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美術館・博物館・デパートでの展覧会を訪ね歩き、近代建築を見て周り、歌舞伎・映画・物語に溺れる日々の『遊びに行った日を記す』場所です。 

浅井忠と関西美術院

既に府中美術館で開催された『浅井忠と関西美術院』展が本家本元の京都市美術館で開催されている。
当初<洋画>と呼ばれず<油絵>と呼ばれていた洋画群。
内容も日本画で描かれていた内容を置き換えたものも多かった。
ところがよく考えると(手法はまったく違うのだが)物語性を重視した点はラファエル前派と共通してもいる。
明治初頭の、黎明期にあった油絵師たちは日本や中国の故事来歴・伝説を絵画化した。
それらはたとえば伊藤快彦や都鳥英喜や寺松国太郎らの作品に表れている。
ところが留学から帰った浅井忠が学んできたものはそれらとは異なり、日本的主題の作品を描いてもやはりそれは<洋画>に見える。
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洋画の学校としての関西美術院についてはこちらに詳しい。
http://www.geocities.jp/kanbi_1906/index.html
ちょうど百年の歴史。

展覧会に展示されている作品はなかなか魅力的なものだった。
というより、今日的な展覧会に現れない作品群だということが、新鮮なのかもしれない。

私が入ったとき、展示解説が始まっていた。
櫻井忠剛の説明をしている。
この画家はかつての尼崎の領主の家の出で、本人は画家であり初代尼崎市長なのである。勝海舟とも姻戚関係にあった。
回顧展は去年尼崎で開催されている。
http://yugyofromhere.blog8.fc2.com/blog-entry-105.html
ここに展示されていたのは横長の板に能面と謡本と小道具が置かれた風景である。
当時の住宅事情と装飾の関係からの解説が行われている。
二枚はそれぞれ『安宅』と『道明寺』である。
二作ともよく知られた作品である。
実は今でも尼崎の旧家には櫻井の作品が残るところが多い。

櫻井の盟友伊藤の作品も並び、それから鹿子木孟郎の作品も並んでいる。
鹿子木は’91.3月に京都近代美術館で大規模な回顧展が開催された。
わたしはそれを見ているが、そのときに出た作品が今回も現れた。
『新夫人』『画家の妻』などである。

その回顧展では『インスピレーション』という不思議に霊妙な作品もあった。
霜鳥之彦や都鳥など、京都でしか(それもこの界隈のみ)見ることのできない画家の作品がたくさん並んでいる。
そのこと自体に意義があると思う。

山内愚僊『金屏』 文字通り金屏風の前に青い着物の娘がいて、短冊になにやら書き連ねようとしている。
その金屏風には応挙風のころころわんころがいる。可愛い。愚僊写と屏風に入れている。なんだかとても楽しい。
わんころが描きたかったのかもしれない、と思うほどだ。

向かいの近代美術館では同時代の日本画家・都路華香とその周辺の展覧会が開催中なので、私の意識はしばしば行きつ戻りつを繰り返している。
http://yugyofromhere.blog8.fc2.com/blog-entry-669.html
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クリックしてください

病院鳥瞰図を描いた田村宗立の『官女弾琴図』がある。
あちらは建築の図面のようだったが、こちらは油絵の女人像である。
日本画ではあまり官女を描かなかったが、油絵では武二のも見ている。

寺松国太郎『乙女散華の図』 天女が散華している。花を散らす乙女のその胸の美しさ。
ちょっと感動してじっ と眺めた。きれいな胸。こんなきれいな胸を見るのは久しぶりだ。
あんまりきれいなので晒すのが惜しいくらい。
なんてきれいな胸なのか。
わたしは裸婦の中でも満谷国四郎の裸婦が好きなのだが、あちらは日本人の黄色味がかった肌色の質感をうまく捉えている。この天女の胸はやや青白い。しかしどちらもとても惹かれる。
いいものを見てしまった…

同じく『サロメ』 倉敷市美術館で見たとき、サロメ熱が高い時期だったから、うれしくて仕方なかった。
再会でき喜んだ。ナマナマしい肉感のサロメ。汗や脂や質感まで感じられそうだ。
こんなナマナマしい肉体の娘が生首の男をくどき、くちづけるのを見れば、ヘロデ王でなくとも言ってしまうだろう。
「あの女を殺せ」と。

