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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

アートコレクション 花鳥風月

毎夏、ホテルオークラがアートコレクションとしてチャリティ展覧会を開催する。今年で十二回目。
第一回のときは、各企業が秘蔵する名画を公開する、という展覧会だった。
そのとき小出楢重の『枯木のある風景』を観てわたしは<世界>が変わるのを感じた。異様な衝撃。
展覧会に行くと稀にそんなことがある。

その意味では毎年この催しが楽しみなのだが、回を増すごとに秘蔵公開と言うより、コンセプトに沿った展覧会へと様相を変えていったようだ。

この展覧会は大倉集古館と泉屋分館とも提携して、一枚のチケットで三館を楽しめるようにしてくれる。
それが嬉しくて、ホテルから届く優待券をじぃっと待っていたのだった。

今回はマネの芍薬がチラシになりチケットになった。
この絵は'01オルセー美術館でマネの静物画展にも出ていた。
マネは芍薬が好きで生涯に亙って芍薬を描いてもいた。
チケット半券。img257.jpg

☆のパンチをもらった♪ありがとう、泉屋分館。

キスリングはキキの肖像画で有名だが、花、特にミモザを多く描いている。それも盛り付けるように花を描く。ミモザの花粉がこちらに届きそうなほどだ。
'92にキスリングの回顧展があったが、それ以来この人の展覧会がないことに気づいた。
モネの睡蓮はアサヒビール所蔵分だが、これはディズニーアートで見た眠れる森の池の風景によく似ている。
ラトゥールの花も暗い地の上に咲いている。
花は続く。
日本画の花。
華楊の朱い牡丹は銀地に咲き、土牛は凄い余白を生み出していた。
いつも縹渺たる神泉の白菊も、物凄い余白を見せている。
花そのものより、その花を描いた周囲の余白に心が惹かれた。惹かれたというより、衝かれたのだ。
古径の菖蒲も余白が凄い。去年の回顧展でこんなに突き刺さるような作品を見ていたかどうか。

古径の『河風』img260-2.jpg

足を水の流れにつける女。この絵はとても涼やかでいい。見るたび嬉しくなる絵だ。
去年の回顧展ではっ となった『紫苑紅蜀葵』が出ていた。この紫苑の群生を見るたび石川淳の『紫苑物語』を思い出す。
梶井の桜の木の下と同じものが埋まる紫苑の地。
今回、朝顔がそっと薄白く咲いていることに初めて、気づいた。
『尾長鳥』 青尻尾の二羽が地に落ちてべろっと広がる椿をみつめる。二羽のおしゃべりが聞こえてきそうだ。
『鴨』 首をひねり、何を見上げるのか。
『飛鴨』 海上を行く彼らはもしかして仲間を呼んでいるのかもしれない。

花蹊『秋虫瓜蔬図』 瓜、蝶、玉蜀黍、茄子、鬼灯、南瓜、飛蝗、蝸牛・・・・・・自賛を読むと、明治15年九月中旬に描いたらしい。

松村桂月『玉堂富貴鸚鵡図』 字面だけでは富貴=牡丹とオウムがいるくらいしかわからない。ところが絵を見、解説を読むとハズレてました。
玉蘭(白い花)、海棠、牡丹に錦ケイ鳥が二羽いる。

雄大な滝と裸婦、星空のスフィンクスなどを描く杉山寧が描く『山吹小禽』 一重の黄色い山吹とこちらをにらむ小鳥。
若い頃の作品だと思う。img258.jpg


栖鳳『柳に白鷺図』 鷺の目が賢そうだ。栖鳳と関雪の動物は賢そうなのが多い。

実は三の丸尚蔵館に行ったことがない。
一度行こうとして道を間違えてから行く気がなくなった。意固地なので再チャレンジはしていない。
だから素敵な展覧会も全てオミットしている。ただし岩佐又兵衛の『小栗判官』が出れば考えようとは思っている。
その三の丸から来た翠障『月鴎図』『日鶴図』に惹かれた。
鴎の奴ら、顔が白い。普通の鴎かユリカモメか判断がつかない。目が鳥らしく下から上へ閉じられかけている。
なんとなくコワいような可愛いような。

景文『四季草花図』 こうした屏風は楽しくて好きだ。
ツクシ、レンゲ、スミレに始まりユリ(その間に鳥が飛ぶ)、ショウブ、サギソウ。
左隻にはハギ、バッタ、藍色のアサガオ、白いキキョウ、ススキ、ホオズキ、コオロギ、キクで〆。

誰の手に拠るものかわからぬが、『秋草流水図屏風』がたいへんよかった。
金地に秋草が描かれているが、それより細木の障子がよいのだ。透かしの刺繍。唐草紋様という手の込み方。
これは日本趣味の外国人が喜びそうな工芸品だと思った。
宮川香山の壷か並河靖之の七宝壷かを置くと面白い気がする。

