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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

「西洋近代美術に見る神話の世界」をみる その1

美術館「えき」で「西洋近代美術にみる 神話の世界」展が開催中。
こうしたコンセプトの展覧会は大好きで、これまでにもいくつか見ている。
今回の展示もとても良かった。
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序章
古 いにしえ なるものへの憧れ Longing for Ancient Times
いい英訳だな…

ジョヴァンニ=バッティスタ・ピラネージ 『ローマの古代遺跡』1756年刊行 エッチング・紙 町田市立国際版画美術館
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・アントニヌス記念柱 ・アントニヌス神殿の遺構 ・パンテオンの入り口の景観・パンテオン内部の景観・大きな大理石棺  
いずれもピラネージの妄想炸裂でとても魅力的。建築物の確かさはさすがだし、そこに生きた人を配置してもどこかうそ寒く、廃墟感があり、不思議な空虚さが満ちている。
大きな大理石棺 これはローマの夫婦のためのらしく、蓋の上に生前の夫婦の像があり、棺の彫刻も手が込んでいる。蓋には狩猟文の連続、本体にはローマ神話の英雄や神々が刻まれている。
 
『古代の壺、燭台、石碑、石棺、三脚台、 ランプそして古代の装飾』1778年刊行 エッチング・紙 町田市立国際版画美術館
・古代の骨壺・古代の大理石骨壺  きわめて抑制的に描かれているが、それがまたこちらを煽る煽る。
スフィンクスの像がついているのにときめくわけですよ。

さてこちらは本物の古代の遺物。
《赤絵手人物文ピュクシス》 前5-前4世紀(ギリシャ、アッティカ地方) 陶器 高さ14.5 × 胴径31.5 cm 東京富士美術館
舞楽の胡蝶そっくりな羽の生えた人がいるが、胸のふくらみはあっても下半身には別な性が生きている。両性具有の美。

《奉納物を持つ女性像》前20-20年頃(ポンペイ) フレスコ、テンペラ 26.2 × 65.8 cm 岡崎市美術博物館
Woman with an Offering と訳すのか。こうして一つ覚える。
左側に女性が立っていて、手に角盆を持つ。その上には果物らしきものがある。右側へ進もうとしているよう。しかしその右は今のところ虚無で、端にだけ白でレースを思わせるような文様が描かれている。

リュシッポスの作品による 《ヘラクレス・エピトラペジオス(卓上の ヘラクレス)》 1-2世紀(ローマ時代) 大理石 53.0 × 21.3 × 26.8 cm 東京富士美術館
後世の模造品。既にこの時代にこうした模造品が作られ、人気があったのだ。力強い造形。膝のところでパーツが分かれている。


第Ⅰ章 甘美なる夢の古代
ここでも近世の作品が現れる。

ジョン・フラクスマンの端正な線描による版画。
全てローマ神話の図像学に基づくと思われる。

『ホメロスの「イリアス」』1793年(1795年刊行) ラインエングレーヴィング・紙 郡山市立美術館
・パリスをたしなめるヘクトル  末弟が災いの女を連れてきたことについて長子は色々というが、女の色香に溺れるパリスは聞こうとさえしない。その傍らの災いをもたらす女は手にあの林檎をもって素知らぬ顔で座るだけ。
・不和の飛来  「不和」という概念も擬人化される。この場合は神格化されるというべきか。数多くのガレー船がゆく海上のその中空に、松明を手にした「不和」の女神が飛んで来る。

『ホメロスの「オデュッセイア」』 1793年(1805年刊行) ラインエングレーヴィング・紙 郡山市立美術館
・オデュッセウスを救うレウコテア  へたってる彼を救うのは大抵女なので、ここでも船乗りを海難事故から救う救い手としてのレウコテアが来た。
・弓矢を放つアポロンとアルテミス  中空からきょうだい並んでシャッと勢いよく射る。

『神統紀、仕事と日々とヘシオドスの 生きた時代』 1817年刊行 スティップル・ラインエングレーヴィング・紙 郡山市立美術館
・服を着せられるパンドラ  足元にあるのは既に開かれてしまった箱。そこにはネックレスがある。何人もの手で検分されるように衣服を。
・ヘシオドスとムーサたち  和やかな雰囲気。月桂樹の枝を渡される。

フラクスマンは18世紀末に活躍したが、この線描は色彩を載せると1920年代の作品にも見える。
そんなシャープな良さがあった。

フレデリック・レイトン 《月桂冠を編む》1872年 油彩・カンヴァス リヴァプール国立美術館 ウォーカー・アート・ ギャラリー
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正面顔の綺麗な女。レイトンは1989年の「ヴィクトリア朝の絵画」展で知ったが、あの時もこの端正で美麗な絵に強く惹かれた。
かれはラファエル前派とは違いアカデミックの長なのだが、神話をモチーフにする辺りは彼らと近いように思われる。
英国絵画の最も耀いていた時代の画家。

エドワード・コーリー・バーン=ジョーンズ  『フラワー・ブック』 1882-98年(1905年刊行) リトグラフ(一部手彩色)群馬県立館林美術館/郡山市立美術館
丸い画面に描かれた連作もの。タッシェンから美本も出ている。
・ヴィーナスの鏡
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月がヴィーナスの鏡。とても綺麗。足元の鳥達はヴィーナスだから鳩。鳩の群れが水にすれすれのところで飛ぶ。
・天国の薔薇 こちらのヴィーナスは中空の道を鳩の群れと共に行く。
・ヘレンの涙 炎上する城外、トロイのヘレネーなのだ。何を泣くことがあるのだ、彼女が。
どうしても山岸凉子「黒のヘレネー」のイメージが常にあるのでわたしも彼女にあたりが強い。
そしてこのヘレネーの衣裳は裾が青く光るけれど、全体が黒なのだ。

ローレンス・アルマ=タデマ   《お気に入りの詩人》 1888年 油彩・パネル 38.6 × 51.5 cm リヴァプール国立美術館 レディ・リーヴァー・アート・ ギャラリー
この人の絵を見ると嬉しくなる。いつか展覧会があればと常々思っている。
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大理石の床のリアルな触感が絵から浮かぶ。絹の柔らかさもまた。
詩人の言葉をよむ。とても長い長い巻物。甘美なる無為を味わう背後の女と壁画とがまたとてもいい。

エドワード・ジョン・ポインター 《世界の若かりし頃》 1891年 油彩・カンヴァス 76.2 × 120.6 cm 愛知県美術館
額縁もとてもいい。イオニア柱がついたもので、その中の絵はまるで宮殿の奥の様子に見える。
花の彫刻をまといつかせた柱。タイルも素敵。プールには花弁が散る。蛇の噴水から水が。
窓の向こうには夕暮れつつある山が見える。窓にもたれて眠る女。
その手前では二人の女が動物の骨を使ったサイコロ占いをしている。一人がサイコロを持ち、一人が何か笑いながら指差す。

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス 《フローラ》 1914年頃 油彩・カンヴァス 102.5 × 69.4 cm 郡山市立美術館
久しぶりの再会。花を摘む美しい女。その首筋がとてもいい。

チャールズ・リケッツ   オスカー・ワイルド『スフィンクス』 1894年刊行 木口木版・紙(本)町田市立国際版画美術館
セピア色の装幀。惹かれる。


続く。
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