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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

名都美術館名品展

北浜―花園―学園前のツアーである。
松伯美術館に向かう。都合で今回、大和文華館には行かない。
二つの美術館は提携しあっていて、どちらかの半券が相手の入館料を半額にする。
理想的なのは、先に大和へ行き、それから松伯だ。
バスは奈良バスなので、スルッと関西圏外でCICA(シカ、ですわ)カードシステム。
上村松園・松篁・淳之 三代の画業がここで見れる。
今回は名古屋の名都美術館と名品の交換展覧会。
長久手に行かずしてその所蔵品に会えるのだ。嬉しいことです。
'97年に滋賀県立近代美術館に来ている。そのときのチラシは清方だった。
今回は松園と、みみずくを描いた大観。
名都には行っている。わたしが行ったのは’95。
だから三回目のデート(の、ようなもの)
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http://www.kintetsu.jp/shohaku/exhibition/2006_06tokubetsu/2006_06tokubetsu.html

横山大観 「海暾」 昭和27年
   「夜」 昭和30?33年
「風蕭蕭兮易水寒」昭和30年
鏑木清方 「雪」 年代不詳
           「春の淡雪」  昭和13年頃
           「蛍」      昭和15年 
小林古径 「初冬」 昭和10年頃
前田青邨 「紅白梅」 昭和47年頃
           「蔓梅擬」   昭和48年頃
村上華岳 「観音立像図」 昭和3年頃
東山魁夷 「ハルダンゲル高原」 昭和38年
小倉遊亀 「初夏の花」 昭和37年
上村松園 「わか葉」 昭和15年
           「紅葉可里図」 大正3年 
橋本関雪 「玄猿図」 昭和15年
安田靫彦 「紅梅」 昭和23年
           「わびすけ」  昭和16年頃 
榊原紫峰 「雪中椿」 年代不詳
小野竹喬 「早春」 年代不詳
山口華楊 「原生」 昭和56年
           「制空」    昭和19年
           「叢原」    昭和46年 
加山又造 「牡丹」 昭和54年
奥村土牛       「仔犬」    昭和40年
福田平八郎      「インコ」   昭和39年
徳岡神泉       「鯉」     年代不詳


主なラインアップはこんなところだ。

みみずくの「夜」は可愛い。お仲間はフクロウ類のほかには猫と泥棒くらいだ、と子供の頃はそう思っていた。今は違うだろう。
「風蕭蕭兮易水寒」昭和30年
大観は明治の書生っぽさが生涯抜けなかった、と戸板康二はその評伝「ぜいたく列伝」に書いているが、そうでなければこれや汨羅に沈む屈原などの作品は生まれないだろう。
この詩は始皇帝を暗殺することを請けた荊軻の姿を詠んだものだが、彼が詠んだのか彼に全てを託した燕の太子・丹が詠んだのか、いまだに私にははっきりしないのだ。
ナゼこんな混乱があるかと言えば、池上遼一の「男組」のラストで流 全次郎が去るその背にこの詩がかかっていたことと関係している。また、陳 舜臣の「小説 十八史略」のシーンとがごちゃ混ぜになっているからだ。しかし正す必要性は感じない。
イメージはわたしの心のうちにあるものだからだ。
学校では易水送別の二次創作歌を学んだ。冷泉さんだったか。
この詩を書き下し文にする。
風 蕭蕭として 易水寒し , 壯士 一たび去って 復た還らず
絵は確かにそのイメージを表していた。

清方の「春の淡雪」の妖艶さにはゾクゾクした。少しばかり開いた口の内にのぞく鉄漿。
その眼差し。掌で解ける淡雪も、この女の色香には迷うだろう。
なんていい女だろう。
ときどき清方にはこんな妖艶な女が潜んでいる。
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その一方で、清艶な女もいる。
蛍をそっと袂の内に籠める。ホタルブクロにもなる袂。
連れて帰る気はないけれど・・・。
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松園の「紅葉可里図」 この娘はもしかすると深雪かもしれない。
機嫌よく紅葉狩りをして楽しんでいたのは秋、その翌年の夏には川遊びの中、阿曽次郎と出会い、家を出奔して朝顔と名乗る盲目の芸人になるのかもしれない。

紫峰の「雪中椿」 ‘92の正月に回顧展を見ている。
紫峰と坂本繁二郎とがイメージとして重なることが多い。
二人とも謙虚な人柄で、作品も慎ましく、そして静謐だからだろう。
この作品も雪に埋もれる椿の美しさに目がゆくが、画家は椿を主題にしながらも、左の端に小さな生き物を隠している。雀。雀持ち椿も一緒に雪に埋もれている。
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華楊の「制空」 鷲が大きな翼を広げながら飛んでいる。ただしカメラ目線。
これは昭和19年の作。昭和19年、日本は何をしてたか。戦争。
だからこうした作品なのかもしれない。
「叢原」が狐、「原生」が猿なのもそうしたところから来ているのか。
動物好きな華楊は、しかし時局にあわせたとは言え、鷲にも愛情を注いでいる。

「牡丹」はいかにも又造さんらしい作品だと思う。
金箔、巨大な花、白と黒。
字面を眺めるだけで作品が目に浮かぶようだ。

土牛の「仔犬」 可愛い。ちょっと三角な顎のわんこ。眉が寄っている。耳も三角に垂れている。
今年は戌年だからか、犬の絵にたくさん当たる。

平八郎のよさがわかるようになったのは、やっぱり’92からだ。
それまではどれを見てもわからない・理解できない・なんなんだ? の画家だった。
その年の秋、回顧展を見て初めて、よさに気づいた。
このインコはカレンダーで実物大のを持っている。
わたしは鳥はニガテだが、観念的には好きなのかもしれない。
そういえば、平八郎のお墓は谷崎と向かい合わせだった。
どちらのお墓にも個性がよく出ていた。

