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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

白蛇伝を見る

二日の間に三本の映画を見た。
・白蛇伝
・死者の書
・山中常磐
週末には川本喜八郎リスペクトとして短編映画も上映されるので、川本作品はそちらでまとめたい。
また山中常盤も稿を別に取りたい。

京都は映画発祥の地だという意識が強いので、文化博物館では古い日本映画をその月ごとに何本も上映する。
東京のフィルムセンターにも提供したフィルムもあるようだ。
そこで東映動画の傑作『白蛇伝』を上映した。

子供の頃、春休み夏休み冬休みになると必ずTVで放映されたのが東映動画の長編アニメーションだった。
今では放映されない名画たち。
白蛇伝、わんわん忠臣蔵、どうぶつ宝島、西遊記、シンドバッド・・・
'00夏に川崎市民ミュージアム、'05正月に大丸などでこれらの東映動画の回顧展が行なわれていた。
わたしは今はアニメどころかTVそのものを殆ど見ないので昨今の状況は知らない。

白蛇伝。京劇にも残る演目を'58当時、日本最高のスタッフで製作した名作である。

物語の概要はgooから。
宋の時代の中国--西湖の畔に住む少年・許仙は、可愛がっていた小蛇を大人たちに叱られて泣く泣く捨てた。何年か後、成人した許仙は、ある朝、自分の吹く笛の音につれて鳴る不思議な胡弓の音を聞いた。彼の子分、パンダ(白黒熊)とミミ(猫熊)は、妖しい少女に誘われて古寺から胡弓を見つけ持ち帰った。翌朝、許仙は、道で昨日の少女・少青に会ったが、彼女の導きで立派な御殿に連れてゆかれ、胡弓の持主という美しい白娘に引会わされた。許仙は一目で恋におちたが、白娘は昔、許仙が可愛がっていた白蛇の精、少青は青魚の精だった。許仙が白蛇の精と恋におちたことを法力で知った高僧・法海は、彼を何とか救おうと考えた。一方、許仙と白娘が結ばれたのを喜んだパンダとミミ、それに少青は、御殿の中の木彫りの竜で遊んでいるうちに、竜は、みんなを乗せたまま空へ舞上り、宝物殿へ落ちた。そこにあった二つの宝石を国宝とも知らず少青は二人のために持帰ったがこれを政府の役人に発見され、許仙は遠く蘇州へ流され、労役につかされた。パンダとミミも蘇州へ来て許仙を探すが、一方の白娘と少青も蘇州の街外れの古塔で許仙の現れるのを待っていた。白娘の妖気が、夜な夜な許仙の体にとりつき白蛇の幻となって現れたため許仙は苦力仲間から追放されたがやがて彼は古塔に白娘とめぐり会うことができた。が、これを見た法海が許仙を救おうと白娘と術を競い、白娘が敗れて逃げるのを追いかけた許仙は崖下に落ちて絶命した。法海は島のお寺に許仙を葬ってやろうとした。しかし白娘は許仙を救おうと命の花を貰いに竜王星の竜王のもとへ飛び、自分が術の使えない人間となることを条件に命の花をもらって島へかけつけた。が、白娘をあくまで妖怪と信ずる法海に追返された。そこで少青は海底の大なまずに頼み、島を水攻めにし、許仙を取戻そうとした。海は大荒れとなり島の寺に襲いかかった。舟に乗って命の花を届けようとする白娘は、今は術をもたぬ身、大波に溺れようとしている。そのころ少青の力で命の花は許仙のところに着き、許仙は生き返った。溺れようとしている白娘めがけて許仙は海へ飛びこんだ。これを見た法海は、今こそ白娘が人間に返り、許仙との恋の固さを知って舟を差のべてやった。二人は舟に乗って幸せの国へと旅立った。

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今回三種類ばかり見て検討した結果、これが一番ちかいように思った。
しかし労役につく、というのではなく<船引人夫になったが、力足らずのためカネも大して稼げず>と変えた方がよいかもしれない。

パンダはそのままパンダ、レッサーパンダはミミィという名である。
この二匹がたまらなく可愛く、そして人間よりはるかにアクティブなのだ。
子どもの頃からこのパンダの流す涙が可愛く思い、下手な絵まで描いたことを忘れない。
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許仙はこの美しく、楽しい蘇州にいても楽しめない。
今この街は祭の最中で、ありとあらゆる大道芸人が様々な芸を見せている。
短剣をジャグリングする者、口から火を吐く者、皿回しなどなど・・・
憂鬱に許仙はため息をつく。
作り物の龍を掲げて歩き回る群れから遠く離れてため息をついている。
ふと見れば黒豚とイタチが歩いている。その姿が自分の仲良し・パンダとミミィに見えてくる。
許仙はただただ淋しい。

