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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

閉じ込められた宇宙

箱。
日曜美術館で美麗なもの・仕掛けのあるものを見て、わたしは随分ときめいた。

TVで見た箱の中で一番どきどきしたのは、桑原弘明さんというアーチストの作ったからくりである。
小さな箱の中に別な世界が広がっていた。
真鍮の箱の中に小さな室内がある。
椅子、テーブル、鏡、壁、床、窓。
極小の世界。完璧な宇宙。048-6m.jpg

元々ドールハウスなどを愛するわたしは小さなものを偏愛する傾向が強い。それらがこんな小さな箱の中に納まり、スコープで<覗く>角度によって、表情を変える。
赤い部屋になったり、夜になったり、鏡が肖像画に変わったり。
深い深い世界がそこにあった。


のぞきからくり。
わたしはのぞきからくりが好きだ。
母から聞くばかりで実物を想像しては異様にときめいていた。
実物を見たのは佐倉の歴博にある地獄極楽ののぞきからくりだった。
ボタンを押すとからくりが動き出し、独特の調子で語りも入る。
たまたまこの装置の向かいにあるのが江戸時代の商家の軒先の再現で、そこには土佐の絵金の屏風絵が飾られていた。
img317.jpg

地獄極楽の鮮やかにキッチュな煌びやかさと、無残絵の競演に、粟立つような喜びがあった。
のぞきからくりで地獄極楽を楽しむ私は絵金に背を晒している。
絵金の絵から誰かが現れ、私を袈裟懸けに斬る恐れもあるのに。

ここにあるのは幽霊の継子イジメ。nozoki.jpg

http://www.itech.co.jp/maki/nozoki.html
巻町というところにあるらしい。

それから四天王寺で実演があった。
こちらはボランティアの手によるものなので、ただそこにあるのを喜んだだけにすぎない。
四年前。上演されたのは『不如帰』だったか。
この日は秋の彼岸の中日に近い日で、陽があるうちは日想観をこらせたろうが、夕方以降に訪れたので、古来からの夕日がきりきり舞する景色は見損ねていた。
しかし、四天王寺の独自な伽藍配置のその只中に立ち、空を見上げると、巨大な黄金の満月があった。
黄金の月。その真下、特異な配置の庭に立つわたし。
月から見ればこれもまた、極小の箱庭なのではないか。
わたしはその観念に幻惑された。9072250.jpg



ムットーニのからくり。
初めてムットーニのからくりを知ったのは、いつだったか。
雑誌で見ていたその実物を、'97に世田谷文学館で見た。
偏愛する『山月記』『猫町』など。
その翌年にはキリンプラザで大回顧展を楽しんだ。
数年後には大丸、今年は阪急でその世界を存分に味わう。
ムットーニの世界。img313.jpg

箱=舞台の上で物語が生まれる。
人形もライトも音楽も、そして物語りも全てムットーニのオリジナルである。
考えれば、ムットーニの脳髄そのものが箱であり、そこから飛び出たものをわたしたちは楽しんでいるのだった。


「覗くと不思議な宇宙がある。」
ナゾナゾ風に問えば、答えの多くは「万華鏡」と返るだろう。
万華鏡、カレイドスコープ。
img315.jpg

京都に地名そのまま『姉小路館』というミュージアムがある。
ここは万華鏡専門のミュージアムである。
文化博物館の北側にあるのだが、ついうかうかと見過ごしていた。
旧来からの万華鏡を集めたものではなく、アーチストの新作を集めている。
img316.jpg

ここにあげる画像は、装置をのぞいた景色なのだが、外観そのものにも工夫が凝らされていて、なかなか面白い。
オルゴールつきのものもあるし、人形の形のものもある。
img314.jpg



こちらはわたしの持つ万華鏡。
昔ながらのものと、台北の故宮で購入したものと。P0203-1.jpg



箱から現れる女、数態。
杉浦日向子と小村雪岱。
P0207-1.jpg

竹やうつぼ舟から現れる他に、卵型石作りのタイムカプセルから出てくる女たち。IMGP0208.jpg

瓜は姫、桃はタロウだ。
P0206-1.jpg


『押し絵と旅する男』は箱の中の宇宙に囚われている。
むかし、店先に飾られたドールハウスに惹かれた少年がその中に入り込み、人形と立場を交代させられる怖いマンガがあった。
水木しげるにもダイヤモンドに閉じ込められる男の話があった。
閉じ込められた宇宙。


わたしはパチンコをしないが、あの台を曼荼羅に似ていると言ったのはマンガ家・岡野玲子だった。
曼荼羅は宇宙の縮図である。
遊具であることを越えて、これもまためくるめく箱なのである。
img308.jpg



