FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

扇の国、日本

サントリー美術館「扇の国、日本」
実にうまいタイトルやと思います。
シンプルな単語だけで胸に来る。
さすが、サントリー。

イメージ (1589)

上部にサントリー美術館ほまれの近世風俗画の舞踊図の6美人がずらり。
下部には名古屋城の扇面流図の襖絵。
真ん中にタイトルを扇型のコマに入れ、「せんすがいいね。」と可愛い文言。

これまで扇の展覧会をいくつか見てきた。
最初は浮世絵太田記念美術館で鴻池家のコレクションが入ったおひろめ。
93年6月「琳派の扇子」展。
鴻池家の扇子は膨大な数があり、それを一括購入したそう。
因みに他のお道具や什器や着物などが大阪歴史博物館に寄贈されている。
そのあたりのことはこちらに書いてます。
華やぎの装い 鴻池コレクション

他に嵯峨芸術大所蔵の扇コレクションの展覧会も見た。
当時の感想はこちら
貿易扇 欧羅巴がもとめた日本美の世界

このときに「扇は日本固有のもので、中国経由で欧羅巴に広まった」ことを知った。
そう、扇は日本発祥の道具です。
扇の歴史についてはこちらが詳しい。
京都の舞扇堂さんのサイト

あとは神戸ファッション美術館でのロココファッションを見たときに当時の欧州で愛された扇の展示もあった。

つまり、わたしは扇の現物展示を見てきたわけで、絵画の扇面図をも含んだ展覧会を見るのはこれが初めてということになる。
扇面流しはよく見てきているが、様式の一つということでそれをメインにはしていなかった。
そのあたりをきちんと押さえているのがやっぱりさすがサントリー美術館なのだった。

というわけで長い前置きでようよう展示室へ向かいます。
イメージ (1592)

巨大な扇のオブジェが登場。タイトル書いてますがな。
床にも大小サイズを変えた扇の案内がある。
凝ってるよねえ、こういうところが好きだ。

序章 ここは扇の国
パリ万博に扇を出品した日本。全て東京国立博物館所蔵。
展示替えがあり半々で出ているが、そのラインナップがいい。
狩野探幽 山水図扇面
英一蝶 松に白鷺図扇面
長沢芦雪 雀図扇面
谷文晁 雛に蛤図扇面
歌川豊国 遊女図扇面
歌川国芳 九紋龍史進図扇面
わたしがみたのは芦雪の雀。可愛かったなあ、ちゅんちゅんしてる。
今は国芳の史進かぁ、いいなあ。
誰が選んだのか知らないが、当時のパリ万博ではさぞウケたろうね。

第1章 扇の呪力
これが章だてされてたのは良かった。ちうにココロが刺激されますがなw
そう、扇というものは単に暑いから使うだけではないのですよ。
古代、中世、近世での扇の重要性について、改めて思い知らされたわけです。
紹介はないが、清盛の日招きも扇だったし、思った以上に扇の存在の大きさに唸った。

彩絵檜扇がある。島根・佐太神社(島根県立古代出雲歴史博物館寄託)のもので12世紀の最古のものらしい。
殆どご神体そのもの。
これを収納する箱もある。
龍胆瑞花鳥蝶文彩絵扇箱  開いたままの形で収める。

檜扇は板、紙扇はカハホリ扇。かわほりはコウモリのこと。蝙蝠扇。
10世紀末に入宋の折にお土産として中国へ持って行ったそう。

熊野速玉大社古神宝類のうち、彩絵檜扇が十握ある。
熱田神宮にも。
神道だけでなく佛教でも薬師如来像納入品に扇があったり。
四天王寺の扇面法華経冊子も扇だ。
毛利秀就関係資料のうちには陣扇があり、金地に朱の日の丸が描かれている。
そういえば前述の清盛の日招き扇もイメージとしては日の丸だったような気がする。
那須与一も扇の的を狙っている。

