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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

「ご存じですか?大坂画壇」 ―もっと知ってほしいと思うよ。

かつて江戸時代には京、江戸だけでなく大坂にもよい絵師が少なからずいた。
「金儲けばかりしてたんじゃないの」というのは大いなる誤解で、いや、誤解とまでは言うまい。
つまり、儲けたお金を文化に活用していたのだ。
偉い。企業メセナの魁。

絵と言うものは描きたい人が描いたらええわけだが、当然ながら他者の眼をも最終的には気にする。
いや、ヒトによっては最初気にしてついには気にならない境地へ行くか。
まあしかし職業として絵師を選択すれば、やはり儲からないといかんのである。

あのマティスでさえもそうだ。
世界的に巨匠になってからも、自分の絵をたくさん購入してくれるコーン姉妹に「いつもありがとうございます。今度の絵はこんな感じです、いかがでしょうか」とおススメの手紙を出しもしている。

幕末から明治の絵師・森一鳳はお城のお濠に繁茂する藻を刈る「藻刈船」を描き、大いにヒットした。
「藻を刈る一鳳」 もをかる一鳳  儲かる一方
というわけで縁起絵として人気が高かった。
大坂は旧い土地柄から吉祥を尊ぶ。

なんにせよ絵を飾るには座敷のどこへかけるか、床の間だ、というわけで座敷に絵を飾るレベルの人が良い絵を購入した。
そうしてそれらが世に伝わった。


いつものように前置きがやたらと長いのも、大阪画壇の知名度の低さによる。
大坂画壇の絵師の絵を所有し、かつ展示されるところはきわめて少ない。
大阪歴史博物館は常設展示室で常に数点の絵を展示しているが、それも宣伝なぞしないので、知らないままスルーする人がとても多い。
なんと勿体ないことをするか。もっと宣伝せんかい。

所蔵するも展示のタイミングがなかなかないのが
・関西大学博物館
・大阪商業大学商業史博物館
・池田歴史民俗資料館
・逸翁美術館

比較的よく展示してくれるのが
・頴川美術館

こんな感じか。
今回、八幡市立松花堂美術館で個人所蔵のコレクション展示なのだが、上方浮世絵まであって明るいラインナップだった。
そしてその展覧会のタイトルがこれ。
イメージ (1995)

丸い菊になんとなく見覚えのある人は少なくないと思う。
これはこの十年くらい案外人気者になった琳派の中村芳中の菊。
大体あれだ、〇に・で菊にするのは芳中が私淑する光琳以来か。
まあ目玉親父の親戚にも饅頭にも見えるところが可愛いわな。

他に田植え図があるが、早乙女たちの笠をこの〇に・でやってるから同じパターンが面白い。

上の青い鳥は上田公長「枯木唐鳥図」。
この絵師と言えば逸翁美術館の猫が思い浮かぶ。
どんなにゃんこかと言うとこちら
猫もいいが、この青い鳥もいい。
全体図
イメージ (2001)
廻りをほぼ墨絵淡彩で鳥だけはっきりした青を使うので印象が強くなる。

下ののんびりしたラクダは長山孔寅
この人の絵も府中市美術館の「春の江戸絵画祭」あたりで見知った人もいると思いたい。
もっちゃりしたラクダは実景によるらしい。1821年に見たようである。
ゾウも孔雀もラクダも日本に来てたからリアルな絵もあるし、実物からそんなにかけ離れてもいないのだ。
虎はさすがに来なかったねー

西山芳園の絵が結構多い。松村景文の弟子。四条派。この人の息子・完瑛の絵もある。
完瑛、寛瑛どちらが先の雅号だろう。そのあたりは不勉強で知らない。
棲鳳から栖鳳へという人もいるから簡単な字へ変わった…わけではないわね。
いつか調べよう。

やさしい雰囲気の雁カプ、墨絵の龍に張子の虎風なのの対、西王母に寿老人、機織りする二人の女などがある。
イメージ (1998)
西王母の手には桃、寿老人の傍らには鹿。この爺さんはカノープスの化身でしたな。