それから皆さんが「ヨカッタヨカッタ」と褒めてはる抱一の『四季花鳥図屏風』を見た。
img259-1.jpg

飛んでくるのは白鷺か。
これは陽明文庫蔵。京都で見ているものを東京でも見るの。
蕨、蒲公英、とりどりのトリ、ぼてっとした紫陽花、立葵、菖蒲と鷺(かくれんぼ)。
川の流れに水仙が可愛く、女郎花にこっち向きのウッドペッカーみたいな雉もいる。
白梅に鶯、雪に南天の愛らしさで、終わり。

鷺と言えば荻邨の『淀の水車』がすぐに思い浮かぶが、ここにもあった。これや古径の『みみずく』は大倉から。

再び江戸絵画。
応挙『梅に鶯』 墨絵であっさり。乙卯年1785年。
芦雪『雁来紅群禽図』 四十雀ぞ?ろぞろ。ホッペタかわいいゾ。コトリの行進。(Hマンシーニに子象の行進という名曲もあったっけ)
若冲『乗輿舟』 淀川クルージング。丁度今、京博でも展覧中。八幡、橋本。岩清水八幡宮は現在も京阪沿線の人々の初詣の神社だ。
橋本にはちょっとヒミツな歌もある。歌と言えば、ここには「一片霜云々・・・」の詞が書かれている。
高浜、前島、大塚、枚方。枚方には鍵屋という古い船宿もあった。今は博物館になっているが、若冲の頃は人気の料理屋だったのではないか。
静けさは技法からくるものだろうか。ただただ、渺渺。
崋山『富峰驟雨図』 富士山にモアモアっと雨が降る。小舟に老人がいる。
『清見潟富士図』 おお、こんな形の富士いいな。遠くに富士があるのが好きだ。北斎でもそう。
そして実は武田泰淳『富士』を思い起こしている。「・・・そこには富士がなかった。」富士のふもとの。
『芦汀双鴨図』 オスの奴、ヨメはんに「グワッ」言われて、首すくめてますな。
言うてたら北斎の虎がいる。img260-1.jpg

牙と言うより八重歯のはみ出た虎ちゃん。柄は個体により差異があるとは言え、どうみてもアメリカンショートヘア。

『来燕帰雁』 縦に飛ぶ雁とその下にモコモコ燕が三羽。雁たち。ワイルドギース=傭兵のこと。
近代の人だが、江戸の儒学者だと思うほうがよいのが鉄斎だ。
鉄斎の良さはやはりよくわからないが、『月夜梅花図』 などではよいとも感じる。
垂れる白梅。満月。枝ぶりはなんとなく梅と言うより菩提樹の触毛。


洋画へ。
鹿子木の『月』 草野に裸婦がいてウサギが一羽二羽。少し向こうにも一羽。
岡鹿之助『灯台』 煉瓦造りの灯台。はためく。森が静かにある。電信柱が並ぶ。キの字型というより、ギリシャ正教会の十字架のような。
『花と廃墟』 苔むす城。オレンジ色の元気な花。遠近感を考える。
鹿之助の絵はいつも静謐だ。
安井『静物』 花が伊万里のような瓶に活けられている。

わたしは眺める順に感想を書いている。
松篁『芳春』 尾長鳥が桃枝にとまり、キュ?と鳴いている。松篁さんはどの作品もいい。色彩も構図も。
蓬春『木瓜』 白い花が大半を占め、紅は右端に少し。白い花びらは緑色に縁取られ、花芯も同じ色。うっとりする気分。
高山『明星』 これが不思議な絵で、ぼうっと光る雲の広がりの隣に小さな星が瞬いている。そして波線が流れている。なんだろう、と思うより先に高山辰雄の心象風景かもしれないと思った。
名前に既に星がある。(辰=☆の意)
岩橋『月』 あら、これ見たことある。ただし色違い。
諏訪北澤美術館の『残照』。img261.jpg

昔の水曜ロードショーのOPみたいな絵。それと同じ場所のような気がする。こっちは青い夜。

最後に洋画へ。
坂本『月光』 馬がうっすらと影だけ見えている。パステルカラーでこしらえた紙芝居の箱の中にいる馬。そんな感じ。
小絲『芥子の花』 花を活ける瓶はデルフト窯のものかもしれない。黒地というより藍色の空間に芥子の花がすっくと立っている。細い茎は決して折れることがない。そんな強さを感じた。
梅原『バラ』『窓辺のユリ』 ほんと、天衣無縫。バラはモコモコ、ユリのそばかすは水玉みたい。こういう心持ちになれるのはどうなのだろう。ちょっと想像がつくようでつかない。
鴨居『月に歌う』 円いギターはこれ、チターですかなんなのかな。鴨居はわりと歌う人・叫ぶ人・吠える姿を多く描いている。酔っ払いも口を開いている。
口は開けていても、歌っていても、叫んでいても、泣いていても、コトバは零れてこないのだった。


