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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

花外楼の一日ミュージアム

こいちゃさんから花外楼の一日だけミュージアムを教えてもらい、九月九日重陽の日に北浜まで出向いた。
ところでこの日の予定は、桜橋で所用を済まし(東京ぐるパスが福祉共済で割引なのだ)北浜の花外楼で書画を眺め、次いで本町のINAXギャラリーを楽しんでから優雅にお茶や本屋などに寄り、心斎橋大丸で梅原龍三郎展を観て、そして約束していた人々と難波の南海スイスホテルで夕食、というものだった。
我ながらなかなか充実の予定だと思っていたが、充実しすぎることになった。

大阪人ならわかることだが、桜橋から北浜と言うのは、交通手段に乏しいルートである。
当日はたいへん暑い日で、タクシーにも乗らず私は歩いた。
歩きながら、こんなところで倒れるたら困るなと考えていたが、北浜に着いて唖然となった。
も・の・す・ご・い。
なんなんだ、この行列は。
私がついたのは12:50だったが、結局1時間並んだ。炎天下に1時間はつらい。
しかも地下鉄29番出口から上がってきた人と行列の人とでトラブル大発生。
行列の大半は六十代以上の方々だが、すごい主張の仕合だった。
日本の熟年層は強い。
わたしなどは到底太刀打ちできない。
まぁしかしなんとか<融和>して皆さんご入場なのだが、花外楼側もまさかこんな大混乱になろうとは予測していなかったそうだ。

料亭での書画開陳なので、当然靴下を履いてきたが、半被を着た下足番のおじいさん方が気の毒なくらい、ふらふら。
しかし職務に忠実に、そしてお客さんに誠実に励まれるので、大丈夫かしらと心配になった。
「お邪魔します」
と中に入ると、マネージャーさんも下足番さんも挨拶されるが、却って体力を奪うようで申し訳なかった。

幕末からこちらの軒先写真や資料展示がガラスケースにある。
花外楼の歴史および、花外楼の果たした役割などについてはこちらに詳しい。
http://www.kagairo.co.jp/
明治の元勲らとの縁の深い料亭なのである。
階段を上がると、五姓田義松の一枚屏風があり、そこから大広間へ招じられた。
茶席を開いている。
おいしくお菓子を頂きお抹茶もズズズッと頂いてから屏風を見ると、団扇がいっぱい貼り付けられている。松篁さんらの団扇である。
天井は亀甲つなぎ。

建築ファン仲間にばったり会うたが、時間の都合で早く帰るそうで、見学会での再会を約してサラバ。
向こうは書画より建物を見に来ていたのだ。
ビルの中にある40年以前の近代和風を楽しむために。
img319.jpg


井上馨らの部屋がある。
そちらの入り口天井は網代組み。床柱は多分南天だと思うが、訊きたくても係りの人は大変そうなので諦める。
羊歯柄の蒔絵の箱などを眺める。

窓の外には堂島川、対岸は中之島。薔薇園に少しのバラが見え、東洋陶磁美術館も見える。
お茶室ではご当主が茶道具の説明をされていた。

やがて書画を並べた座敷へ行く。
明治の元勲らの書画が並ぶ他に、財界人、文化人の作品もある。
面白かったのは後藤新平の書。
なかなか素敵な字だが、可愛い絵がついている。
おばけちゃんと呼びたいような。
得庵野村徳七の絵が楽しい。
笹のついた大漁幟の立つ眺め。幟の朱が色褪せているのがいかにも潮風に晒されているようでよかった。
他に井上馨の杖突き布袋が可愛い。六歌仙の洒脱な絵もあった。

大阪画壇へ移る。
並ぶ作品は皆、掛け軸表装である。

庭山耕園 タイ、シメジ、スダチ。これが座敷に掛けられていたら、メニューにも期待が行くなぁ。他に朝顔とカニの絵があった。
五井金水 あっさりした桔梗。こういう小品がさりげなくてよいのだと思う。
須磨對水 この人は湯木美術館でも作品を見たが、料亭で見るのが面白いところだ。
なにしろ無類の美食家だったそうだし、ご本人も吉兆、花外楼といった名料亭にその画を飾られて泉下で喜んではることだろう。
鮎二匹(蓼酢で食べたい)、呉春と言うより琳派風の装飾的な紅梅があった。
武部白鳳 夜漁、月下に四艘の舟が網張って水面を見守っている。
中川和堂 天神祭船渡御図。花外楼では必ず夏にこの軸をかけるそうだ。
趣があってエエ感じ。船の上で大松明を焚いている。隣の船には奉輦が。囃し方もいるし、提灯もちゃんと天神さんの梅マーク。
生田花朝 紅葉した縦長の葉っぱが三枚。上から下へ向かって段々赤みも黄みも濃ゆくなる。
他にピンクの紅梅があった。

