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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

2022年、清方の生誕日に。

今年は清方の展覧会の大きいのが開催された。
特に清方展が京都で大々的に開かれるのは45年ぶりらしい。
キャッチコピーにそう書いてある。
90年代は百貨店のミュージアムもよい展覧会が多く、特に大丸や高島屋は近代日本画の良い展覧会を多く開いてくれた。
わたしが最初に見た清方展も百貨店系のものだ。



とにかく好きな作品を少しばかり集めた。

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「刺青の女」 どうにも魅了されてしまう。

今回の展覧会で左右共に並んだのがこちら。
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「ためさるる日」

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艶めかしい…

こちらもまた艶めかしい。
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「襟おしろい」 奥さんのふとしたポーズを見て描いた作品だという。
指輪がいい味を出している。

少し離れて可愛いのがある。
「築地川」での幼い自分の姿である。
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可愛いなあ。


こちらは鏡花の怪異譚「註文帳」を絵で表した作品群の一。
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逃れられぬ破滅を描いた作品だが、まがまがしさはそこまで強くない。
だが、女の強い意志が(憑りつかれたのではあるが)先へ進もうとしているのは感じる。


戦後も絵物語のよいのを制作した。
これは谷崎潤一郎「少年」より。
ふたりの少年にいじめられた少女によるサディスティックな仕返しがこの後にある。
和装少女は縛られているが、洋装となるや不思議な強さを見せる。
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こちらは芝居絵
イメージ (1600)

そして近年わたしの心を捉えたのはこの「日高川」下絵。
記念美術館さんがツイッターで挙げで下さっているのでご紹介する。



他にも好きなものがまだまだ溢れている。

以下、6月に挙げようとしていたときに書いていたものをこちらへ。
蛇足なので興味のない方はスルーして下さい。

今回の展覧会の花は「築地明石町」である。
それを中心に三部作が同時に展示される。
近年になりやっと所在が明らかになり、嬉しくも東京国立近代美術館の所蔵となった。
その時の記念展示にはいそいそとでかけている。
この絵は清方の紹介には絶対に出る絵なので、やはり代表作なのだが、わたしはそこまでこの絵に思い入れはない。
ただ、随分昔からこの絵は途轍もなく立派な美人画の代表だという認識はあった。
ところがその現物を見る機会がなかった。
画集には必ず出ているというのに。
何故か。消息不明になっていたからだ。
それに再び世に戻ったのは2019年、その時東近美で大きく紹介されていた。
むろん見に行った。
そしてやっぱり上品でいい絵だと思ったが、本当の自分の嗜好とはちょっとズレがあるなとも思ったが、これはあくまでもわたし個人の考えなので、別に世間とは関係がない。

シュールなギャグが飛び交う杉浦茂の晩年の作には唐突にアメコミの切り抜きや洋画のワンシーン、そして名画が脈絡もなく登場した。それが特に理由もなく現れるので、却って印象深くなる。
その中に「築地明石町」も出ていた。
それを見て明治末期生まれで太平洋洋画研究所で学んだ人だけあるなあと妙な感心をした。


首都圏にいると清方の絵は遠いものではなくなる。
20年ほど前に鎌倉の邸宅跡が清方記念美術館になって、四季折々の花に飾られた愛らしい空間となった。
なかなか鎌倉には行けないが、行くたびによいものを見て満足している。
また信州の水野美術館や北野美術館のチラシを見ると清方のいい作品が出ていることが多く、それを集めるのも楽しい。
もう美術館としての機能は失われてしまったが目黒雅叙園にも清方の名画がたんとあった。
それらは石見美術館に入ったものもあるが、全部かどうか。
ただ、建物空間として雅叙園は清方の間を持つくらいに清方の絵を保存活用している。
そういういみでやはり令和となった今も清方の絵は決して遠いものではないのだ。
とはいえ「明治は遠くなりにけり」どころの騒ぎではなく「昭和は遠くなりにけり」、あるいは20世紀末までの平成も遠いものになってしまったが。

ノスタルジックなことばかり書くのも、要は清方藝術といふものは戦後以降は明らかに明治回帰しているからで、リアルな昭和も働き盛りだった大正もほっといて、絵描きになる以前に暮らしていた明治の世相を形にすることを楽しんでいたことに由来する。
挿絵画家として出発した清方は名を成した後は元に帰るように卓上藝術を標榜し、手で開いて楽しむ作品を拵えるのに力を注いだ。
わたしなどはそうしたところに非常に惹かれるので、やっぱり日本画家では清方がいちばん好きだと思うのだ。

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