FC2ブログ

美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

コレクターの眼 <枕>

芦屋美術博物館でちょっと不思議な展覧会を見た。
さるコレクターさんの集めたものを展示している。
それは・・・<枕>なのだった。

枕といえば枕草子、低反発枕、枕絵、夢枕獏、という感じの連想が湧く。
実際ここにはテンピュール枕以外の枕が並んでいた。
箱枕、旅枕、陶枕、籐枕、くくり枕、他の用途にも使える兼用の枕などなど。

こいつが入り口でお出迎えの枕。
清朝の獏枕。ブキミで可愛いゾ。
アタマを乗せていないときは口を鎖し、img331-1.jpg

アタマを乗せるとカッ と口を開くらしい。
ほらほら、こんな感じ。img331-2.jpg


枕も実にいろんな種類がある。大体百点ほど出ている。
日本髪用の枕を見ると、母から聞いた曾祖母の話とか思い出すし、白磁の枕を見たら邯鄲の夢の話を思ったりする。
img331-3.jpg


松井選手もサド侯爵も自分の枕に深い執着があるので有名だ。
澁澤龍彦の『玩物草紙』によると、サドは牢獄で自分の枕を取り上げられてパニック状態になったそうだ。松井選手も高校時代から愛用の枕をアメリカにも持って行っている。

ここにある枕を見て思い出したことがもう一つ。
中尊寺の宝物殿にあった藤原三代のミイラの枕。そう、微妙な沈み方を見せる枕。
今、<沈む>と書いたが、サンズイか木ヘンかだけでツクリは同じなのだよな。
つまり元々同じような仲間でもあったのだ・・・。

置かれている中に、寝てる間に髪に香を焚き染める枕があるのだが、よく考えればこれは今ならハーブとか使えば良いのかもしれない。
img331-4.jpg


道中用旅枕。
行燈にもなり、銭入れにもなり、筆記用具もあったりというメチャ便利&多機能枕。
他にも飛脚の使う枕は、それ自体が書類入れでもあったらしい。

加藤守雄の『わが師 折口信夫』にある話だが、折口の養子・春洋さんは手ぬぐい二枚を縫うとその中に米をザラッと入れて、枕&旅の食料にしたようだ。
戦時中だから米は自分で持たないと駄目だったか何かの理由。

携帯用折り畳み枕などがある一方で、香を焚き染める枕や、春慶塗のものもあった。
そうそう、お能の菊慈童も流派によっては枕慈童の名に変わるのだ。
img331-5.jpg


枕詞・・・あをによし =奈良。
マクラ・・・落語の出だしの(書きかけて、枝雀の「カーーーッと太陽が昇りまして」というマクラの顔つきを思い出したら、泣けてきた)
わたしが挙げた他にも解説プレートに<枕経><膝枕><徒枕><城を枕に討ち死に>や漱石の名の由来の故事とか色々上がっていた。

実際、枕の引き出しにミニチュア枕絵を入れる枕もあった。
ちょっと春信風な感じであっさり。しかし三枚ほど衆道があった。杉村か菱川のような感じの線で、坊さんと稚児・客と色子などなど。他にもインド細密画もあった。
正直に言うと、絵の線が綺麗で可愛い感じがした。隠微さはない。

アフリカの枕に凄いのがあった。
新婚さん用の枕で、二つの枕を木の鎖で繋いでいる。しかも解説プレートには「寝相がよくないと云々・・・」←不可能だと思います。えへん。

膝枕で思い出した。
長渕剛の歌にそのタイトルがあるが、ライブ盤で即興にファンの名を当てて歌った歌が収録されている。それは<マサオのニク枕>だった。
img331-6.jpg

しかし枕と言うのは実際大事なものだと思う。
私なんか、典型的な<枕が変わると寝付けない>人なのだ。
わたしの枕はそば枕だ。やっぱりそれがいい。

今回の展覧会のチラシにもこう書いてある。
コレクター独自の視点によって収集された作品をもとに、展覧会を企画致しました。今回は、日々の暮らしの中で大切な役目を果たしているにも関わらず、 あまり省みられることのなかった、「枕」に焦点を当てようとするものです。
 考えてみれば、毎晩世話にならぬ日とてない「枕」ですが、じっくりと「枕」のことを考えたことがあったでしょうか。難を転ずるということから南天を素材とし、一富士二鷹三茄子の全てのアイテムを一木造りに仕上げた枕などは、いかにも良い夢が見れそうです。また、使い込まれた李朝期の折畳み枕は素晴らしい民芸の一品であり、行灯や硯などが組込まれた旅先での携帯枕は旅の大変さを彷彿とさせる歴史資料でもあります。
 今回、一堂に集まったコレクションにより、様々な地域、歴史的特徴を備えた「枕」を、存分に堪能いただくとともに、その世界が広く、かつ深いことを再認識していただければ幸いです。


こういう展覧会は地味だが本当に面白い。
また機会があれば是非見て見たいようにも思った。
いや、それより今度はこれらの枕で眠りたい・・・。
関連記事
スポンサーサイト



コメント
わたしも今日すべりこみで行ってきました。七恵さんとニアミスしてたのでしょうか?
思ってよりずっと面白かったですね~解説も軽妙で♪
またアップしたらTBさせていただきますね~
2006/09/17(日) 22:23 | URL | こいちゃ #EVuTtBQQ[ 編集]
枕に関する薀蓄、楽しめました。
漱石といえば、草枕。
ああ、旅に出たいなぁ。
先日、広重の絵を見てから痛切に感じてます。
2006/09/17(日) 23:54 | URL | 一村雨 #-[ 編集]
★こいちゃさん こんにちは
こういう展覧会って楽しいですよね。
ワークショップでもすればいいのに。
前庭でナゼか20世紀梨を販売してましたね。

☆一村雨さん こんにちは
草枕の絵巻が好きです。小説のシーンごとに名画が描かれていて綺麗でした。
来月奈良に来られるようですね。バス枕はチト苦しそう・・・
2006/09/18(月) 10:10 | URL | 遊行 #-[ 編集]
こんばんは
やっとこさアップしたのでTBします。わたしもこのあと元町にでて棟方を見てきました。ますますファンになりました。
2006/09/19(火) 00:02 | URL | こいちゃ #EVuTtBQQ[ 編集]
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する
最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
全ての記事を表示する

全ての記事を表示する

フリーエリア