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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

奈良を観る なら観光記展

奈良の昔の風景写真、神戸の昔の祭りの様子、丁度いまそれぞれの地でその展示がある。

奈良市美術館とはどこか。
旧奈良そごう美術館がその場にあたる。
2008年にポップアップ絵本展を見て以来の再訪となる。
かつて奈良そごう美術館だった頃はよく出向いた。
そのことは先日ここに挙げている。

明治初期から昭和までの奈良観光の関連資料が一堂に会しているのはとてもよかった。
「奈良を観る なら観光記」展は東博の古写真、奈良市史料保存会、出版社、奈良市写真美術館、個人コレクション、鉄道会社の資料で構成されていた。
あいにくなことに図録はない。あれば買いたかった。
イメージ (2129)

・近代奈良観光の始まり
横山松三郎の明治五年の東大寺、興福寺の写真が並ぶ。
まだそんなころなのでちょんまげの町人が映っている。
大仏殿,南大門、鐘楼、夏の二月堂…
興福寺の金堂、三重塔、春日大社、薬師寺東塔…
廃仏毀釈の脅威が…

同時代の明治初期の猿沢池ばかり集めたものが面白かった。
手彩色がなかなかきれい。
色々な角度からの猿沢池風景。
右手に南円堂、中に三重塔、更に電柱と金波楼もみえる。
ガス灯も出てきた。きぬかけ柳、采女社、そして「五十二段」の様子が二態。
全部ある版と半分くらいで踊り場が来て、それから続くというもの。
明治28年頃のはそんな感じらしい。
人力車もたくさん停まっている。
今も奈良には人力車がよく働いている。

その段とはこれ。わたしが〇をつけているもの。
イメージ (2170)

空海手植えの松を「花の松」といい、それと三重塔のショットもある。
これは大正のもの。
今もこの松あったかなあ。ああ元のは1937年に枯れ、後継も2008年に枯れたのか…
この展示に出ているのとは違うが、こちらのサイトに古写真が年代ごとにたくさん集められている。


芸術的な写真は既に明治中期にある。
春日大社参道に一頭の鹿がいて、どこかを見ている。
こうした構図はやはり芸術写真でしょう。
もうこの時代にこうした意識を持つ写真家が生まれている。
意識的か・無意識かは別としても。

明治後期の大仏殿の屋根をメインにした写真にはシビがなく「鳥衾式」のものがついていた。
こういうのも面白い。

明治35年 奈良名勝独案内図 フルカラー。明治の浮世絵と同じく赤が強く発色している。右は白毫寺まで。既に博物館の近くの陳列館も描かれている。
イメージ (2131)

明治41年 奈良名勝全図  こちらは更に色彩も洗練されてきた。建物名は赤い名札に記されている。16師団53聯隊兵営、女子師範(今の奈良女子大)も。

奈良ホテル開業の絵ハガキもいい。
池から見える奈良ホテルの姿。
今もいい眺めだが、当時は更に素晴らしかったろう。
久しぶりにメインダイニングに行きたい。
大正期の奈良ホテルの様子を写した絵ハガキもある。もうこの時代は楽しめる時代になっている。
イメージ (2130)

今は鷺池と呼ばれる蓬莱池、そこには浮御堂。大正9年の風景。
同年の猿沢湖畔の絵ハガキもいい。鹿に俥に…

観光マップ、いいなあ。
実景図、真景図などが色々。
明治26年 月ヶ瀬梅溪16勝地真景図  躑躅川も描かれている。梅だけではなく躑躅もか。川の名前だけであっても雅なものよ。

奈良名所早見図は大仏殿が中心。日露戦争前くらいはもう観光地として東大寺も興福寺もなんとか生き返りつつあるのだな。
明治33年 奈良実測図は珍しく石版の地図で、周囲にコマ絵のように各地の名所が描かれているが、ちょっとばかり當麻曼荼羅ぽくも見えなくもない。

名所絵ハガキも色々と工夫が凝らされている。浮世絵風美人と名所の写真、カラフルな装飾と名所、色々と楽しい。
博物館、二月堂、猿沢池、奈良公園…

明治42年に東京から汽車で一日かけて志賀直哉・木下利玄・里見弴が奈良へ来た。
最年長の志賀でさえまだ20代半ば、最年少の里見弴も随分若かった。
かれらは楽しく奈良ツアーをしている。
遥か後年の昭和16年、里見弴は当時を振り返り、その時購入した絵ハガキやスタンプなども含めて「若き日の旅」を上梓した。
それからさらに40年余り後に里見弴は没した。
わたしはこの本を1993年頃に入手して、今も折々大事に読み返している。
かれらが購入したと同じような絵ハガキ、地図、ガイドブックなどがここにある。

大正期の絵ハガキの袋絵が鹿をモチーフにしたものが多い。各種あるが、偶然か、みんな鹿だった。
こういうのも面白い。

勧業博覧会ポスター
イメージ (2174)

昭和になり、吉田初三郎の鳥観図の隆盛が奈良観光にも来た。
県庁の近くにメソジスト教会もあり、刑務所は今の形だし、寺もすっかり回復している。
まだ大軌鉄道の頃。

旅行ガイドブックも新書版のが出ている。
江戸時代からこうした本はよく出ていたが、活字印刷が主流となったおかげで読みやすい。
そうそう、大正7年では今の近鉄奈良駅から大阪(鶴橋、上本町、難波のどれとは書いてないが)まで55分らしい。
案外今と変わらないな…

