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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

今年は蕪村、呉春展の当たり年なのだ

蕪村、呉春、そして松村景文へと至る道が好きだ。
むろん応挙、芦雪の道も大好きだ。
かれらの作品を観る機会が近年増えているのがとても嬉しい。
18世紀の京都画壇、いい絵師がぞろぞろいる。

終了したが、西宮大谷記念美術館で春に開催された「四条派への道 呉春を中心として」展を始まりとして、2019年は呉春の展示を多く見ることが出来る年だった。
今も開催中の逸翁美術館「ゴシュン 画家「呉春」―池田で復活(リボーン)」展、大倉集古館「桃源郷展 蕪村・呉春が夢見たもの」などと後続の展覧会もいずれも素晴らしい。

各展覧会のそれぞれの感想を挙げるのもいいが、今回はふらふらと好き勝手なことを綴ろうと思う。←いつもそう。

蕪村は毛馬の出で若くして江戸に出てまず俳諧の人になり、芭蕉の足跡を慕って自身も旅に出た。
四十を超えて京に居を定め、そこで家庭を営み俳諧と絵とで暮らした。
心筋梗塞で70前に亡くなったが、弟子たちは呉春を筆頭に出来の良いのが多かった。
蕪村が婚家で虐められていた娘を連れ帰った後、弟子たちが師匠の作品をうまい具合に売りさばいて娘の再婚の婚資にあてた。
それに使われた作品は「嫁入手」と言われ、今日も伝わるものが少なくない。
師匠も弟子もみんないい人揃いだ。

蕪村は「俳画」の創始者で、絵に俳句を添えたのにめちゃくちゃ良いのが多い。
わたしなどは芭蕉より蕪村の句の方が好ましく、蕪村の句のボットをフォローしていもする。
Wikiの蕪村のページに、紫陽花の上をホトトギスがしゅっと飛んで行く絵がある。
    岩くらの狂女恋せよほととぎす 
これなどもたいへん良い作品で、所蔵先の愛知県美術館で絵ハガキを購入し、大事にしている。
岩倉は近世から精神病の療養の地であり、今も立派な病院がある。
静かなところである。

蕪村は中国の文人画の技法で中国風な絵も描いている。描かれているのは大方は杣や百姓などで、その日その日を自然と共に生きる様子をしみじみと描く。
どうぶつの絵もとても良い。朝鮮絵画も学んだそうで、東アジアのいきものを温かく描くところに蕪村の人の良さが出ていて、そこが好ましい。
また独特の書体がいい。丁度いま伊丹の柿衛文庫が「蕪村の手紙」展を開催している。
このチラシのおっちゃん、可愛いなあ。又平である。
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さてその蕪村の中国が舞台の絵と言えば、桃源郷を描いたものが大倉集古館に出ている。
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一点二点ではなく意外に多い。遠山記念館、岡田美術館のものもあるので、やはり多くの人を惹きつける良さがあるわけだ。
桃ツナギで桃園の誓いを描いたのもある。三国志の義兄弟の契りのあれね。
桃のふんわりしたのを描く様子がいい。
桃源郷の話自体は存外せつないというか、先のない話なのだが、絵画化されるのはのほほんとしたところなので、そこまで深く考えなくてもいいのだ。
その意味で、大倉集古館の長期にわたる休館とリニューアルにふさわしいオープニング展覧会の目玉として、蕪村と呉春師弟の心地よさそうな桃源郷を描いた絵が各地から集まるのは、やはりめでたい。

この章の後には「桃」を巡る中国の絵画や工芸品が出ている。
桃は吉祥の象徴。東アジアでの人気の高さを思うと、この花も実も豊かな植物の存在の不可思議性にうたれる。

蕪村の描いた桃源郷の始祖や後裔をたずねる。
谷文晁、山本梅逸、富岡鉄斎に至るまでの人々が物語に忠実に、あるいは逸脱してその理想の村を描いている。
村にいるのは人だけではなく犬やトリもいる。
絵師により表現の違う犬たちを見るのは面白い。
ゆったりした時間の流れを感じる展覧会だった。
なおリニューアルだけに大観の「夜桜」など名画も出ている。

春に終わった西宮大谷での呉春の展示ではこの屏風がひときわ目を惹いた。松鶴図
イメージ (1939)

もっと鳥をよくみる。
イメージ (1938)
まるで呉春描く動画のようだ。

大江山の鬼退治屏風もある。
しかし殺戮シーンなどの残虐なのはなく、鬼の首持って凱旋するのもつくりものを籠に乗せてるようだった。

この展覧会では動物の絵が多く出ていた。
イメージ (2361)


イメージ (1942)


イメージ (1941)

呉春は蕪村の死後に応挙に弟子入りをしたが、これまた人格者の応挙は偉そうにもせず、一緒にやろうと言ってくれた。
呉春という人は愛妻と父とを同時期に亡くすなど悲痛な経験を経たヒトだが、それ以外は人間関係に恵まれている。
当人の資質がよいらしく、あの偏屈の代表・上田秋成とも仲良くしていたそうな。

西宮大谷では呉春の弟子たちや大坂での四条派の広がりも紹介していた。

イメージ (1940)

