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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

随身庭騎絵巻と・・・

大倉集古館では「随身庭騎絵巻」と男の美術という展覧会を開催している。
http://www.hotelokura.co.jp/tokyo/shukokan/otoko.html

案内文にはこうある。
“随身(ずいじん)”とは、貴族が外出する際に警護にあたった近衛府の官人を指します。それには高い教養と優雅な美貌が求められたと云います
なるほど、平安から鎌倉あたりのオトコマエの集合だ。
以前全巻を見ているから、今回部分展示のおにいさんたちにコンニチハだ。

五味文彦の『院政期社会の研究』に面白いことが書かれていた。
似せ絵で最も有名な源頼朝図などのことである。後白河法皇とのセクシュアルな関係について論じている。
ここら辺りのハナシは大好きなのだが、詳細は省く。
要するに随身はそんなに身分も高くないがオトコマエであることが大事で、彼らはデモーニッシュな主人との間にアブナい関係を結んでいたりするのだ。
保元の乱を起こした藤原頼長に到ってはそのことを含め殺人教唆したハナシなどを延々と赤裸々に日記に書き綴っているようだ。
わたしはこの本を読んで以来、五味文彦ファンになりましたねー。
それを踏まえてこの絵巻を見ると・・・・・・

とりあえず主な展示品のラインアップ。

「随身庭騎絵巻」  鎌倉時代
「空也上人絵伝」 室町時代
「融通念仏縁起絵巻」 室町時代
「聖徳太子勝鬘経講讃図」 鎌倉時代
「蜆子和尚・竜虎図」曾我二直庵筆 桃山時代
「平家物語絵扇面散らし」 桃山時代
「名将肖像図帖」 江戸時代
「虫太平記絵巻」 江戸時代
「洞窟の頼朝」前田青邨筆 昭和4年
「維摩黙然」下村観山筆 大正13年
「五節句図」酒井抱一筆 江戸・文政10年
「六歌仙図」小川破笠筆 江戸時代
「藤原敏行加茂歌意・紀貫之逢坂山歌意図」冷泉為恭筆 江戸時代
「梅花の詩」西郷南洲筆 明治時代
能面 中将 江戸時代
能装束 花色地破れ檜垣に笹龍胆模様狩衣 江戸時代

このうち青邨の頼朝は展示されていなくて残念でした。
面白かったのは「虫太平記絵巻」 武士たちの頭に虫がついている。(顔が虫でなくてよかった)
言えば髷の代わりに虫なのよ。
江戸時代の絵巻だが、この頃はナメクジも蛇もカエルも虫の仲間に看做されていたのか、単にビジュアル的に面白いからか、仲間入りしていた。
太平記だから楠正成がいる。彼のヅラならぬマゲはカマキリである。おお、よく働く。
わたしは平家物語ばかり偏愛しているが、太平記もまた名文あり、心揺さぶられる情景もあり、の大作なのである。
太平記もちゃんと勉強しないといけない。ところどころしか覚えていないようでは、このパロディは楽しめないゾ。
で、ちゃんと原点に沿うた展開が続いている。戦場で死ぬキャラは死ぬけれど、その途端アタマから虫が逃げてゆく。寄生してたのか。モノノアハレがそこはかとなく・・・。

抱一の「五節句図」 これは別バージョンを京都で何度か見ている。
わたしも大概節句の催しを守る方だが、平安時代の公卿たちは大変だったろう。ああ・・・雅とはしんどい、とルビを振ることもあるのだわ。

「維摩黙然」 何度目かの再会。維摩黙然、というのには意味がある。
維摩は修行者であった。維摩経の主人公維摩詰。(唐の詩人王維は彼のファンでその名を名乗ってたな)
細かい話はこちらに詳しい。
http://www.daihorin-kaku.com/buddhism/howa/howa-D1-2004.htm
物語として読むと、大変面白いのです。
で、この話を踏まえて絵を眺めると、色々納得がゆく。
周りにいて維摩を世話するのは天女かなとか病人なのね、とか。
我が愛する『八犬伝』で、犬村大角は維摩の行に入って口に松葉を咥えているシーンからご登場なのだ。
許婚者雛衣から泣き口説かれても沈黙の行を続ける。犬飼現八が登場して初めて口を聞く。
すーぐ、このエピソードを思い出すなぁ。

