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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

やまとの匠 

私鉄王国と呼ばれるだけあって、関西では私鉄とバスなどが『スルっと関西』というコラボ体を運営している。
関東でもそれが普通になってきたようで、東京に遊びに行くと、地下鉄と私鉄が一枚で過せるので、楽で結構だ。
とにかく鉄道の使命として、大勢のお客さんを移動させること、という条項がある以上、A電からB電経由でC電にもつなぎEへ到着させることに意義がある。
そこでわたしは過日、奈良&大和路フリー切符で市営地下鉄と近鉄を楽しく遊んだ。

別項で東大阪での四大浮世絵師展の記事を上げたが、そこから電車に乗り継いで奈良に出た。
バスで国立博物館に行くが、このバスもチケットに含まれるので何度でも乗れる。
博物館のバス停は『氷室神社』である。
春に来たときは、それはもう見事な紅枝垂桜が咲き誇っていた。
菩提樹の樹紐のように桜が流れているのだ。
すごかったなあ。
今は初夏だから、その桜は綺麗な緑色に染まっている。

道路を渡る前に振り向けば池がある。
池には睡蓮が咲いていた。ハスではなく睡蓮。
可愛いなぁ、と見ていたら池の中ほどの小さな山に五位鷺らしき奴がいた。弓のように立っていた。

6/10から始まる『やまとの匠 近代から現代へ』という工芸展の初日に来たのだ。
奈良は明治維新の際、廃仏毀釈の嵐に遭い、大変不遇な時期を過した。興福寺の塔まで売りに出ようかとか、そんなとんでもない話が平気で出ていたのだ。
地所もだいぶ売り払った。その辺の話は考えると腹が立つのでやめておく。
さて、奈良は八世紀までは都であったが、以後ずーーっと『古都』であった。歴史上目立つこともあんまりなかった。
天誅組の十津川は奈良県であっても、都としての『奈良・圏』とは少し違う。

目立たない県になり、色々な苦難もあった。
しかし工芸職人の腕は死んではいない。
奈良の一刀彫や赤膚焼の職人の残した工芸品が一堂に会している。木彫彩色の、見事な人形たち。
これらは仏像修復の技能を持つ地にあるからこその誕生だと思う。

奈良だけに鹿が多い。
屏風があった。百鹿図。鳥居派と逆に、下から上へではなくピラミッド型。鹿は上にゆくほど小さく、数も少なくなっている。
以前、龍谷大学で染付の壷で百鹿図を見た。ケルトの文様でも見た。
世界各国、鹿が好きなのだと思ったなあ。
ここにはないが、奈良に長く住んだ志賀直哉の編集した『座右寶』の中にも鹿の壷があった。ロクでなしなシカの表情が忘れられない。

木彫りのシカはリアルにも、裏から見ても『シカ』だった。
つまり座った足の曲げ方。
四角いちゃぶ台みたいな感じ。笑えるなぁ。
香合もある。木のは匂いが変わりそうだから、これは形のみで実際には未使用ではないか。
takumi-07.jpg



能は奈良に始まった。
それだけに能を題材にした人形も多い。
戦前の名人・桜間金太郎をモデルにした翁像がある。
例によって『芸十夜』をひもとき、そこから桜間金太郎の写真を見たり、須田国太郎のスケッチなどを眺めようと考える。
昔の名人の姿を写した木彫の口許は、なんとなく笑って見えた。

しかし『後高砂』をわたしは知らない。
怖い面をつけている。仕種も大きい。後ジテか。
学ぶことは無限にある。

『おたふく』はめでたいらしいが、どうも怖い。古様になればなるほど怖い。明治の工芸であってもおたふくには前近代の闇を感じるのだ。足首の辺りでセパレートになり、そこに置かれた爪先を見ると、やっぱりこわいな。

華麗な彩色を施された『砧』を見て、絵画の三次元化を思った。
絵画と彫刻とは芸術という括りの中では仲間だが、本質的には全く異なると思う。三次元のものをある側面のみ写す事は絵画には出来ても、多面を同時に写すとどうしても違うものになってしまう。
ピカソの作品は絵画の可能性を開いてくれたが、視覚での理解度は万人に共通するとは言えない。
まだ絵画の立体化の方が可能かと思うこともあるが、それも完全ではない。

しかし、この『砧』は美しい。職人の手の精妙さに感嘆する。
takumi-06.jpg



また『春日瑠璃燈篭写』の青いビーズの美しさにはため息が出る。
正倉院の模造品製作に携わる職人たちがいたからこそ、こんなにもきれいな作品に会えたのだ。

これらはみな、こちらに画像があるので、それを見た方がいい。
奈良博、消さないでね。
http://www.narahaku.go.jp/exhib/2006toku/takumi/takumi-1.htm

他にも福良雀、富士山などがあり、見ていて飽きない。

木彫工芸だけではなく、赤膚焼も並ぶ。
素朴で可愛い絵付け。

いま始まったばかりだ。
一ヶ月ばかりの展覧会だが、奈良に行ける人にはぜひぜひお勧めしたいと思う。綺麗で楽しい展覧会だった。
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コメント
鹿
 これって角は本物ですか? 角のリアルさと体の面彫りが、
不思議なバランス、でも確かに「鹿」ですね。
なんとなく角が枝で体が桜のように感じました。
2006/06/13(火) 15:58 | URL | 山桜 #-[ 編集]
奈良公園全体に鹿がいてまして、若いオスを見ると、まるで飴色なんです、ツノ。
おもちゃみたいでした。
ツノと胴体は一本の木からのもので木目込みではなかったです。凄い技術でした。
2006/06/13(火) 22:59 | URL | 遊行 #-[ 編集]
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