四条派の自然描写のよさは座敷に合う。
現代でもちよっといい座敷には温厚で明るい景文の軸が似合う。
四条派は現代の京都画壇にも続き、竹内栖鳳らがその道をつないだ。


最後にさすが東宝!なチラシ。
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呉春は最初は蕪村風な絵を描いていたが家族を亡くした傷心を癒すために蕪村の勧めで池田へ行った。
そこで数年間過ごした。それが展覧会のコピー「池田で復活(リボーン)」になったのだ。
かれは名も改め、画風も変わり、この地で「呉春」となったのだ。

もともと社交的な性格なのもあり、楽しい仲間も生まれ、グルメとしても名高く、よい日々を過ごした。
天明期の作品は特に素晴らしく充実している。
決して堅苦しくない、呉春の作品群をみる観客も居心地の良さを感じるようになる。

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逸翁美術館の展示は若い頃から晩年まで集めるだけでなく、逸翁だけでない他の機関の研究者たちとコラボしたそうで、その五人のコラムなどが紹介されている。
それを読むのも楽しい。こうした協同・協力によって大きな成果が表れるのはけっこうなことだ。

まだ呉春以前の月渓25歳の拾得図がいい。箒と笠とを持った拾得がただ一人どこかをなにかを誰かを思っているような風情を見せて立ち止まっている。
寒山はいない。だからこんな遠い目をしているのか。
日高撲堂という人の賛を写す。
擁箒其何拂 当避雨
昏惑不知猶 為知寒山
乎拾徳(得)

池田に行く前の、父や妻が亡くなる頃のどうぶつを描いた図はどこか寂しい。
秋の山道を往く寂しそうな鹿、リアルな鹿の子文様を背に載せた見返り鹿、木登りする猿との対幅は北村美術館の蕪村のカラスの絵を念頭に置いて描いたらしい。
そうした師匠の作品を意識しつつ別な作品をものすのもいい。

師匠の蕪村に倣って文人画風なのもある。
中国の故事を描いた「龍山落帽・桃李園図屏風」は大阪の広岡家が持っていたそう。
静かなフルカラー作品で、なるほどこうした抑制というものこそが文人画だと思わせてくれる。
とはいえさすがおいしいもの好きな呉春、お皿に載るものの描写が細かい。

さていよいよ池田に移住し名も呉春と名乗りました。
楽しい日々の始まりはじまり。

天明期の作品はやはり画面全体から明るい雰囲気がある。
潯陽売魚図 三幅対  この辺りでは魚関係の仕事で働く人が多く、描かれたのもそんな様子三態。
水滸伝の張順もここで魚問屋をしていた。
琵琶行の妓女と会うのもここ。

平家物語大原小鹿画賛 チラシの鹿登場。「誰か来たかと思ったら鹿でした」ということ。
明るく軽い筆致なので、あとあとの話の重みを忘れる…

今昔物語玄象琵琶画賛  鬼が琵琶を弾く話。べんべんべん。

芭蕉を尊敬していたようで、芭蕉ネタの絵もいくつか。
そして弟子の其角の句の画賛もある。

十二か月京都風物苦図巻 これがとても楽しい。月次絵。
ほのぼのした表現で、けっこうふざけた人々を楽しく描く。

三十六歌仙偃息図巻  えんそくとは寝転んで休むことで、歌仙皆それぞれうだうだと遊んでいる。首っ引きしたり、碁を打ったり、あやとりしたり。こういうの、いいなあ。

十二ヶ月行事句図巻  丁度夏の所が出ていた。
鬼貫 夏はまた冬がましぢゃといはれけり
其角 夕涼み よくぞ男に生まれけり
要するに褌いっちょのおっさんが夕涼みする図が添えられている。

七夕の梶の葉に和歌を書くところをとらえたのもある。これは洗い髪をひとまとめに後ろで括る女。
芭蕉 七夕や 秋をさたむる はしめの夜


すっかり立ち直った呉春、京都へ。
今度は応挙につきましたが、応挙は写生を大切にした人で、おのずと呉春の絵も変わってくる。

桜花游鯉図  水中から桜を見上げるような鯉たち。すっかり雰囲気が変わり、円山派の絵師の一人のよう。
こうしたリアリズムは応挙の影響。

応挙の所へ行く前に描いた蒲公英図などは輪郭線をラフにカクカクとして、中央に色を置いたものだったが、これもやがて変わってゆく。
栗柿図のリアルさ。
呉春の画風の変遷がよく見て取れる。

晩年の絵を見る。
苔清水西行庵画賛  吉野での追憶。「吉野は面白くないが、西行発心の地だから面白からぬこの地に」と言うようなことが記されている。30年前を追想する呉春。

蕪村の句を添えた梅の絵もある。
ごくシンプルな枝がすぅっと伸びたのを切り花にしたもの。

社交的な都会人の呉春。
池田でリボーン後、京へ出て、また新たな道を進み、ついには四条派。
それが長く長く世に続いたのはまことにめでたい。

西宮大谷、大倉集古館、逸翁美術館。
いずれも本当に良い展覧会だった。
今年はまことに蕪村、呉春の当たり年だった。

逸翁は10/20まで前期、10/26から12/8まで後期。
大倉は11/17まで。
ぜひ。
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