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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

バルビゾンから印象派

19世紀絵画の巨匠たち バルビゾンから印象派

少し前からバルビゾン派にも愛情を寄せている。
それは多分、山形後藤美術館のコレクションや、MOTでの『花と緑の展覧会』辺りから始まったように思う。

だから今回も大丸烏丸店での展覧会を楽しみに訪れた。
大丸ミュージアムのレベルの高さを正直に称えたい。
心斎橋・梅田・烏丸・元町・東京・札幌と主な店舗に居心地のよい空間を開き、そこで見事な展覧会を開催してくれる。いつもありがとう、そんなキモチが常にある。

会場に入るとすぐコローがあった。
『砂漠で罪を償うマグダラのマリア』
以前からコローは風景より人物にときめくものを覚える私としては、捨て置ける作品ではない。
髑髏が転がる横に身を起こしながら、手に十字を掲げている。
マグダラのマリアの人気は高い。
懺悔する・罪を償う・物思う・・・そんなタイトルをつけられ改心する姿が多いが、彼女の魅力が深いからこそ、画家は彼女を描きたがる。その魅力とは何か。・・・決して<改心する>ことではないはずだ。
この作品は一名『砂漠で懺悔するエジプトのマリア』とも言うらしい。
イエスの生涯を考えると、彼がヨーロッパ人ではないことを改めて思い出す。

コンスタン・デュティエ『フォンテーヌブローの森の木立』 『樹下の道』
これらは連作もしくは同じ場所で同じような条件で描いた作品だ。
散歩なのか常の徒歩なのか、同じ女が歩いている。緑の深い森。
アラス美術館蔵というが、その美術館をわたしは知らない。

油彩画だけではなく、版画も多い。
先ほどと同じ主題のコローの<ガラス版画>。こんな技法もあるのだ・・・
跪き十字を掲げるマリアは、やはり綺麗だった。

エッチングやリトグラフも多い。
ジュール・デュプレのリトグラフ作品は写実なものが多い。
1835年のフランスはこんな情景なのか、と納得してしまう。
パリのファッション産業以上に、実はフランスは農業国なのだった。
テオドール・ルソーのエッチングもあった。

わたしの大好きなナルシス・ド・ラ・ペーニャが二枚ある。
かれのエキゾチックな美女たちがとても好きだ。
『ヴィナスの水浴』 天使たちがころころ4人いる。このヴィナスの顔はダヴィンチの『洞窟の聖母』に似ている。やや謎の微笑が口許に浮かんでいる。天使たちはころころと可愛い。

『ジプシーの母子』 こうした絵にこそナルシスの魅力が発揮される。
白い被り物をした女と娘と。ジプシーは早婚なので母も娘もまだ随分若い。若いがもう影が忍び寄っている。微笑する先に何があるのか。森の奥で何をしているのだろうか。
ヨハネ・パウロ二世美術館蔵。ここには母子像が多く収蔵されている。
ここのコレクションもその一部を、かつて大丸で見せてもらったのだ。

ブラカサ『海辺の羊たち』 おおー、横顔アップの三匹の羊が揃って左を向いている。
茶・白・黒の三匹の視線の先には海がある。
この羊たちは神の手から離れ、海へ向かおうとしているようだ。異教の神の教え。海の波として現れる馬たち・・・彼らの出現を望むかのような視線だった。
なんとなくこの絵を見ていると、山口華楊のだったか、『望郷』を思い出す。
青空の下、三体の埴輪が渇仰するその姿を。

トロワイヤン『牛のいる風景』 usi.jpg

木にもたれる牛。首がかゆいので木肌でかいているのかもしれない。
しかし賢そうな目をしている。羊の隣に並ぶ牛の絵。12星座のようだ。

デュプレ『ベリー地方の農家』 きのこのような家。
中世から変わることのない建物。img367-1.jpg

ベリー地方ということは、ベリー公の統治していた地方か。この家を見ると中つ国のホビットたちの家を思い出す。池を前にした家。池というのか・・・

『水のみ場』 牛。森。白い空。パステル画の特徴がよく出ている。
この辺りの作品は北海道帯広美術館所蔵。ファームだなぁ、と勝手に考える。

ところでミレーの作品がある。わたしはミレーはさして関心がない。子供の頃近所の教会に行くと、ミレーの複製画がたくさん飾られていたのを見ている。そのせいかもしれない。
しかしここにある『午餐』はよかった。
img368.jpg

片肌脱ぎでかごを載せて働く女。後に続く人々。
もしかすると私は農作業以外の労働シーンなら眺める気になるのかもしれない。
典型的な没落地主の裔で、農地解放の話を随分聞かされたことが、ある種のトラウマになっているような気もする。

『食事の支度をする若い母親』 チラシにも半券にも使われている作品。大きさは意外なことにA4Eサイズくらい。いい感じの作品だが、火が飛んだりしないか心配になる。
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1847年頃の作だが、農家ではしゃがんでカンテキ(七輪)でご飯の支度をしていたのか。
上方も洗い物などは座って行なうようになっていた。へっついさんも火を入れるのはしゃがんでのことだ。・・・キッチン・水まわり・火の元は現代のものでなければやっぱりい・や・だー。
しかしいい感じの絵である。美人の母親の子供への情愛がにじんでいる。母子といえばカリエールを思い出すが、共通するのは静けさである。