今回のタイトルは<花鳥風月 日本とヨーロッパ>だった。
そのタイトルの意味を考えることもなく、会場を後にした。
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コメント
遊行さん、こんばんは
TBありがとうございました。
三の丸尚蔵館にはご縁がないとか、縁って難しいですね。
ちなみに私は森美術館や森アーツセンターには…って感じです。

ちなみに三の丸尚蔵館には、『秋草流水図屏風』と趣を同じにする桜の屏風がありました。何かの折りに外部展示があれば良いですね。

花鳥、自然のうつろいに心惹かれるのは日本人の専売特許かと思いきや、このように西洋にも同じ精神性を尊ぶ人もいるわけですね。キャンバス等にその美をどう写し取っていくか、その手法や思想にはかなりの違いがありそうですが、違和感なく西洋油絵-日本画の境をひょいっとまたいで見れた展覧会でした。
2006/08/30(水) 01:56 | URL | アイレ #-[ 編集]
この展覧会も見応えのある絵が多くて嬉しかったです。
キスリングの花の中に埋もれてみたい~なんて恐ろしいこと
考えました。

花鳥風月というタイトルながら、風の作品が少なかったですね。やはり風を表現するのは難しいのでしょうね。

私は古径を見て、日高川を思い出したのですが、あちらの髪が
なびくような風は涼しげじゃありませんからね。清姫、執念の全力疾走。涼しさを通り越して、背筋が寒くなります。

遊行さんが三の丸に出かけてないのは、「超」意外でした。

2006/08/30(水) 08:11 | URL | 一村雨 #-[ 編集]
★アイレさん こんにちは
青色通信で三の丸レポ読みながら
「いつか行ける日が来るのだろーか・・・」
と秘かにうらやましがっていました。
なんで道を間違えたか今となっては不明ですが、すぐトラウマになるのも考え物ですね。
静物画でしんだ鳥などを描く一方で、花を描く。
西洋の意識を考えるとたいへん興味深いですね。

☆一村雨さん こんにちは
>風を表現するのは難しい
清姫の髪のなびきなどで風を感じることが出来ますよね。
でも本当にムツカシイ。
コンテンポラリーなどで抽象的に<風>を表現するのもありますが、絵でそれを感じさせるのは・・・
2006/08/30(水) 13:22 | URL | 遊行 #-[ 編集]
☆のパンチ、なんかうれしかったですよね。
泉屋のほうに先に行ってしまうと、それより下に付いている大倉集古館の半券がどうなるのか気になったので、泉屋には後に行くことにしたんですけど、☆型を抜かれたときには、その手があったか、と納得しました。
2006/09/01(金) 00:57 | URL | キリル #-[ 編集]
キリルさん こんにちは
この☆はポールがダルジュロスに打ち抜かれたのと同じ・またはシュールリアリズムのAさんのアタマにあるものと同じだと思いました★
2006/09/01(金) 12:44 | URL | 遊行 #-[ 編集]
遊行さん、こんばんは。
初回からご覧になられているのですか!
私は去年に続いて二度目です。

タイトルはさておき、ともかく本当に名品ばかりで驚かされます。
いやはや俗な話で恐縮ですが、これだけの品を借りるのにお金もかかるでしょうね。
それを毎年開催なさっているなんてさすが?!オークラですね。

三の丸は「パレスホテルの前」と覚えると分かり易いかもしれません。
皇居+江戸城は広いので、
東京駅から目の前と分かっていても実際は結構歩きます。
ということで私はいつも千代田線の大手町駅からです。
ここからが一番近いかと…。
2006/09/01(金) 21:37 | URL | はろるど #GMs.CvUw[ 編集]
はろるどさん こんばんは
千代田線の大手町からですか。
何でわたし間違えたのかなぁ。
地図を持っていて間違えたなんて致命傷ですね。

初回のときは本当に秘蔵中の秘蔵品が多かったです。
またその頃の大倉は改装前でしたから、お客さんも少なかったのです。
同じ日に江戸博で版画に見る東京というのを見まして、そこでも巴水みていました。
2006/09/01(金) 23:04 | URL | 遊行 #-[ 編集]
こんにちは。
ホテルオークラからこの展覧会ベスト10が発表されました。
遊行さんが感想お書きになっている作品も多く入っています。

でも、同じく、私も古径の「河風」が一番印象に残りました。
2006/09/29(金) 08:56 | URL | Tak #JalddpaA[ 編集]
Takさん こんにちは
この展覧会の記事がなかったのでアレレと思っていたのですよ。しかしわたし、すっかりコンクールのこと忘れてました。
大抵ええ加減やなーと自分でも感心しましたヨ。
マネの芍薬はチラシやチケットになったことが一層の拍車をかけたのでしょうね。
2006/09/29(金) 12:53 | URL | 遊行七恵 #-[ 編集]
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