博文館が刊行した「鉄道省 鉄道旅行案内」は挿絵を吉田初三郎が担当しているので、とても魅力的。
この頃の博文館はいい本をよく出していた。
これは横長版。

大軌電車沿線案内図絵 附吉野電車 大正末 いいなあ、これも。吉田初三郎。吉野山だけでなく高野山も描かれ、信貴山、生駒、更には遠く富士山、釜山、上海、樺太までも。
嗚呼、大日本帝国よ。奈良県内ではもう天理が大きく描かれていた。
そういえば大本教やひとのみち教団は大弾圧を食らったが、天理はなんとかしのいでいたな。
…どうでもいいことだが、この三つの本拠地にわたし行ってるな。金光教にはまだ行ったこともないが。

奈良電車沿線案内 昭和3年 この奈良電気鉄道というのがやはり今は統合されてるわけだが、後の昭和6年版もどちらも吉田初三郎の絵。
カラフルで綺麗。橿原、天理、笠置、柳生、伏見桃山まで。
あー、なんか行きたくなってきたよ。
伏見桃山は近鉄・京阪・JRがすごく近い所に集合してて、梅田もびっくりなんだが、誰もこれに言及しないな。
けっこう桃山辺り好きなんよ、わたし。

畝傍線開通時の西大寺駅 大正9年  立派な駅の写真。
国鉄奈良駅の写真は昭和9年。今移動したあれだ。いい建物…

参宮急行名所図会 昭和6年  吉田初三郎 伊勢から松阪、津、名張、上六へ展開してゆく。
来月お伊勢さんに行くことになったのだが、今も上本町がお伊勢さん向かうベースやもんなあ。

信貴生駒電車沿線案内 大正11年  生駒ケーブル、索道な。ほんわかしてる。
生駒のケーブルは可愛いよ。信貴山はわたしの生まれる前に一家でお参りしたそうな。
それ以来わたしは行ってないので、いつか行こうとは思っている。

吉野鉄道名勝案内 大正2年 吉野山の名所と「有名人」と。如意輪寺、いがみの権太などなど。
更に表紙に武士が戸板に歌を記す姿を転用してこの本のタイトルを記させている。
「歌書よりも軍書に悲し吉野山」芭蕉の弟子・支考の句。

写真が色々出てきた。
レトロなボンネットバスの春日奥山周遊バス、大軌奈良駅構内などなど。

そして昭和15年つまり紀元2600年のプレイボール…やなくて、その年だけにやたらと橿原神宮の栞や案内が並ぶ。
やべー時代だわ。
21世紀の今に来年は紀元2680年とかそんなこと言うような議員がいよんねんから、もぉあかんわな。

エログロナンセンスの時代の楽しい風物画もある。
奈良名所風物画 物産・木辻遊郭 昭和10年  鹿の角、一刀彫、赤膚焼などの工芸品の横に遊女の絵がある。
木辻遊郭といえば小出楢重がそのあたりに下宿したことがあり、キョーフ体験を面白おかしく記していた。
笑って苦しかったわ。

昭和初期の奈良シールが可愛い。
四種とも。
イメージ (2171)
イメージ (2172)

宿屋の栞や引札がある。宣伝文句が面白い。
「梅川忠兵衛、水戸黄門、荒木又右エ門も宿泊」…まあな。
旅館いんばんや、いろは館、小刀屋、月乃家、玉屋本店、吉田屋、佳よ志本店、大仏館、好生館、奈良ホテル…

奈良市観光課のポスターでいいのがあった。昭和20年代
鹿たちが一斉に走る姿を横からとらえたもの。躍動感があった。

昭和40年代にはディスカバリージャパン。
特急あすか号、王寺駅を出るD51、奈良大和路仏像ポスター。

イラストマップ奈良見て歩き いかにもその時代らしい可愛い絵柄のもの。ドリームランドもあった。

・奈良への誘い 文士と奈良
入江泰吉先生のお写真で紹介されている。
学生の頃、少しばかり入江先生に教わったので、今も入江泰吉「先生」。
薬師寺東塔遠望 亀井勝一郎「大和古寺風物詩」  やはりよい。

興福寺阿修羅像 堀辰雄「十月」  朱色の顔、金茶に薄緑がかった髪や肌。塑の美とでもいうのか。

東大寺広目天像 會津八一「南京新唱」 びるばくしゃ まゆねよせたるまなざしを まなこにみつつ あきののをゆく
この眉根を寄せる広目天については折口信夫「死者の書」にもある。

中宮寺菩薩半跏像 和辻哲郎「古寺巡礼」 和辻の呼び掛ける「わが聖女」こそ、この像。

唐招提寺金堂列柱 會津八一「南京新唱」 おほてらのまろきはしらのつきかげを つちにふみつつ ものをこそおもへ.  やはり秋艸道人の短歌の美しさにしびれる。そして木の文様をも写し取る入江泰吉先生の写真の美…

奈良大和路仏像ポスターについてはまたいつか。




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