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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

聖域の美 中世社寺境内の風景

大和文華館の秋の特別展は中世の信仰の場を描いた絵図を集めていた。
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わたしは地図を見たり観光マップを見たり、鳥瞰図や参詣曼荼羅を見るのが好きだ。
社寺境内図も好きだが、寺院の場合これはきちんと配置に形式があるそうで、どこに何があるか謎ということはあり得ない。
四天王寺様式、法隆寺様式などがそれだ。どちらも聖徳太子建立の寺院。
だからか、四天王寺へ行くと大工の始祖として聖徳太子は崇められている。
金剛組という世界最古の会社も四天王寺建立のために組織された集団だった。
とはいえ、今回はそれは措いておく。

1. 聖域の静謐と荘厳

女神像 平安時代  檜材の一木造り。平安初期の信仰の形がここにある。女神像はもう木肌が露になり色はとどめていないが、まだ形は活きている。
片膝を立て、その左手には持仏を支えるのだが、その持仏の首も女神の手首から先も失われている。右手もない。
しかしそれで荘厳さが失われたわけではない。欠落は信仰心・畏怖心を失わせない。形が変わろうとも。
この像はどうやら宇佐神宮から流出したものらしい。全ての八幡神の始まりの社。
それにしてもこの像をここで見るのは初めて。

一字蓮台法華経 平安末期  この時代の法華経への熱く・篤い信仰心は殆ど熱狂的な潮流だと思う。だが、見返しの絵がなかなか笑える。
一室で法会の最中、数人の法師がいるが、みんなええ加減である。貴族の男は居眠りしているようで、傍らの女がそれを見ている。
「扇面法華経冊子」の下絵でもそうだが、みんなイキイキ好きなことをする。

笠置曼荼羅 鎌倉時代  この絵を見ると、かつての笠置の繁栄を思うのだ。わたしなどは今の笠置を見知っているから、それが笠置の摩崖仏であり、こんなにはっきりした絵があったというのがうそのようだ。南北朝のあの戦いで失われてしまったものは大きい。
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ここでは回廊などもあり、花壇もある。遠くから来たらしい女人もいる。
現代ではお寺はあるが、信仰の場所というより楽しいハイキングにちょうどいい所となっている。なお、後醍醐天皇行在所の碑がある。詳しくはこちら

柿本宮曼荼羅 鎌倉時代  檪本の和爾下神社(治道社)がそのあたりだという話。
早くに荒廃していたらしい。本地仏が浮かぶ。

日吉曼荼羅 鎌倉末期  十社殿ごとに金色の円相。神仏の影。
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春日曼陀羅 南北朝  上空に浮かぶ本地仏たち。月が丸い。

ここまではしばしば展示される大和文華館の仏画。
2014年の「社寺の風景 宮曼荼羅から祭礼図へ 」展にも出ていた。
当時の感想はこちら

比叡山東塔図 鎌倉時代 京博  剥落と劣化が著しいが、一方で小さく描かれた社殿それぞれには朱が鮮やかに残る。

高野山水屏風 鎌倉から南北朝 京博  これがとてもよかった。
チラシはその一部。
右隻 雪の残る奥の院から始まる。3扇までは緑、4扇には紅葉となり、鹿もいる。鹿、鹿、鹿。5扇にはかなりたくさんの鹿。くつろぐ鹿たち。途中の寺院の中庭には見返りの犬もいる。そして下部には半身だけのぞく猪が登場。6扇にはとにかくやたらと鹿が多い。高野山、鹿が多かったのだなあ。
左隻 白い狛犬が見える。稚児を連れた僧侶も歩く。春の花が咲く。牡丹など。旅人もいる。3扇には猟師二人も。柳の下には鹿。4扇は桜、桜、桜。5扇は池。カモやオシドリがいるから時間が進んだのか。そして6扇には嫌がる馬を引っ張って門内に入ろうとする武者。これが実は13世紀の事件をモチーフにした絵らしい。
何やら不穏だが、何があったのかわたしにはわからない。

園城寺境内古図 狩野派 桃山時代 京博  元は前期に出た鎌倉から南北朝の図。これ。
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それを数百年後に狩野派がカバー+いろいろ。
惣門、浴堂など。桜咲く境内。五大堂、勧学院、稲荷社、月輪門など。大寺院の様子。

出雲神社絵図 鎌倉時代 京都・出雲大神宮  亀岡の丹波一之宮の社。
そういえば現代の日本画家で諸国の一宮ばかりを描く作家がいる。西田眞人という人で、去年神戸ゆかりの美術館で展覧会があった。

2. 物語をはぐくむ場所―縁起と境内

伊勢曼荼羅 南北朝 正暦寺 内宮・外宮それぞれを描く。共通するのが四天王が四方の隅にいる表現。この状況を見ると山下和美「ランド」を思い出す。四神が住民を見張る。こちらは四天王が内宮・外宮を守護する。中には赤い色の顔があり、緑の顔はない。
大和姫(皇女)と出会う山神(猟師の姿)。なお倭姫ではない表記。
外宮にはぐるぐる道がある。

高野山曼荼羅 室町時代 東京藝大  目立つのは白い石塔、五輪塔と卒塔婆。それがぐるぐると続き、気づけば奥の院へという道のりなのである。ところどころに鹿がいたり、僧侶と参詣人などなど。高野聖もいるだろう。ずーっと続く道、生者より死者の方がずっと数が多いのだ。

