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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

不折と子規・鴎外・漱石

根岸の里のわび住まい。

確かに子規や不折のいた頃はそうだったのだろう。
近所のとうふ料理の老舗<笹の雪>には彰義隊の形見もあると言うし。
今はなんとも言いかねる場所なのだが、とりあえず朝早くから鶯谷の書道博物館へ向かった。
向かいの子規庵には板塀から黄色く鮮やかな花が咲き零れている。
糸瓜である。

なるほど病床六尺の人だわなと思いながら玄関へ来ると、「糸瓜忌のために準備中で休館してます」と張り紙がある。なんとなく納得した。昔の俳人をしのぶ心持ちとはどんな感じなのだろうか。

昭和11年に書家であり洋画家の中村不折が建てたモダニズムの本館に彼の作品が並び、後からの新館に殷周時代からの文物が並ぶ。

生誕百四十周年。
『不折と子規・鴎外・漱石』展が開催されている。
http://www.taitocity.net/taito/shodou/news.html

img232.jpg

チラシは『吾輩は猫である』の挿絵から。明治38年だから101年前の絵。
小説が洒脱なので絵も洒脱である。
不折の洋画とは全く異なる筆致。

二階までの吹き抜け展示がある。書。顔真卿の書を臨書したもの。しかし本物の顔真卿の書は唐代に墓の中に持ち込まれて、この世に残っていないそうだが。
さまざまな字体を混用した破体(雑体とも言う)による書は大作で、しかし所々しか読めなかった。
また明治41年の大ベストセラー『龍眠帖』があった。蘇轍の『李公麟山荘図』20首を書いているそうだ。
正直、この書を見たとき池大雅が三歳のときに書いた『金山』の文字を思い出した。
わたしには近代の書を云々する資格はないが、感じたままに言葉にするとどうしてもそれを思うのだ。
ryuminjou.jpg


ここにも少しばかり青銅器が置かれている。その銘文もいい字体だと解説されている。
本当に書道の博物館なのだ。
しかしわたしは今回、画家としての不折を楽しみたいと思っている。
『猗器の誡』(油彩) 昭和16年(1941) 060708_1.jpg

水をいっぱいに入れると覆る猗器(画面左)を人間の高慢な心にたとえた、中国春秋時代の故事を題材とした作品。  
そう解説に書かれているが、読まぬと何をしているかわからない作品でもある。不折は洋画と言う技法で中国古代をよく描いた。重厚な筆致で教訓的な絵を多く描いた。

しかしその一方、『子規十二支帖』の楽しく洒脱な挿絵もあり、リアルで見事な風景スケッチも多い。
ネズミの会議、雪舟の肖像、人身牛首(神農)、牛に乗る老子、亀盤牛角(古代の占い)、猛虎一声山月高(月に向かって吠える)、ウサギの古文、支那河南省龍門山の景、顧凱えがく羊(描く先から羊がどんどん逃げ出して行く)、サルノコシカケ、清正と猿の読書、常世の長鳴鳥、ケイトウ、子規居士の写真、フランスの牧羊犬、西洋古代の画犬、アッシリアやエジプトの石に刻んだ画、ローマ建国の祖(ロムスとレムルスは狼の乳を貰った)、狡兎死して走狗烹らるる、猪苗代湖、猪突猛進、焼き鳥、虎の威を借る・・・・・・・・・
羅列するだけでも結構楽しいものだな。

060708_29.jpg

これは猫の挿絵。漱石から挿絵のおかげで本が売れて嬉しいという手紙が届いている。

とりあえずそんな感じで機嫌よく眺めたところで、今度はヌードデッサン。
先ほど少し描いたように風景スケッチはリアルである。デッサンもまたリアルである。
日本人モデルは少なく、外国人の身体が多い。
その中に一体、中性的な肉体の裸婦がいた。その肉体になんとなく惹かれた。顔つきも無機質な感じ。実際どうだったかはわからぬが、このデッサンの中では一番心を惹かれた。
ただしそれは不折の技能かモデルの在りようかはわからない。

新館の青銅器などは後日又と思っている。

この日わたしは初めて会う人と共に美術館を巡るのだ。時間が近づいてきていた。
また来ようと思う。そのときには<笹の雪>でとうふ料理が食べたい。




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コメント
子規と聞くと単純に四国しか浮かんでこなかったのですが、書道博物館のすぐ近くに庵があるのですね。
中村不折という人初めて知りました。絵は良く分からないけれど、文字に関してはとても魅力的ですね。
子規と漱石そして鴎外などこの時代の交友関係だけでも小説が書けそうですね。
2006/08/25(金) 10:34 | URL | red_pepper #-[ 編集]
red_pepper さん こんばんは
漱石の随筆を読むと、子規との友情がよく伝わってきます。
江川達也が『天気晴朗なれど波高し 日露戦争物語』の中で子規と秋山真之らの交友も描いていますが、明治の友情は物語として眺めると、とても面白いです。
不折は意外と沢山の洋画を遺していますが、なぜか洋画家・不折としての展覧会はないようです。
中国の故事来歴やことわざを絵画化した作品が多いですが、この『猫』のように洒脱な挿絵も魅力的です。
2006/08/25(金) 21:59 | URL | 遊行 #-[ 編集]
上野公園内に
正岡子規野球場ができましたね。
「のぼる」さんの球場です。

司馬遼太郎さんの
「坂之上の雲」思い出させます。
2006/08/26(土) 08:36 | URL | Tak #JalddpaA[ 編集]
の・ぼーる さんですね、ウフフ。
坂の上の雲を文士劇でしたとき、藤本義一氏が子規をしたそうです。そのときのエピソードが抱腹絶倒なのですが、ここでかけないのが残念です。むふふ。
2006/08/26(土) 22:03 | URL | 遊行 #-[ 編集]
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