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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

幕末の歌川派浮世絵

色々予定を変えざるを得なくなっていた。
弥生美術館と永青文庫は来月回し、早大の今村昌平追悼は涙を飲んでサヨウナラ。
それで7/16はていぱーく→山種→渋谷文学館→写真美→目黒区美→大倉
と考えていたが、これも早くも変更を余儀なくされた。
ていぱーくで四番町歴民資料館の浮世絵展ポスターを見たからだ。
しかも私の最愛の幕末歌川派。
行かざぁしょーがあるめぇ。

というわけで半蔵門に降り立ったが、急だったので方向感覚がないわたしは早速道を間違える。
たどり着くまでに公園の中を抜けて、ブランコこいだり滑り台滑ったり、ファイトーいっぱーつ、なことをしたのは内密である。

図書館と郷土資料館の合体した公共施設。
元々この界隈は江戸時代から開けていた土地なので、遺物も色々多い。
番町皿屋敷もこの辺と言うことだし。有島兄弟や鏡花も住んでいたし。

三谷家という旧家が所持していた幕末の歌川派の浮世絵や本が色々展示されている。
図版もたくさん掲載されたパンフレットももらえた。うれしいなぁ。無料の展示なのに。
今月末までなので、行ける方にはおススメです。
img141.jpg



主に国貞と国芳と弟子たち、広重など。
役者絵と物語絵と名所絵。
わたしは大体武者絵や物語絵などが好きなのだ。
ここにあるのは国芳の芳流閣の場だ。
国芳はこのシーンを何種も描いている。
弟子の芳年も描いている。
img142.jpg


江戸の人々は馬琴の八犬伝と派手な武者絵を好んだのだ。
わたしも子供の頃から八犬伝が大好きで、先月には文京ふるさと歴史館の『八犬伝で発見』が見たいばかりに予定外のツアーを組んだりした。
http://yugyofromhere.blog8.fc2.com/blog-entry-505.html

さて他に「おおっ」なのが芳員の『相馬の内裏』だ。
ガマの仙術を使う大宅太郎が将門の遺児・滝夜叉姫に業を見せる。ガマが寄り集まって巨大なガマになり、口から煙ならぬ蜃気楼を吐く。蜃気楼というより蛙気楼と言うべきか。
うーん、わたしはこういう作品大好きなのだよ。
ここにはないが、清盛が雪の庭を見ると髑髏が集まって怪異を見せるという作品がある。
好きなのはこんなのが多い。

他にも役者絵が色々あるが、幕府の禁令をかいくぐり、見立て絵にして役者絵を描くのが嬉しい。
幕末の人気者と言えば、八世団十郎だ。
今回聞いたことのない芝居の絵があった。
『源氏模様娘雛形』 内容も何もわからない。不動の羂索で命拾いする徳兵衛、と書いてある。なにか不動のご利益譚らしい。不動を演ずるのは当然成田屋である。この年五月に団十郎は倒れ、全快記念の芝居だったのか。
・・・杉本苑子の『傾く滝』が読みたくなってきた。
他に児雷也もあった。きれいな青年だとつくづく思う。

それから三世田之助。
彼らを主題にした小説は随分多い。
それぞれ悲劇的な最期を遂げているからか。中でも田之助の話は多い。
ちょっと思い出すだけでも舟橋聖一、杉本苑子、南篠範夫、皆川博子・・・
ここにある浮世絵を見ると、独特な妖艶さと嗜虐的な美とがにじんでいた。
明治の頃から既に彼の伝説は生まれていたのだ。

粂三郎と四世歌右衛門の牛若丸と熊坂がある。
身軽さが身上の牛若丸、それが巧い構図で描かれていた。
四世歌右衛門の豪快な熊坂もいい。場所は青墓だったはずだ。

その歌右衛門は養嗣子の五世歌右衛門の回顧によると、色々逸話の多い人だったようだ。
鷹揚さがにじむ話が残るためか、豪胆な役柄にニンが合うようだった。

『碇知盛』 渡海屋銀平から元の新中納言知盛に戻り、既に大碇を担いでいる。
顔色あくまで青褪め、血がにじんでいる。きりりと引き結んだ唇・・・!
こういう役者絵に会うと、ゾクゾクするのだ。

国芳がいくつかある。
『毛谷村の六助』 河童にまといつかれて千切っては投げ・・・とまでは行かぬが、気概にあふれた姿である。
怪童丸が蹴合わせを行司するのもある。孫悟空vs八戒とか。
子どものころわたしは国芳より国貞が好きだったが、今では国芳の方がかなり好きだ。
しかし芝居絵・役者絵はやはり国貞がよいと思う。

その国貞が色々あった。
三人吉三の和尚とお嬢の二枚ものがあり、そこに句がついていた。
「結んだら 弟になるか 梅柳」
粂三郎と小団次の二人である。節分の夜に出会った三人の吉三。
和尚を一の兄分に、お坊、お嬢が義兄弟のえにしを結ぶ。
幕末らしい頽廃と倒錯に満ちた面白いお芝居である。
ところでこの句、これは深読みと言うか裏読みすれば、なかなか色っぽい句なのである。
芭蕉の句にもある。「梅柳 さぞ若衆かな 女かな」
好きだなあ、わたしも。
本当を言えば(芝居の筋からゆけば)和尚xお嬢ではなく、お坊xお嬢なのだが。

意外なところで広重の『忠孝仇討図会』。
柳亭種員の本からの合邦ケ辻のの仇討ち。
修行者合邦と早枝(左枝)大学之助の闘い。合邦は閻魔像に足をかけて敵を迎撃している。
閻魔像は石造りでギロリと目を見開いている。
合邦の着物には南無阿弥陀佛の六文字が模様として書かれている。
中世では天王寺の合邦ケ辻と美濃の青墓とが重要な土地として現れることが多い。
この合邦は弱法師系のそれではなく、南北の『絵本合邦衢』の方である。
何年か前、国立劇場で片岡孝夫(当時)が立場の太平次を演じたのだが、見損ねたことがいまだに口惜しい。

ああ、それにしても見応えのあるものばかりだ。
六大浮世絵師も良いのだが、実のところ私は、幕末の歌川派が一番好きなのだ。
歌舞伎と草双紙趣味と浮世絵とがアラベスクをなしている、と実感する。
今度また機会があれば、こうした展覧会を見たいと思った。

http://rekimin.city.chiyoda.tokyo.jp/news_folder/Ukiyoeten
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コメント
四番町歴民資料館?
まったく知りませんでした。半蔵門にあるのですか。
情報ありがとうございます。
こちらもさっそくチェックです。
2006/07/19(水) 15:01 | URL | 一村雨 #-[ 編集]
市ヶ谷・麹町・半蔵門の3駅から行けます。九段小学校の近所です。
これは歌川派がお好きな方には大おススメでした。
こういう情報はやっぱり口コミみたいですね。
2006/07/19(水) 22:43 | URL | 遊行 #-[ 編集]
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