「一の谷合戦絵巻」 鹿も四足、馬も四足のシーンがある。馬、丸く目を見開いている。
大学の頃平家物語を熱心に研究して(なにしろ主要舞台は喜界が島・厳島・壇ノ浦などを除いて地元である)検証して歩いたのでした。
兵庫県の谷も歩いた。仲間に鵯越の住人がいたので微妙な土地勘があったっけ。
須磨寺にはこの情景のジオラマがある。石で作ったお人形などで構成されていて、見ているとなんとなく物寂しい。

能面で「中将」が二枚出ていた。わたしはこの面を見ると黒川能を思い出す。
近年、よい能面を見る機会に恵まれている。
厳島の童子、住友の萬媚など。

英一蝶の雑画帳で狂言があった。多分、『花子』だと思う。
他にも若冲の淀川クルージング『乗輿舟』 これはモノクロの拓版画。淀川は江戸における隅田川、パリのセーヌ川、ロンドンのテームズ川のようなものなのだ。

書がいくつかある。そのうちの一枚、勝海舟の書に目を留めた。
これは赤坂に移ってからの書だ。爵位を受けてからの。
実は私は勝海舟を五歳くらいの頃から知っていた。理由→父が海舟のファンだから。
なにしろ『世界偉人伝』の類の本で最初に与えられたのが勝海舟だったのだ。
父は下母澤寛のファンで、ぞろっと揃えていた。
わたしは幼年童話や世界の昔話を母方から読み聞かされ・絵本を与えられ、父からは幕末の漢の話を伝えられたのだった。
それだからわたしの最初のNHK大河ドラマの記憶は『勝海舟』なのである。それも渡哲也から松方弘樹に代わった瞬間をよく覚えている。
母と叔父は新撰組、父は海舟ひいきなのだ。メチャクチャ。
だから幕末は幼稚園前から親しい時代のような気がする。
その海舟の書はなかなかよかった。
わたしは実のところ海舟よりオヤジの小吉の方がずぅっと好きだ。
『父子鷹』『おとこ鷹』だろうなぁ。
わたしは竜馬も新撰組も海舟父子も好きなのよ。

この展覧会で7月の東京ツアーも終わるのだった。

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コメント
雛人形の「左大臣・右大臣」はよくよく見ると随身の姿をしていますね。
でも実際の随身は若いイケメンというのが条件のようなので、やっぱり「左大臣・右大臣」なのかなぁ?とも思います。
ヨーロッパなどでも近衛兵や儀仗兵というのは「容姿端麗」というのが条件のようですし、このあたりの感覚は東西を問わないのでしょうね。
2006/07/21(金) 22:37 | URL | 千露 #rId1tC1Q[ 編集]
こんばんは
>ヨーロッパなどでも近衛兵や儀仗兵というのは「容姿端麗」というのが条件のよう
ベルばらでもそういうのがありましたね。ジェローデルさん。

狩衣姿がオトコマエだった時代だからなのでしょうか。
今でも台湾の兵隊さんの交代式など見ておりますと、立派な体格の青年に限られるというのが、とてもよくわかります。
2006/07/21(金) 22:59 | URL | 遊行 #-[ 編集]
七恵 さん
こんばんは。
遊行さんの興味を惹く「随身」とは多少ニュアンスが違うようですが、ゴヤの二人の「マハ」の所有者でもあったマヌエル・ゴドイを思い出します。
やはり近衛兵で、王妃に見初められ、25歳で権力の座に着いた人物ですが、肖像画を観るかぎりオトコマエでもないように見えます。
>詳細は省く
省かれるとよけい興味をそそられたりして(笑)
2006/07/22(土) 19:15 | URL | sekisindho #-[ 編集]
sekisindho さん こんばんは
マヌエル・ゴドレイと同じような道を歩いたロシアのポチョムキン公、わたしにはロシア史随一の憧れくんです♪
次がピョートル大帝それからユスーポフ侯。

省いた詳細はアタマの中で妄想逞しく熟成なさってください♪
2006/07/22(土) 21:51 | URL | 遊行 #-[ 編集]
>わたしは幼年童話や世界の昔話を母方から読み聞かされ・絵本を与えられ、父からは幕末の漢の話を伝えられたのだった.

