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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

出光美術館「唐三彩 シルクロードの至宝」展をみる

出光美術館では「唐三彩 シルクロードの至宝」展が開催されている。
イメージ (2182)


最初に知った「シルクロード」は何か。
これはわたしの世代では間違いなくTVドラマ「西遊記」からだという人が多いのではないか。
ドラマの中で原作同様に三蔵法師御一行はシルクロードを旅する。
このドラマのOP曲はゴダイゴ「MonkeyMagic」で悟空の歌と言っていい。
ED曲は「ガンダーラ」である。
後年「ガンダーラ仏」を知るようになるまで、この未知の言葉の音感に不思議な魅力を感じていた。
歌詞がまた夢を見せてくれた。
「そこに行けばどんな夢も叶うというよ 誰も皆行きたがるがあまりに遠い」
「愛の国」「夢の国」「どこかにあるユートピア」としてのガンダーラに思いをはせ、三蔵法師御一行の面々が向かう先が天竺だということを忘れ、どこか遠い夢の国たるガンダーラへ向かって旅をしているような錯覚を懐いた。

そして引き続いてNHKが壮大なドキュメント「シルクロード」を放映し、喜多郎の楽曲を世に贈った。

展覧会を見る間、ずっとこの曲が無限に脳内再生され続けていた。


出光美術館はシルクロードの遺物を集めた展覧会を何度か開催している。
特にシルクロードと位置づけずともイスラーム美術、コバルトブルーの世界、そしてシルクロードの宝物…
これらがきわめて魅力的な展覧会だったことは、何年経とうと忘れられない。

もう少し長い前書きが続く。

個人的にシルクロードへの愛着はそれだけにとどまらず、中学の教科書にあった大谷探検隊、初代龍村平蔵の獅子狩文錦復元の苦労話で頂点に達した。
更にそこへ神坂智子「シルクロード・シリーズ」の連載が始まり、丁度楼蘭から発掘された美女の話も加わって、中学生のわたしの中でシルクロードへの憧れが完全に形成された。
これは2020年になろうかと言う今日も変わることなく続いている。

こうした下地があるわたしがこの「唐三彩 シルクロードの至宝」展を見て、感激せずにいられようか。
展示を見る間ずっと、シルクロードに関するこれまで見てきたもの・読んできたもの・聞いていたものが脳内再生され続けていて、目に入るもの+過去映像+音楽が三位一体となって、大いに盛り上げてくれた。
洛陽の流行ものを象ったらしき明器であっても、それは活きてわたしに向かっている。

プロローグ 三彩への道
ここでは後漢時代から隋末唐初の緑釉のかかったものと、北斉から隋の白磁が並んでいる。

馬と御者 まだ汗血馬は来ず、地の馬がモデリングされているが、どうも馬と言うより河馬、つまりカバぽい体型である。
どっしりした体躯に太短い脚の馬は東アジア原産の馬だったはずだ。

後漢のわんこは可愛いのばかりだが、これまた愛らしいわんこだなあ。お座りしながらベロ出して「わんっ」。
可愛い喃…
前漢だと犬は闘犬または食事になったようだが、後漢だと可愛いわんこになるのだなあ。

籾倉 どこかで見たような形だと思ったら、これは水木しげる「悪魔くん」に現れた家獣ではないか。松下一郎の方の悪魔くん。
壁面には猿などが貼り付けてある。

隋の牛車と御者 大車輪である。実に大きな車輪。それが二輪。

この頃のラクダ像はどうも怖い顔つきである。

貼花文壺も唐初期には手間がかかるという理由で廃れてきたらしい。
そう、それをせずとも「唐三彩」が出てくるのだから。

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1. 唐三彩 シルクロードの至宝
一口に唐といっても初唐と盛唐とでは美の価値観も異なる。
女性もほっそりからふっくらが人気になった。
なのでフィギュアも造形が変わる。

チラシの女性は唐初のフィギュアらしい。頬は豊かだが、後のブームのふっくらさんではない。
何かを持つのだが、てっきり箜篌のようなハープ系かと思いきや、蓮だった。
蓮がぐんにゃりと女性の肩に張り付いている。

楽人像 座って笛を吹く美人さんは頭上に扇状のまとめ髪、頭頂にお団子二つの美人もいる。

女子像 少女の像は両サイドに丸くまとめたもので、これは初登場のレイア姫のと同じ髪型。
ショールは紺色。ショールなのかベストなのかは知らないが、よく似合っている。

いよいよふっくらさんが登場。
小鳥を指に止らせたご婦人。髪も豊か。

コートを着た鷹匠も。
そして男装する唐美人たち。
幞頭(ぼくとう)というかぶりものにコート、それに乗馬ズボン。
中には頭巾姿もいて、颯爽と男装する。
それら騎馬人物たちがずらりと並ぶ姿は壮観だった。
数段の階段を上り下りする特別な空間に、その一団の姿がある。
そしてそのそばには、沙漠をゆくラクダたちのシルエットを、異国的な地模様を背景にしたスクリーンが垂れる。
いい演出だ。