コーネルの箱。img312.jpg

金子國義のキャビネット。P0205-1.jpg

澁澤龍彦の書斎。img311.jpg

左甚五郎の拵えた人形は、箱から出ると、動きはじめる。
カリガリ博士のキャビネットには、眠り男<ツェザーレ>がいる。

建石修志と北川健次の作品を見ると、いつも<閉じ込められた宇宙>を感じる。
img309.jpg

img310.jpg


壷中天。
ここにあげた全ては、壷中天なのである。
ミクロコスモス。
優れた本もまたその中に宇宙を潜めている。




近いうちに、箱から展開してペルシャ語で言う<閉じられた庭園>=パラダイスについて綴りたいと思っている。
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コメント
こんばんは
とっても愉しかったです。
閉じ込められた宇宙は、魅力的ですね。万華鏡、杉浦日向子、小村雪岱、諸星大二郎、澁澤龍彦、壷中天等、大好物のオンパレードでした。
過去記事で、恐縮ですが、ミニアチュールつながりということでTBさせていただきます。テーマが少しずれていますが、澁澤龍彦が一応でてきますので、お許しください。

パラダイスの記事も楽しみにしております。
2006/09/08(金) 00:56 | URL | lapis #e8.b9ePc[ 編集]
lapisさん こんにちは
今回自分の好きなものばかりを集めてみました。
>大好物のオンパレード
好きなものが共通しているのが、とても嬉しいです。
観念の共有、そのことにもときめきます。
TBありがとうございます♪
2006/09/08(金) 07:14 | URL | 遊行 #-[ 編集]
こんにちは。

私ももうひとつ、乱歩の「鏡地獄」を思い出しました。

さてさて、佐倉の歴博にのぞきからくりがあるのですね。
さっそく見に行こうと思います。
2006/09/08(金) 10:45 | URL | 一村雨 #-[ 編集]
一村雨さん こんにちは
乱歩の「鏡地獄」も入れようと思ったのですが、画像がなかったので諦めました。
観念の地獄。凄いですよね。
・・・今度のパラダイスに「パノラマ島綺譚」をあげようと思いました。


佐倉の歴博、おもしろいですよー。
2006/09/08(金) 13:26 | URL | 遊行 #-[ 編集]
こんにちは。私もあの箱の番組は見ました。
でも、遊行七恵さんの箱の世界の方が遥かに大きく深いのですね。
それにしましても、NHKのあの極小の世界をどうやってあんなに綺麗に写真に撮れたのかしらと思います。

箱と言うものに対して、それほど意識したことがありませんでしたので面白かったです。
2006/09/08(金) 15:32 | URL | red_pepper #-[ 編集]
red_pepper さん こんにちは
宇宙の端から端まで見ることは決して出来ないのですが、小さな箱の中に宇宙を閉じ込めることは出来るのだと知りました。

>極小の世界をどうやってあんなに綺麗に写真に
こういうところに技術があるんでしょうねえ。不思議だ。

チャイニーズボックスをご存知ですか。入子細工の箱。最後はなくなるのですが、もしかすると目に見えないだけかもしれない。
箱の内と外は全くの別世界だなと思います。
2006/09/08(金) 16:24 | URL | 遊行 #-[ 編集]
遊行七恵さん、こんばんは。
西洋の絵画はやはりキャンバスのなかの小宇宙ですね。
キャンバスは箱と同じでしょうか。
もっとも日本の絵はキャンバスからはみ出して、ほんとの宇宙につながってしまいますけど。

去年のクリスマスに、大きなクリスマスパーティがあり、いろんな景品を集めたことがあるのですが、カレイドスコープの希望が結構あって百貨店で調べてみたら、いろんな形態のものがあり、値段も高いものは数万円まであって吃驚したものです。
2006/09/09(土) 01:06 | URL | sekisindho #-[ 編集]
様々な小宇宙を楽しませていただきました。
最初の画像を見てフェルメールの描く室内を連想したのですが、
彼の作品など「小宇宙」の名にまさにぴったりのもののように思えます。

私は万華鏡が好きでいくつか持っています。
最近はあまり覗かなくなってしまったのですが、
凝っていたときは三度の食事同様万華鏡を覗くのが日課となっておりました。
大阪ユニバーサルシティに万華鏡の専門店があって、行った事があります。
作家ものの美しい万華鏡を覗いてみたかったのですが、
お値段数万円に驚いてしまい、手に取ることが出来ませんでした。
結局手ごろな値段のものを購入しただけです。
2006/09/09(土) 11:03 | URL | 千露 #GyvMcuCk[ 編集]
☆sekisindhoさん こんばんは
>西洋の絵画はやはりキャンバスのなかの小宇宙
わたしもそう思います。
千露さんが仰っておられるようにフェルメールの作品などがまさにそうですね。
偏光グラスから覗いた世界、を作品にするのも西洋ならではだと思います。

東洋絵画は宇宙とつながりますが、西洋絵画はその中に宇宙を含むのですね。おもしろいです。>と<なのかしら?


★千露さん こんばんは
小さいときからわたしも万華鏡が好きでしたが、お土産屋さんなどで販売されているものばかりだと思っていましたので、作家さんによる個性的な万華鏡を知ったときは、びっくりでした。
素材も実に沢山ありますね。

あとわたしはオルゴールがとても好きなのです。
スイスオルゴールでなくても、好ましいものは本当に好ましいです。
2006/09/09(土) 23:14 | URL | 遊行 #-[ 編集]
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