧会の副題は「スウェーデンの暮らしを芸術に変えた画家」
1853-1919 65歳で没している。
とても作品が愛されたようで今日に至るまで商品化され続けているそう。
北欧家具の人気にもきっと付与しているのだろうなあ。
そうそう、北欧と言えばフィンランド・カフェのmoiさん大好き。
吉祥寺に行けば必ず向かう。

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予想を遥かに超えて楽しめた。
絵もいいが、妻カーリンの仕事や共同して家庭を楽しみ生活を楽しむ姿が本当に良かった。
結局そこが現代に至るまで多くの人々に支持される理由なのだ。
画家としての仕事では特に妖艶な挿絵も好ましいし、子供らを描いた絵も明るい。
母親ではなく父親のこうした愛情を込めた子どもの絵はいい。

装飾性の高さも素晴らしい。
丁度時代がそうしたものを求めてもいたろうし、それを先導したのがこの夫妻なのだということもよくわかる。
なにより夢の結晶ともいうべき増築し続ける家がいい。
タイプは違うが水木しげるの家を思い出した。

国立美術館の壁画のための絵がある。
「冬至の生贄」のための男性モデル 1914  そうか、北欧らしい内容。王は民の為に犠牲にならねばならない。そして死と再生とを繰り返すのだ。
しかし実際には験が悪いとでも思われたか本画は受け取り拒否されたそう。
冬至の頃の王の死は新年のための通過儀礼でもあり…
そんな話はやめよう、というわけだ。
そういえば12/22は冬至だ。どこかでまた…

カールは妻になるカーリンと巡り合い、生涯を仲良く楽しく暮らしたそうだ。けっこうなことである。
ダーラナ地方にリッラ・ヒュットネースという自邸を建てた。
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生涯にわたって増築し続けたそう。
インテリアもファブリックも凝りに凝っている。

この地方は伝説も色々あり、湖沼鉱床による製鉄も盛んな地で様々な伝統も伝わるという。
北欧神話の現場になってそうなところのようだ。
神話のトールとかヨキとか鍛冶関連の話もあったはずだが細かいところを忘れてしまった。

映像が残っていた。きれいなのでデジタル処理されたと思う。
ラーション一家の楽しそうな姿が見える。犬もはしゃぐ。パラソルを立てて絵を描こうとするラーション。

若い頃の影響を受けた作品として英国のケイト・グリーナウェイの本が出ていた。
とても納得する。細部がよく似ている。
線描の美しさと色彩などや絵全体に漂う愛らしさなどが。

ラーションの絵自体はリアルなのだが、それだけに象徴主義的な作品を描くと、そのリアルさが真実味を増すところが面白い。
特に好ましかったのは挿絵や装幀など。

ユーハン・ ウルフ・ ヴァ リ ーン『 死の天使』 1880  とても手の込んだ立派な本。墓碑銘がいい。鎌を持った死の天使の美貌。
とても魅力的。

ヴィクトル・ リ ュード ベリ 『 シンゴアッ ラ物語』 ボニエール出版  1894  この挿絵のシリーズがなにもかもいい。
ジプシー娘シンゴアッラと騎士エーランドの悲恋物語。
ペン、 淡彩、 白のハイライトで妖艶な娘を描く。
『 森のなかの城』 エコ ーの城」
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「 『 エジプト の土地から来た異邦人』 踊り 」
「 小川のほと り のエーランド と シンゴアッ ラ」
「 『 出発』 孤独なアシム」
「 『 昼と 夜』 弓を引く エーランド 」
「 『 昼と 夜』 小川のほと り のエーランド と シンゴアッ ラ」
「 『 森の隠者たち』 エーランド と 漁師のユーハン兄弟」
妖艶な女と最初はお坊ちゃんな騎士がだんだんと落剝してゆくのが…
うねるような異邦人の踊りに不思議な四角い弦楽器、まぼろしのように浮かび上がる異国の神、二人とも行き着くところまで行ってしまったような虚無感、そして本を読む老いたようなエーランド…
こちらのサイトに挿絵と物語の紹介がある。

カール・ラーションは自分の家族の様子をよく描いた。
ここは家人の誕生日やなんだかんだ記念日を祝う習慣をもち、そのたびに芝居仕立てで楽しんでいたようだ。
子供らが色んなコスプレをして楽しんでいる様子を描いたエッチングのシリーズがたくさん出ていた。
日常のちょっとした仕草などもいい絵になる。
「家庭を愉しむ」ことをスウェーデン人に啓蒙していったのだ。

史跡巡り をする夫婦 1905
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夫婦仲がよく、それを絵にする。
実際になかなか美人のカーリンだが、娘らの誰彼よりもいちばん綺麗な女として描かれている。

そして家の中ではカーリンの機織り制作が盛んで、それが装飾となる。
ドアの上の花模様はカールの手描き。
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この「ひまわり」クッションはほしい。
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ただ、カールは妻もまた「芸術家」だとは最後まで気づいていなかったらしい。
その当時の社会情勢を思えば仕方ないことかもしれないが、彼女の仕事を見る限り、完全に対等なパートナーであり、芸術家だったように思われた。

世代的にジャポニスムの影響も多大にうけたカールは「日本は自分の故郷」だと晩年の著作に記している。
国貞の五十三次箱根、広重の忠臣蔵や大木平蔵あたりが拵えたような衣裳人形も展示されていた。

カーリンは特にテキスタイルに才能を見せた人で、シンプルだが着心地の良さそうで見た目も悪くない服飾もたくさん拵えた。
締め付けないがゆるゆるに見えない服と言うのは良いものだ。
彼女は生活者としては夫よりずっと現代的な女性だと思う。
ラファエロ前派やロココといった魅力的な装飾性の高いものを参考にしたのもいい。

現代まで愛される原因もとてもよくわかった。
うつくしい暮らし。それを実践した夫妻。
とても素敵だった。

12/24まで。

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