パネルでフィギュアたちの発掘現場写真が紹介されていた。
騎馬だけでなく単独で牛や馬のフィギュアもいっぱいあった。

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ふくよかで愛らしい万年壺、三足盤などが「三彩」に彩られている。
それだけではなく、龍耳瓶も碗も可愛らしい枕もある。
小さな枕の用途は筆写時の肘枕だという説もある。
唐から奈良に来て、大安寺から掘り出された枕達。


・シルクロードの宝物 様々な明器と装身具
可愛らしい仕草を見せる獅子像、銀製鍍金の鴛鴦文簪、非常に細密の小さな杯など、綺麗でかわいいものが並んでいた。
こうした丁寧なつくりのもとを見てつくづくこの時代の豊かさを想った。

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2.伝統と革新の融合 唐三彩の諸相

紀元前ころから大体紀元後の数百年の間に作られ、土の中で長く眠ったことで色と組織が変性したガラス。
東地中海で生まれたそれらがここにある。

唐三彩を離れ、褐色・緑・藍色に染まったやきものもある。
白地の多い三彩もあり、変化に富んでいる。

トルコのリュトン、イラクの水瓶、エキゾチックなものたち。
中国の南北朝時代のサハリもある。ここでは「響銅」と表記されていて、その語感・音感にときめく。
しかも「王子形」ともついている。この王子は中央アジアの王子ではなく、我が国の聖徳太子のことだった。
そう、厩戸王子。法隆寺伝来品なのでそう呼ばれるそうだ。

・ミニチュア明器の世界
死後の世界でもまた楽しい暮らしを続けてほしい。
その願いを受けて愛らしいミニチュアが作られた。

小さくて愛らしいものばかりで構成されている。
その中で猿笛といって猿の顔面の笛があるのには笑った。

3.遼三彩とペルシア三彩
唐が廃れ遼が台頭し、遼は唐文化の継承者だという。

以前、遼の遺宝を集めた展覧会をいくつか見たが、唐文化へのリスペクトと共に自民族の嗜好・志向・思考が打ち出された表現だと思えた。
当時の感想。
宋と遼・金・西夏のやきもの
中国王朝の至宝
契丹 草原の王朝 美しき三人のプリンセス
ペルシアはこちら
ペルシャのきらめき

ここで面白かったのはまさかの人魚形水中ならぬ人魚形水注。
海から遠く離れた草原の民が何故人魚!?
口を開けた双髷の人魚。あーちょっとびっくりした。

ペルシア三彩は当然ながら今のイラン、9-10世紀の遺物。
ペルシアと言うだけでエキゾティックな想像と憧れに満ち満ちた夢の国。
ここの吉祥文様を描いたものが正倉院の宝物として伝わるのも素敵だ。

多彩釉線刻花文様  4つばかり並ぶがみんなヒマワリのようなはっきりした花が二重に咲いている風だった。
人物文はなかった。

・エピローグ 三彩スタイルの系譜

金時代の三彩は色彩がやや薄く、その色合いが好みのものが多い。
うすめの緑とオレンジという取り合わせも明るくていい。
蓮が黄色で表現されたものもある。
牡丹文枕は欲しい。

久しぶりに法花牡丹文梅瓶が出ていた。肩のあたりの瓔珞文がネックレスのような瓶。裾にはラマ式蓮弁。胴には蝶々もいる。
sun426.jpg

もしかしたらこの展覧会以来の再会かも。
当時の感想
出光美術館の「花鳥の美」

法花花卉文象耳瓶 一対の瓶、本当にゾウさんがついている。みんなで四頭。耳がわりにびろんびろん。
こちらはやや薄めの紫に青の線。白花が綺麗。

明末期の緑釉香合が可愛い。鴨と鸚哥と。どちらもうずくまり。

さて懐古的な造形もよくした清朝。
三彩蓮葉形水滴  中に小さい蟹が貼りついているのがアクセント。

三彩扇形皿 これも可愛いなあ。

日本でも三彩を拵えている。
源内焼と九州の長与焼のが出ていた。
長与焼の碗と壺が可愛い。いいサイズなのだよなあ。


今回、画像が大きいのはやはりその嬉しさの表れ。
ぜひとも本物を見に行ってほしい。
8/25まで。
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