なるほど、そういう地盤の上にすくすくお育ちになったのが遊行七恵お嬢様だったのですね。私は今頃、山岸涼子の『日出処の天子』など読んでいます。ちなみに私は竜馬派です。
2006/07/23(日) 11:52 | URL | red_pepper #-[ 編集]
red_pepper さん こんにちは
竜馬派であり新撰組派でもある困りもんの遊行です。
東大阪の司馬さん記念館の天井に、なんと竜馬の影が自然と浮かび上がっているの、ご存知ですか。安藤先生のコンクリ打ちっぱなしの建物は、シミを通すのですが、偶然ながら竜馬の影になっているのですよ~~
見てビックリです。
『日出処の天子』は何度でも・いつでも読み返してます。
続編と言うかオマケの『馬屋古女王』はコワイですよ・・・
2006/07/23(日) 12:18 | URL | 遊行 #-[ 編集]
遊行さん、こんばんは。
コメントとTBをありがとうございました。

乗輿舟は一部の公開のようでしたが、
全部でどれだけの長さなのか気になります。
またどの場所が描かれているのでしょうか。
そう言った解説も少しあればとも思いました。

それにしても大倉集古館は侮れませんよね。
ここは、これまた建物の苦手な美術館なのですが、
いつもいつも名品そろいで驚きます。
2006/07/25(火) 23:26 | URL | はろるど #GMs.CvUw[ 編集]
こんばんは はろるどさん
うふふ、実は私、この建物を偏愛してましてね、数年前撮影許可をもらってぱちぱち撮影いたしましたよ。
伊東忠太の建物は賛否分かれるところです。
建築仲間と話していても、わたしが忠太忠太というのを「なるほど、遊行さんなら納得だ」とよく言われます。
大倉喜七郎は大谷光瑞と共に忠太のパトロンになりましたが、息子の喜八郎は逃げ腰だったようです。
ま、趣味の問題ですねー。
2006/07/25(火) 23:44 | URL | 遊行 #-[ 編集]
ちょっと前に「妖怪を見た男」というテーマの
伊東忠太のドキュメンタリーを見てから、
俄然、この建築家に興味を持ちました。
このおどろおどろしさ、大好きです。
2006/07/26(水) 23:01 | URL | 一村雨 #-[ 編集]
二年前にもワタリウムで忠太展がありましてね、わたしは近代建築家では伊東忠太と渡辺節が一番好きなのです。
築地本願寺、一橋大学、大倉集古館、両国の慰霊堂などが都内ではメジャーなところですね。
関西には伝道院、祇園閣などタダナラヌ建物があります。
平安神宮の巨大鳥居も考えれば奇妙なものです。
本では伊東忠太動物園が一番面白いです。
2006/07/27(木) 00:37 | URL | 遊行 #-[ 編集]
こんにちは、勝海舟の書がうまいのにはびっくりしました。
2006/07/29(土) 17:07 | URL | ak96 #OaxYV5XU[ 編集]
ak96さん
気概に満ちた中にもゆとりのある書でしたね。
ああいう字にときめきます。
オヤジの小吉は無筆でしたが、本人はチビの頃から色々習い事もしてましたしね。将軍の若君の遊び相手でしたし。
2006/07/29(土) 22:34 | URL | 遊行 #-[ 編集]
こんばんは。
TBありがとうございました。

記事には書きませんでしたが「虫太平記絵巻」は
私も長い時間かけて笑いながら観てしまいました。
ムシキングにはまっている子供たちが見たら
どんな感想もらすでしょうか楽しみです。
2006/08/03(木) 22:29 | URL | Tak #JalddpaA[ 編集]
Takさん こんにちは
見てるとき親子連れがいましてね、お父さんがムシキングだよーと誘うのですが、ボクのほうは無視キングでした。
でもこの子供は随身や能面に反応してました。シブいちみっこです。
2006/08/04(金) 13:14 | URL | 遊行 #-[ 編集]
遊行さん、こんにちは
今日はTBがちゃんとできました。

この絵巻って今で言うジャ○ーズの子たちが載っているグラビア雑誌?
(すみません、すみません、私の趣味なんで)
鎌倉時代の美男はこういうものかと、面白く見られました。

そういえば、近松の浄瑠璃本がありましたが、あれも「をとこ」の部類に入るのかと、ちょっと不思議に思いましたが、「女殺油地獄」は所謂悪役ヒーローものですから、それもありかな?とも感じた次第です。
2006/08/05(土) 17:20 | URL | アイレ #-[ 編集]
アイレさん こんばんは
今回『好漢』は、をとこ・おとこ・お床なのかしら、と思った私です。
随身はそりゃアイレさんの慧眼ずばりですよ♪
油地獄といえば仁左衛門なのですが、昔TVで松田優作と太地喜和子が演じているのを見て、鮮烈な衝撃を受けた記憶がありました。
2006/08/05(土) 22:10 | URL | 遊行 #-[ 編集]
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