黒豚やイタチはナレーションによると<街の愚連隊>だという。時代を感じるなぁ。
こいつらは色々チームを組んで物売りの屋台から野菜などを盗んでいる。
親分は大ブタ。アヒルもいる。面白い歌を歌っている。
ここであることに気づく。
許仙には<人間>の仲間が一人もいないのだった。
苦力連中とは元々合わない。子どもの頃は大人に叱られて蛇を野に捨てている。
長じて一人笛を吹いて暮せる身分になっても、友達はパンダとレッサーパンダだけなのだ。
そして愛した相手は白蛇の化身で、その侍女は魚の化身。
最初から<人間世界>との縁が薄いのだった。
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鏡花の描く人物で幼時に神隠しなどに遭う子どもは、長じて後には人の世からドロップアウトするか、もしくは軍人になるかしか道が残されていなかった。
そして『風の谷のナウシカ』。
王蟲の幼虫を隠そうとする幼女ナウシカ。大人に取り上げられ泣くしかなかった幼女は長じて王蟲と心を通わせて生きる。
許仙は人の世に迎えられても、自らその外へ出ようとする性質がある。
まるで諸星大二郎の『塔を飛ぶ鳥』の青年のように。

そのことを思い出した。

許仙は人生の最初から人の世の外に生きて行く定めがあったとしか思えない。
だからあのくそ坊主はいらぬ手出しをするべきではなかったのだ。
子どもの頃からそう思っていたが、久しぶりに見た今も同じ気持ちがある。
それどころか、和尚が実は嫉みから二人を引き裂こうとするのかも、と邪推するくらいだ。
これが愛を完全なものにする通過儀礼だとは到底思えない。
高等遊民で笛吹くしか能のない許仙にまともな仕事が出来ると思っているのだろうか。
白蛇に取り殺されようと、白蛇と心中ならそれはそれで人の勝手なのだ。
動物たちや化生の者たちとしかつきあえぬのはわかっているだろうに。

やっぱり感情レベルで、このくそ坊主が嫌いだ、わたしは。

映像の美しさ・演出の優雅さにときめくのは当然で、脚本が矢代静一、原画に大塚康生らがスタッフとして名を連ねていた。
子どもの頃の許仙と白蛇との顛末は影絵のように描かれている。
ワヤンのような美しさがそこにあった。
西湖のほとりの邸宅での恋物語、花々に彩られた楽しい夢。
『紅楼夢』を絵画化したような、中国流の歓び。
それらを今のわたしが楽しめている。img264.jpg


二人の恋を応援する動物たち。
パンダの強さに負けて子分になるブタたち。みんなで許仙の行方を探している。
復活した許仙に抱きついて喜ぶパンダとミミィ。にこにこする動物たち。
しかし今や人間になった白娘と許仙は舟に乗って<幸せの国>に旅立つ。
二人きりの旅立ち。img267.jpg


が、その幸せの国とは一体なんなのか。
二人だけの世界はその国でないと成り立たないのか。
それはこの人の世にある国なのか。まるで補陀落渡海のような・・・。
今回、そんなことを考えている。
しかし純然たる喜びが消えることはなく、見終わったとき、「よかったわぁ」と声をあげているのだ、昔と同じく。
何度も何度も見続けている作品ではあるが、こうして新しい発見もあり、やはり見に来てよかったと思うのだった。
img268.jpg

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コメント
 「白蛇伝」・「わんわん忠臣蔵」・「西遊記」・・・本当に良く観ました。
「白蛇伝」はずっと中国のアニメだと思っていたぐらい異国情緒のある
作品でしたね。 印象的なカットばかり、とても懐かしいものを見せて
戴き感謝です。

 今、急に「わんわんマーチ」と犬達が行進する映像が浮かんできました。
♪ゆくぞゆくぞ尻尾を上げて、僕等はわんわん、○○なわんわん・・・
だったかなぁ・・・ はっきり思い出せないで脳がモヤモヤもどかしい~
2006/08/31(木) 18:39 | URL | 山桜 #-[ 編集]
おお・・・山桜さん、さすが反応してくださいましたね。
わたしは同じものばかり繰り返し偏愛する性質なので、やっぱり昔の東映動画っていいなーとうっとりしてました。
わんわん忠臣蔵、これも大好きでした。
敵役の虎がKillerキラーという名なのもうまいなーと思います。
わんわんマーチはさすがに思い出せません~~
2006/08/31(木) 21:39 | URL | 遊行 #-[ 編集]
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