神泉はわたしには間の悪い相手だった。
抽象画のように見えて、それだけで忌避したのがまずかった。
こちらから歩み寄ったときには、回顧展は終了し、所蔵美術館は次々と仕舞い込み、とうとう十年以上の空白が出来た。
人生は短し芸術は長しというが、こういうのはなんというのだろう。
しかしこの松伯で回顧展が秋にあるので、今度こそは。
とりあえずその前哨戦として、「鯉」はよかった。この美術館の中庭の池に放ってやろう。
神泉の鯉は深淵に潜む鯉だが、なに、この酸欠寸前の池でだって泳げるさ。
・・・期待しよう。

華岳の観音とチラシの隣の柿が、会場でも同じ位置で並んでいた。
観音の円い胸。隣の丸い柿。
ピンク色の観音の肌、柿のつややかさ。
わたしはどちらにくちをつけたいのか。
img150.jpg


とりあえず、見たい人は見に行こう。
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コメント
七恵さん、こんばんは。
日本画の画家、名前は知っているもののその作品には多分何処かで一度は目にしているかも知れませんが、ほとんど理解していないものばかりのように思えます。
洋画に比べて、気持ち的に日常過ぎたのかやはり関心度が低かったのかと反省します。
動物を描いた日本画で唯一印象に残っているのは、長谷川等伯の「枯木猿猴図」でしょうか。あの丸い顔のエテコウが忘れられません。
2006/07/25(火) 00:14 | URL | sekisindho #-[ 編集]
丸顔のエテコは可愛いですね♪近代日本画家なら橋本関雪がたくさんエテコを描いてます。丸顔の猿は基本的に中国絵画系、ニホンザルは森狙仙が数多く描いていますよ。
2006/07/25(火) 09:51 | URL | 遊行 #-[ 編集]
こんばんは。わたしもこの名都に行ってきたので、TBさせていただきました。へぇ~へぇ~を連発しながら読ませていただいてました。風蕭蕭兮易水寒にはそういう意味があるんですね。制空には時節もあったんですね~
また違う見方ができそうで、ありがとうございます。遊行七恵さんの記事は、勉強にもなりますが、ホントに絵を楽しんでらっしゃるようで、読ませていただいてるとこちらも楽しくなります。
2006/07/25(火) 20:51 | URL | こいちゃ #EVuTtBQQ[ 編集]
こいちゃさん TBありがとうございます。
わたしが書けなかったことをこいちゃさんが書いておられるので、読みながら「ソヤソヤ」と一人でうなずいてました。
やっぱり日本画の美に一番ときめくようです。
2006/07/26(水) 00:15 | URL | 遊行 #-[ 編集]
七恵さん、こんばんは。清方の“春の淡雪”がぐっときますね。着物の柄、色にも惹き付けられます。名都美の日本画コレクションがいつか東京にもやってくることを祈ってます。

7/19からはじまった東博の平常展に清方の“黒髪”という屏風がでてます。はじめてお目にかかったのですが、この女性も“妖魚”(福富太郎コレクション)とまではいきませんが、色っぽいです。七恵さんは観られたことあります?
2006/07/26(水) 17:26 | URL | いづつや #RK0OJ0uw[ 編集]
こんばんは いづつやさん
『黒髪』好きです。
これは集英社の座右宝画集シリーズでチラシにもなりました。
端っこの黒アゲハがまたなんとも言えず、良いですよね。
大好きです。
今度清方の妖艶な女の絵ばかり集めたweb展覧会でもしようかなと思っています。大正期の清方の作品は本当に珠玉だと思います。
2006/07/26(水) 18:26 | URL | 遊行 #-[ 編集]
遊行七恵さん、こんばんは
やはり鏑木清方は素晴らしいですね!
「春の淡雪」は仰るとおりゾクゾクする絵です。
松園も好きな画家なのですが、どちらかというと清方の方が好みです。
口絵で、恐縮ですが清方つながりということで、過去記事をTBさせていただきますので、よろしくお願いいたします。 

清方のweb展覧会、楽しみにしています。
2006/07/26(水) 22:19 | URL | lapis #e8.b9ePc[ 編集]
lapisさん こんばんは
遅ればせながら3000niceおめでとうございます。
システムが異なるので、ちょっとその辺のことがよくわからなくて(あせっ)
差し控えさせていただいてました。

春の淡雪は本当によかったです。
TBありがとうございます。菊池は数年前回顧展でみまして、乳姉妹や己が罪などに惹かれました。
来月、伊藤彦造見てきます。四度目の回顧展ですが、彦造も清方同様ゾクゾクする絵師だと思います。
清方資料は多いのですが、画像を挙げるのが下手なのが痛いところです。
2006/07/26(水) 22:41 | URL | 遊行 #-[ 編集]
大変な数の美術鑑賞をなさっていらしゃいますね。私も美術舘大好きです。時々、名都美術館に行きます。最近では櫛、笄展が素敵でした。お洒落な雑貨屋、園芸店も近くにあります。

モリスも大好でロンドンの美術舘、コッツウォルズの屋敷も訪ねました。
2008/02/14(木) 13:41 | URL | hitomi #-[ 編集]
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