イメージ (1999)
庶民的な女二人。和やかに働く。

どうでもいいことだが、昔は農家でなくとも機織りを持つ家も少なくなかった。
母から聞いた話だが、母の父のきょうだいたちが家の中でかくれんぼをしていた時、誰もいないはずの機織り部屋からギッタンバッタンと機織りの音がする。みんなで見たら飼い猫の古いのが手拭を姉さんかぶりして、機織りをしていたそうだ。
子供らに見られて猫は飛んで逃げた…
大正半ばの話。

寛瑛 妓女図  リストには父親の生没年が記されているが、父・芳園は幕末に没し、息子は明治30年に没している。
二人の芸妓がそれぞれ笛、月琴を演奏。月琴は明治30年頃で廃れるが、幕末はなかなか人気だった。
坂本竜馬の妻となった竜子は家事がダメだが月琴はうまかったらしい。
そうだ、横溝正史「女王蜂」でも月琴は重要なアイテムとなっていた。
上村一夫「修羅雪姫」でも月琴を弾くシーンがある。
ここには賛が記されているがそこに「明楽」とあるので、どういう意味かと考えたが、もしやあれか、中国から来た音曲と言う意味で「明楽」なのかつまりミン・ガクなのか。
wIkiにもそんな記述がある。

昆虫図 上田耕甫 上田耕冲の子。昭和に亡くなってるのだが、このリストだと父の生没年が記されているな。
見たときは何も思わなかったが、こうして感想を拵える時に調べるとアレレが多いな。
いや、この人だけでなく他に参加した絵師もいるからよいかもしれない。
クロアゲハ、モンシロチョウ、カマキリ、トンボ、コオロギ、バッタ、クモ、タガメ…
リアリズムの博物誌風な昆虫たちだった。

近年とても人気の出た大坂の絵師がいる。
耳鳥斎(にちょうさい)かれの絵が一点。
歳晩図  年の暮れだとて河豚を調理…中にデコッ八までいる。
イメージ (1989)
それにしてもでかい河豚だな。

松川半山 住吉踊り図  御田植の時の。立派な花笠の下で支度をして待機中。この構図自体は後の菅楯彦、生田花朝も踏襲している。
わたしはこの伝統行事を見たことがないのだが、友人はわざわざ見に行っている。
なかなかにすばらしいらしい。

岡田玉山 三番叟図  蜀山人の賛がある。「あら玉の年 六六三番叟 とうとうたらりたらり」表具はどうやら蛍らしき虫の刺繍が。

中井芳瀧 官女図  打掛が華やか。小袖にも薄いセピア色に近い色で小花の文様が入る。
イメージ (2000)
打掛は百花。季節を超越して咲き誇る花々。

岡熊岳 蘭亭図  木々に人々が隠れるように立つ。こういう蘭亭図は知らないなあ。
文人画らしいのが続く。

絵師たちが集まってテーマごとに描いた画帖も楽しい。
それぞれ画風が違うのがやはり面白くあるのだ。

松渓読書図 森琴石  高士の理想的な生活らしいが…
イメージ (1996)
侍童は静かに煎茶の支度。


上方浮世絵もいろいろ。
貞信、芳瀧、貞廣らの京阪を中心とした風景+美人画などが楽しい。

三世歌右衛門の法界坊を描いたのもいい。関三十郎もいて、いいキャスト。

北英 中村歌右衛門大当狂言尽  三世歌右衛門は「兼ネル役者」の称号をいただいた名優。
池田文庫などにも多くの彼を描いた浮世絵がある。
ここでは11役の歌右衛門が描かれている。
清正、団七、師直などなど・・・

月岡雪鼎 官女図
桜の下に佇む美女。
イメージ (1997)

いいものをたくさん見れてよかった。
もっともっと大坂画壇の絵が見たい。
以前のまとまった展覧会と言えばこんなのがあった。
近世大坂画壇をのぞく
当時の感想はこちら
多くの人が大坂画壇の良さを認識してほしいと思う。

7/7まで。
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