東大寺縁起 室町時代 奈良博  色がいい。金ぴか―っ参詣人がたくさんいて賑やか。大仏殿どーん。たなびく雲には鋳物師と牛飼い少年とが仏になって乗っている。二月堂の前には良弁杉があるが、そこに金色の鷲がとまり、成人した良弁もいる。
聖人伝説としての鷲による人さらいなのだ。だから金色の鷲。

東大寺曼荼羅 室町時代 奈良博  こちらはこれまた色のはっきりした上に形もきちんとしていて、まるで山口晃画伯描く都市風景図のようだった。←修復済み。
手向山、三月堂、大仏殿、その大仏殿の配置がまたトリッキーで面白い。良弁杉にはやっぱり金鷲と幼子と。参詣人はあっちこっちに…
なお、奈良博は収蔵品データベースを公開しているので、そちらで画像を見ることが可能。

かるかや 室町時代 サントリー美術館  素朴絵。荒々しい筆致の背景と素朴なキャラとの対比。
自然風景、定規で描いたような建物、キャラ…みんな違う。
場面は石童丸が高野山に入り、父と知らず道心と出会うところ。納骨と卒塔婆とで荒涼としている。
わたしは善光寺手前の西光寺でだいこくさんの語られる絵解きを二度ばかり見たが、わかっているのにやはり泣いてしまった。

3.境内の記憶と再興

東山泉涌律寺図 室町前期 泉涌寺  応仁の乱以前の寺院のありようを描く。素朴な絵柄ながら唐風と和風の建物の混在を描く。

慧日寺絵図 室町時代  福島・恵日寺  9世紀初頭、興福寺の徳一の創建で明治初頭に廃寺。会津磐梯山のふもとにあるそう。今のお寺は明治37年に復興され、その時に今の名に変わる。30年後の復興が早いのかどうかはわからないが、そんな由緒のある寺も飛んだ災難を受けたのだ。 
絵では右上に会津磐梯山が見える。桜や柳が描かれている。
どうでもいいが、ツイッターで「会津磐梯山」ならぬ「会津パンダ遺産」と言うのを見て笑ったなあ。

松尾神社絵図 室町時代 松尾大社  稚拙な絵柄ながらリアルらしい。室町時代の境内。
わたしは平成時代の松尾大社しか知らない。

雪舟細川荘絵図 室町時代 16世紀半ば 池田氏歴民  おお、久安寺。多田荘平野湯…ここがあれよ、三矢サイダーの発祥の。もともとこの辺りから宝塚、有馬には鉱泉があるから炭酸せんべいもサイダーもあるのよ。
大道法師足跡というのもあり、なんやと思ったらダイダラボッチでした。この辺りにもそんな巨人伝説があったのだね。
今の高槻市藤の里というところに碑が立っているそうな。
絵の下方に猪名川が長く流れる。

三上古跡図 室町時代 滋賀・御上神社  いわゆる近江富士の三上山、俵の藤太のムカデ退治の話がある。
草深い中に家々がある。薄水色の山々。意外なほど多くの寺社があった。

報恩律寺七堂図 1568 兵庫・報恩寺  1505年に焼失したのでこの境内図を拵えて勧進して回った。

4.にぎわう境内

釈迦堂春景図屏風 狩野松栄 室町 京博  実に楽しそうな人々が行き来する。お店も長屋の井戸も活気がある。
洗濯する人々、舞う少年、鷹狩、猿回し、みんな楽しそう。

洛中洛外図帖 狩野派 室町 奈良県立美術館  宇治、金閣、大徳寺、北野、相国寺、この辺りが出ている。
金雲。賑わう宇治、石の舞台に松が集まる相国寺など、どこもかしこもいかにも。

吉野花見図 狩野派 桃山 細見美術館  太閤の花見だけでなく庶民の愉しむ様子も活写。説経語りもいれば物売りも色々。左へ向かうほどに桜も増す。太閤は唐風な輿に乗って鳥居をくぐる。

京奈名所図扇面冊子 江戸 60冊のうちから12点。前掲の展覧会の時にもたくさん出ていた。久しぶりの再会。
今回は日吉山王、石山、竹生島、白髯神社といった滋賀の名所も。離宮八幡、石清水八幡、宇治、奈良は東大寺、春日大社、三輪大社、龍田川…細密描写なのでとても緻密でいい。

竹生島祭礼図 江戸  たくさんの船が島の廻りに。

高野山図屏風 江戸 堺市博物館  町石道と不動坂の道、たくさんの寺院が見える。白い五輪塔や墓が並び、ところどころに石仏も。

浅草寺境内図屏風 蹄斎北馬 江戸 福井市立郷土歴史博物館  12/17,18の年の市の様子。とにかく賑やか。それも小さく描かれた人々がひしめきあうのなんの。冬で寒いからかほっかむりが多い多い。

野々宮図 富田渓仙 昭和  これは初見。渓仙はこの界隈に住まったのでお散歩コース。小さいお社が3つ並ぶ様子を小ぢんまりと描く。和やか。キャプション曰く「和菓子のように甘く落ち着いた色調」…小豆色や薄い抹茶色が載るね。
ほのぼのとよい絵。

出かけたくなるところが多かった。
11/17まで。


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