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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

手塚雄二 花月草星展

手塚雄二と言う日本画家を初めて知った。
まだ53歳の画家。
デパートの展覧会で初めて見たその世界は、黄昏の中で遠く煌く星をみつけたようだった。
星のような桔梗が咲くその作品。
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その野はまるで、伊勢物語の男に負われて一息ついたときに見た武蔵野のように思えた。
わたしは業平の背から下りた姫の心持で、その野をみつめる。

別な野の絵がある。
恋しくば 尋ね来てみよ 和泉なる 信太の森の うらみ葛の葉
その歌を残して泣く泣く去った<来つ寝>の千年の森。
物語を思わせる野がそこにある。img359-1.jpg


風神雷神がいる。
宗達―光琳―抱一の系譜とは異なる風神雷神。
迦楼羅―ガルーダのような貌の風神と、木彫の力士像のような雷神と。
横に長い長い作品。
新世紀に生まれた風神雷神。
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21世紀前後の作品に素晴らしいものが多い。

『海音』 逆巻く波は吠え、漕ぎ出した舟は波間に沈んだ後なのかもしれない。
声はどこにも届かない。
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これらは皆わたしの勝手な感想・妄想に過ぎない。
しかしそうした想念を生み出す誘いが、この世界にはある。

『夕霧』 林の中で声もないまま泣いている少女がいる。
少女の影は霧に隠されてしまった。
少女の声も霧に飲み込まれてしまった。
少女の存在など何も知らぬかのように、ただ夕霧が林の中に薄く広がっている。
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『星と月と』 この絵を見たとき、画家はこの光景をどこで見たのだろうと考えた。
庭か?――違う。 山の中か?――そうではない。 
心象風景か?――わからない。
絵の前に佇みながら、わたしはそのことを考えている。
img359-6.jpg


夕方に見に来たからか、絵の世界がそうなのか、わたしは一人だと言う気持ちがあった。
静かなときめきをそっと抱えて、わたしは帰った。

続きはここがどこかと言うことを少し。
難波の高島屋で初日に行った。25日まで。

展覧会はよかったのだが、以下、会場への苦言。
ここはかつてサービス精神も高く、売り場も常に活気に満ち、よい空間の場だった。
道路を挟んだ向かいに22日から東京資本の商業施設がオープンしたが、その前日のこの百貨店は一体どうしたのだ。
やる気も何もない。親切さもない。
平日の夕方だからとでも言うのか。
フロアマネージャーはこんな状況を許してよいのか。
これまでにないだらけた空疎な雰囲気に驚いた。
そして、手塚雄二氏が気の毒になった。
こんなに素敵な展覧会なのに、こんなにだらけた場で開催されるとは。
わたしはとても残念だと思った。
正直な気持ちである。
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コメント
遊行七恵さん、こんばんは。
手塚雄二、興味深い画家をご紹介していただきました。
遊行さんの「別な野の絵」(煌草)の解説(?)、感想がいいですね。凄く雰囲気が伝わってきます。
『星と月と』は、最初にフリードリッヒを思い浮かべ、そして「枝垂れモチーフ」を思い、やはり日本の画家だと思わせられました。
風神雷神は大画面でぜひとも一度観てみたいと強く思います。

2006/09/22(金) 22:58 | URL | sekisindho #-[ 編集]
sekisindhoさん こんばんは
実際素敵な画風でした。
今の時期にふさわしいような展覧会でした。

フリードリッヒ。ああ、そうかもしれませんね。
色彩がとてもよかったです。
わたしは今活躍中と人をあまり知らないので、こうして知ることが出来て本当によかったです。
2006/09/22(金) 23:29 | URL | 遊行 #-[ 編集]
遊行さま、おはようございます。

秋晴れです。キンモクセイも香っています。
ところで、手塚雄二さんの絵、ご覧になったのですね。
スポットライトの当て方が、幻想的だなぁとNHKで紹介されたとき思っていました。

新しい風神雷神、本物眼にしたいって思いました。
悲しい美術館の心使い、ぎゃふんと言ってやって下さい!
2006/09/23(土) 12:00 | URL | あべまつ #-[ 編集]
手塚雄二は横浜高島屋で開催されていたのですよ、知らなくて惜しいことをした。
僕は横浜高島屋に秋山庄太郎の写真展無料チケットで観に行ってその前にやったことを知ったのです。
横浜高島屋もだらけています。
展示会場は奥の奥で、展覧会やっている広告もろくに張り出していない。
デパートは三越や大丸のようにアートに力入れるところと、伊勢丹、小田急のように撤退するところがありますが、高島屋も後者になる予感がします。
僕なんて伊勢丹美術館のために伊勢丹カードもっていたんですけどね。
2006/09/23(土) 22:12 | URL | oki #-[ 編集]
★あべまつさん こんばんは
金木犀。
ああ、匂いで言えばこの画家にはそんな感じがします。
ひっそりした光。
真昼でも夜でも朝でもない時間。
そんな時間を描いたような世界でした。

☆okiさん こんばんは
秋山は以前、花と女優の写真展を見ました。
生前、『銀座百点』のラスト頁で花の写真シリーズがあり、ファンでした。
高島屋は文化事業に熱心でしたが、撤退以前の問題で、店員教育が急激に悪化しています。丸井が出てきて逆に活気付かないと駄目なのに。伊勢丹・小田急・西武・・・かなしいー
2006/09/23(土) 22:29 | URL | 遊行 #-[ 編集]
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