いよいよ菅楯彦
菅さんは大阪市名誉市民第一号の人だけに、<浪速御民>とか<浪花逸民>とかサインされたりもする。
不思議と回顧展がないが、大大阪時代の大阪の日本画家として、その少し前の時代の浪花情緒を描いている。飄々として粋(すい)な空気の漂う好ましい作品が多い。
花外楼が必ずお正月にかける軸がある。
赤陽の下、座敷では飾り餅があり、烏帽子姿の人々が寛いでいる。軒先には何か釣っている。
中庭には白梅も咲いていて、エエ感じのお正月を迎えてるらしい。
隣の座敷にはまだ前髪の少年がなにやら片づけをしている。
・・・こうしたのどかさは今どこを探してもないなぁ。
これまた良いのが、歌のついた遊女図。
上の句は読み取れない。<ひな>はわかるが続きが読めない。下の句は<乗るや 伏見の 桃の花>である。青い打掛のをんな。
さてその他に、『夏夜店』と題の判る作品がある。
薄墨と薄い朱とで描かれているのが、いかにも夏の夜らしい。
天狗とおたふくの面を描いた屋台があり、茶か冷やし飴でも売ってるらしい。
お釜が据えられていて、柄杓で飲み物を掬うている。尻端折した男はちょんまげ。
買おうとするおかみさんは丸髷で、手を引かれた坊やもいるが、みんな薄墨で影絵のようにも見える。横の床机(ベンチ)には先客二人がいる。そこには屋台のための灯りも立っている。
夏の涼みを感じる作品だった。

大抵見て回ったが、リストにある鍋井克之の作品がない。
聞けば一階のバーの壁だと言うので降りると、やっぱり玄関先は大混雑が続いている。
見やはるお客さんにちょっとでも親切に、という心づくしがあるので入れ替えが大変なのだ。
鍋井さんの『風景』は青空の下の海岸、岩に打ち寄せる波などの絵だった。
唯一の洋画。
それを楽しんでから下足番さんから靴を出してもらって店の外へ出ると、ギャッ。
・・・ものすごい行列はまだまだ続いているのだった。

花外楼さん、ご苦労様です。おおきに、どうも。
img318.jpg

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コメント
遊行七恵さん、こんばんは。
古い料亭といえば、金田中くらいしか思い出せませんが、ここでも確か大正に建てられたものですね。
あとは料亭かどうかよく判りませんが、畠山記念館の般若苑(現在工事中)とか関町の芭雨苑くらいでしょうか。
畠山記念館は、般若苑で招待券貰って2度ほど観に行きましたが、お茶に関するものが多かったように記憶してます。
残念ながら、建築に関してはまったくそんな眼で観てなかったので、白紙のままです。
2006/09/10(日) 23:50 | URL | sekisindho #-[ 編集]
sekisindhoさん こんにちは
うらやましいお話です。

わたしは高校生の頃、鏡花の小説にも出た南地・大和屋に行きたくて、そこの常連だった親戚のオジさんにたのんだところ、
シバかれました。
もっとトシとってからにせぇ、と言われたのでトシ取るのを待ってるうちにオジさんはあの世、お店も昨今の不況で閉めてしまいました。全く残念。
2006/09/11(月) 11:20 | URL | 遊行 #-[ 編集]
こんばんは。
昨日はコメント、TBありがとうございました。
(うまくTBできずまずはコメントのみ)

花外楼さん、とても貴重な体験でした。
よくもまあ、あれだけの歴史ものが集められたものですね。
私は遊行七恵さんのように、日本画とかの知識がありませんが
楽しまさせていただきましたよ。(ジーンズで料亭に上がらせてもらってちょっと場違いかなと躊躇^^;)
個人的には生田花朝さんの3枚の葉っぱの掛け軸が季節柄いいなあって思いました。
2006/09/12(火) 00:25 | URL | 一休 #kfMvrrzk[ 編集]
一休さん こんにちは
花朝さんの葉っぱはよかったですね。
わたしは植物に詳しくないので何の葉っぱかよく知らないのですが、公園や森に行くと見かける葉っぱやわーと嬉しくなりました。
なかなかこうした老舗の料亭さんのお宝を拝める機会はないので、とても嬉しかったです。
2006/09/12(火) 15:00 | URL | 遊行 #-[ 編集]
短いながらやっとアップしました。
菅楯彦の回顧展やってくれたらいいですね♪
2006/09/13(水) 22:45 | URL | こいちゃ #EVuTtBQQ[ 編集]
菅さんの小さい展覧会は四天王寺や大阪美術倶楽部、三越の画廊などで見ましたが、なかなかないですねえ。
でもこういうところから少しずつそのチャンスが生まれるかも・・・
2006/09/14(木) 00:19 | URL | 遊行 #-[ 編集]
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