情愛と言えば『ゆりかご』がいい。img364.jpg

この絵は盛岡の橋本八百二美術館所蔵なのだが、盛岡市としか表記されていない。八百二美術館ではちょっとした怪異があったので、決して忘れることはない。聖なる子どもと仔羊と。

愛媛県美術館のセザンヌ『水の反映』が来ていた。
油彩というより水彩。四角い塗り方。
この塗り方が光を呼ぶのだった。点描ではなく塊描とでもいう感じ。
セザンヌはピカソほどではないが、スタイルを変えている。そのことをすぐ忘れてしまうのだが。

ルノワール『ピエール・ルノワール』’10年、25歳の長男の肖像。ピエールは俳優になった。
その肖像。生涯女の絵を描き続けた大家も息子は別だった。
次男のジャン・ルノワールの肖像も見たが、絵だけで見れば兄の方がややハンサムだ。
かれはルイ・ジュヴェー辺りの劇団にいたそうだ。弟は映画界の巨匠。

『女性の肖像』白地に青いセーラー服。ルノワールは意外と青い服をよく描いている。
青色の使い方が巧みというか、印象的だ。記憶の底に残る。
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レオン・デュプレ(弟)『夕暮れに池で休む牛たち』 夕日が西陣織の金糸のように見える。
それで思い出した。西陣織の会社・松翠閣がその技術で世界名画を二次創作していた。
写楽からルノワールまで。そのことを思い出した。

クールベ『物思う女の横顔』img365.jpg

不思議な縁があり、ここでクールベを見ている。去年の丁度同じ時期。そこでもこの女の横顔を見ている。クールベはその少し前にも展覧会があり、関西では人気が高まって、去年たしか「クールベの描いた地へ」ツアーが開催されて、オバサマ方がスイス・フランスへ大挙して出て行った。

ラトゥールの『ガラス瓶に生けられた花束』 白い花が愛しい。意識してラトゥールを眺め始めると、意外とよく出会う。花が生きているか萎れているかは問題ではない。
花はくたびれていても、花なのだ。そのことをラトゥールの絵から知った。

ル・シダネル『あずまやに下がる提灯』 ドゥエ美術館蔵。連作「家 時間 季節」からの一枚だが、胸を衝かれた。
青と緑の夜。向こうに牛がいる。丸い提灯。この絵もまた人は不在なのだ。
少し象徴派の夜のようにも思えた。わたしは夜を描く作品が好きだ。
静かなときめきがある。
しかし残念なことにこの絵は絵はがきにはならなかった。

帯広美術館、ドゥエ、アラス、ツィード、ヨハネ・パウロ二世美術館からチョイスされた作品が多かった。行く機会は見つからなくても、今は少し満足している。
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コメント
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2006/09/26(火) 18:19 | | #[ 編集]
日本国内にはバルビゾン派のコレクションが結構充実していますね。
愛媛県美術館でも年に一回はバルビゾン派メインの特別展が開催されているように思えます。
といっても県美術館には海外の画家の作品はほとんど無いので、よそのコレクションの巡回展なのですが・・・
>セザンヌ「水の反映」
見たことあるはずなのですが、記憶に無かったので、県美術館のサイトで検索してみました。
いわゆる「セザンヌの風景画」とは一味違う作品ですね。
県美術館の作品で印象に残っているのは、モネ「アンティーブ岬」とルドン「アポロンの馬車」です。
>『食事の支度をする若い母親』
暖かな雰囲気のいい作品ですが、実際にあの格好で食事の支度をしていたら赤ん坊がやけどをするのでは?と思ってしまいます。
2006/09/26(火) 20:47 | URL | 千露 #GyvMcuCk[ 編集]
千露さん こんにちは
どう考えても、わたしも子供ヤケドすると思います。
ママは若いからわかんないのね(笑)
日本人は本当にバルビゾン派と印象派が好きだなーと思います。暖かく感じるのかしら。
少し不思議なような気がします。 
2006/09/27(水) 12:00 | URL | 遊行 #-[ 編集]
ゆりかご
はじめまして。
橋本八百二美術館は10年ほど前に閉館し、その際、所蔵作品を盛岡市に寄贈しました。なので、『ゆりかご』の現在の所蔵は盛岡市です。
2010/10/07(木) 16:35 | URL | 斎藤純 #7iSbDyII[ 編集]
はじめまして
☆斉藤純さん こんばんは

> 橋本八百二美術館は10年ほど前に閉館し、その際、所蔵作品を盛岡市に寄贈しました。なので、『ゆりかご』の現在の所蔵は盛岡市です。

情報、ありがとうございます。
そうでしたか。
14年前に行ったのですが、いい作品が多かったので残念です。
しかし盛岡市がきちんと管理してくれているようで、安心しました。
2010/10/07(木) 22:17 | URL | 遊行 七恵 #-[ 編集]
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