この章だけでもかなりゾクゾクした。

第2章 流れゆく扇 
扇面図でまとめている。
これまでこの意匠だけを集めたものは見ていなかった。

柳橋扇面流遊女図屛風  石見美術館  ここの所蔵品は目黒雅叙園の美人画を収蔵したときから、魅力的な美人画コレクションを柱とするようになった。この絵は完全に初見だがとても楽しい。
六曲一隻の左端の橋の上には遊女たちがいて右手の川に流れる扇面を見ている。けっこうアクティブで「おーっ」とか「ああっ」とか肥が聞こえそうである。
しかもあれだ、鯉や鯰まで飛び出した。あんまり可愛いのでちょっとだけ写した。
ヘタな写しだが、したくなったキモチは通じるかな。
イメージ (1595)

柳橋扇面流図屛風 大阪市立美術館  二曲一隻 田万コレクションの一点。留守文様や遠近感の面白さがある。

扇面流図屏風 東京国立博物館 六曲一隻 伝・本阿弥光悦  こちらはトンボや蛇籠もある。

さてチラシにも登場した名古屋城のは狩野派の絵。
イメージ (1590)
雀、カワイイな。

意外なところで「珠の段」の大織冠図屏風がきた。
鳥の調理シーンがやたらと気にかかった。

そしてこのおねえさんたちの登場。
イメージ (1591)
いいねえ、楽しいわ。

第3章 扇の流通
色んな人の日記や東寺の文書などがあるが、とにかく扇子と言うものは贈答品に丁度いいのだ。
よく江戸時代などでも目録に白扇が入っている。
そうそう、上方が舞台の映画「西鶴一代女」では、流浪と変転を余儀なくされる女・お春の短い幸せは「扇屋の女房」時代だった。
扇を買いに来る客を愛想よくもてなし、旦那と共に働くお春。

名所図の載る扇、十牛図が描かれたもの、などが面白い。

扇面貼混屏風  240もの扇で構成されているらしい。花鳥から文芸までさまざまな内容だったなあ、

第4章 扇と文芸
やはりここの章は楽しかった。

源氏物語、伊勢物語だけでなく、平家物語の一ノ谷、曽我物語の巻狩り、北野天神縁起のざくろなどなど面白い図が扇面に載っている。

酒呑童子図扇面  首が飛んで頼光ガブっのシーン。開いたらこの絵というのはなかなか凄いな。
ふと春画の扇面もいいだろうと思った。

源平合戦扇面貼交屏風  30面もある。多くは戦場のヒトコマだが、磨墨の話などもあるのが奥ゆかしい。

花鳥風月物語絵巻断簡  巫女姉妹の花鳥と風月が貴族の前で扇絵の鑑定というか占いをするところ。

素朴な奈良絵本の扇の草紙もある。

第5章 花ひらく扇
ここでは主に江戸時代の作品。
扇が絵の中にある浮世絵が並ぶ。
宗達派から抱一ら琳派の作品も多い。

扇屋さんとして路上販売していた池大雅のいい絵もある。奥さんの玉瀾のも。
夫婦そろって仲良く楽しく絵を描いていた。

蕪村の美人図は後ろ姿で官能的だ。

芦雪 熨斗に海老図  あーわるくないが、解説に「奇想派の絵師」と言い切っちゃったねーええんかい?

抱一の雷神図もいい。それこそこれを開いてパタパタしたら雷が起こったりしたら面白そう。

芝居の「扇屋熊谷」だったか、あれが久しぶりに見たい。93年に見て以来か。

終章 ひろがる扇
やきもの、小袖、カルタなどの工芸品がある。
扇文様はめでたい。

織部、伊万里、乾山のやきものなど扇形のものが並ぶ。
洗うのは面倒だろうが、欲しいな。

七宝の釘隠しもいい。刀装具もけっこう扇文様を使っている。
小袖は無論のこと。

ひとつ面白いのが破れ扇を文様にしたもの。
メメント・モリではないところが日本の美意識だ。

最後の最後に長崎の出島が扇形だと紹介されていて「あっ」となった。
10月に行った時、気づかなかったなあ。

最後の最後まで楽しめる展覧会だった。

12/26からは大幅な展示替えがある。



関連記事
スポンサーサイト
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア