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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

トロースドルフの赤ずきんたち

トロースドルフ美術館という私設美術館がドイツにある。
主なコレクションは、ドイツに発祥し世界中に広まった<童話>赤ずきんの絵本やその原画である。
館主はこよなくこの物語を愛するご夫妻で、絵本画家とも仲がよく、現代の作家の作品なども多く所有する。

展覧会は大丸梅田で開催された。
もう終幕を迎えたか。
わたしは二度通った。
二度とも大勢のお客さんが来られていて、みんなとても楽しそうだった。
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赤ずきんの物語は最初はペローによるもので、次いでグリム兄弟が物語化した。
登場するものは変わらない。
赤ずきんの母、赤ずきん、狼、赤ずきんの祖母、狩人。
しかし物語は微妙な変容を見せている。
ペロー版では、赤ずきんはおばあさんに化けた狼の言うままに服を脱ぎ、そして狼に<食べられ>る。
物語の最後には若い娘への戒めが綴られている。
つまりとてもセクシュアルな物語なのである。

しかしグリム版では赤ずきんとおばあさんを食べた狼は狩人に殺され、二人は救われる。

更におまけがつくときもある。
狩人と赤ずきんの婚姻などである。

物語の概要や底に流れる思想などは措くとして、描かれた赤ずきんの様々な姿を楽しんだ。

可愛い少女・いたいけな童女・おしゃまな娘・ポップな女の子・・・
実に色んな赤ずきんを見た。
狼も色んな種類を見た。
見るからに悪辣そう・可愛いわんこ風・シェパード風・一見紳士風などなど。
騙してやろう・喰ってやろうが大方だが、仲良くしたかったんだ風もいる。
画家の意識がどの方向へ向いていたかがはっきりとわかる。
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赤ずきんの服装も実に様々だ。
『赤ずきん』そのものもマントか帽子かに大別される。
中の服は民俗風のもの・その時代のもの・などなど。
イギリスの絵本はケイト・グリーナウェイ風のワンピースだった。

土曜の夕方と平日の昼とに通ったが、二度ともある程度以上のお客さんばかりで、子供は一人もいなかった。
会場の奥の方には赤ずきんの分類パネルや、『あなたも赤ずきん』コーナーがあった。
フェルト製のフード付きマント。籠にはワイン・フルーツ・パンなどなど。
撮影コーナーなのだが、赤ずきんになれそうな子供は一人もいなかった。みんな、元・こども。
絵本も色々眺めたり。
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色んな赤ずきん。


仕掛け絵本もたくさん並んでいた。
飛び出す絵本(ポップアップ絵本)、シャドウボックス、いろいろ。
なんだかとても楽しい。
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赤ずきんのほかにも、レオ・レオーニ、ヨゼフ・ウィルコンらの絵本原画がある。
レオーニの切り絵のねずみがあんまり可愛くて嬉しくなった。ウィルコンのフクロウだかミミズクだかもホウホウと可愛い。
ミミズク選手権。ちょっとそれを主催しょうかな。
ああもう、可愛い。

ところで今日は中秋の名月だ。
月と言えばウサギなのだが、ヨーロッパでは月は狼だ。
狼男は満月に力を得る。
狼が赤ずきんを食べる為に変装したのは、満月の日だったのかもしれない。
普段は言葉を使うことも出来なかっただろう。

ところでこの後には蛇足あり。
赤ずきんは<開かず君>でいなければならないのかもしれない。
佐野洋子の書き換えた赤ずきん*のようでは、童話の世界から追放されてしまうのだった。

*・・・佐野洋子は『嘘ばっか』で昔話の書き換え作業を起こした。
ここでの赤ずきんは三十を越えても自立できず、母親の強い支配下にあり、初めて声をかけてくれた男を祖母の家に誘い込む。そして事後、帰宅して驚く祖母を絞殺してしまう。


わたしもまた赤ずきんなのかもしれない…
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