澤部清五郎の『梳る』女はなんとなく怖い。長い髪が丈なしてうねるようだ。
澤部は15年位前京都で回顧展があったのに行き損ねた。私好みの美人画があったのに。
川島織物との関連も含む展覧会だったからか、美人画以外の作品は織物の下絵かなと思うことがある。
『紅葉狩り』などがそのイメージの典型である。
平安貴族の遊びが描かれている。竜頭船を浮かべ、蹴鞠に興じる。モミジは様式的な描かれ方で、人物たちもみんなしもぶくれ。雅な風情である。

浅井忠に移る。
グレー村の風景画などもよいのだが、本当を言うと浅井忠の良さは工芸品のデザインや日本画の戯画などに見えると思う。去年だったか、『日本のアールヌーボー』展でも浅井のデザインが多く出品されていた。
http://yugyofromhere.blog8.fc2.com/blog-entry-250.html
しかし目の前にあるのは不気味な蝦蟇仙人図である。
蝦蟇仙人ということは鉄拐仙人だろうか、それとも仙素道人だろうか。…単に不気味な蝦蟇オヤジなのか。
巨大蝦蟇をアタマに乗っけるだけでなく、掌や膝に小さい蝦蟇をちょこんと乗っけてなにやら話しかけている。
山中でこんなのに出会ったら災難だ。避けるに限る。

宮中に納入するための『武士の山狩図』が工芸繊維大から来ていた。
これは夏に見たばかりだ。鹿子木の作品もそうだが、この大学の資料館はよい美術品を所蔵している。
(行くのは遠いが)

象に乗るオジさんの絵がある。なんかカカオ豆とかコーヒーのポスターみたいで、妙に惹かれる。
芸術がどーのとか感動とかそういうことではなく、こういう絵が楽しくて仕方ないのだ。
考えれば象がいるからカカオは無関係なのだが、缶コーヒー飲みたい気がしてきた。

梅原の白椿がきれいだった。花瓶は人の横顔をかいたもので、色柄で見ればマヨルカ風。
この作品は後年のものだろうが、『三十三間堂』はそれこそ留学前の若い頃の作だ。
ちょうど新井の同題の作品を見たばかりで、比べれば違いはわかるがなんとなくごっちゃになってしまった。

安井『孟宗藪』 日当たりのよい竹藪と言うのはちょっと不思議だ。生い茂っていないのか。
まだセザニズムに傾倒していない頃の作品だろうか。

榊原一廣『カーニュ』 この画家は二年前に伊丹で回顧展を見たが、たいへん良い画家だと思った。
素敵な作品が多く、特にデッサンがすばらしいと思ったのだ。
このカーニュの風景もよかった。確か以前、イタリアの洗濯女がいいなーと思った記憶がある。
船や陽光がキャンバスに乗っけられて、きらきらしていた。

津田青楓『御茶ノ水風景』 柴舟が行く。ニコライ堂が右上に見える。こんな時代があったのだ。
わたしも御茶ノ水付近が大好きでふらふら出歩くことが多い。ガンガン寺と呼ばれたその鐘の音を聞くためだけにここへ来ることもある。聖橋が大好きだ。

千種掃雲『蓮』 以前からしばしば見かける作品だが、これも多分関西住まいの恩恵だろう。なんとも言えずよい作品だと思う。夏の早朝、蓮池に小舟を出す母子。ポンッという蓮の音を聞きながら働いているのかもしれない。暑くなる一日。しかし早朝だからまだその暑熱も心地よい。ああ、今日も一日…

同じく蓮池を描いたのが十亀廣太郎だ。こちらの蓮池はぼんやりとピンクがかっている。しかし’23にしてはやや古いような感覚である。もう二十年前の作品のような感じがある。

須田國太郎がたくさんある。うれしい。ちょうど去年から須田の回顧展が開催されたので、須田の作品も多く顕れるようになったらしい。

その一方、わたしを責めるものがある。
川端彌之助である。
数ヶ月前東大阪で回顧展があったのに、行けなかった。
今目の前に『京都駅』がある。たくさんの列車が入っている七条ステンショの姿。
なぜ見に行かなかったのか、と責められている。鬱屈がそこにある。
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水清公子『のうぜんかずら』 この人もこの作品も知らない。知らぬが知る気がする。
ああそうか、ルバスクやオットマンの描く女と似ているのだ。
ちょっとぼてっとした唇、夢見がちなまなざし…かわいい女。
それが二人いる。
二人の可愛い裸婦はくつろいでいる。そばに黒犬がいて、二人を守るかのように見える。
のうぜんかずらに手を伸ばす女のポーズはゴーギャンを思わせた。
ただそのゴーギャンの絵を見たわたしは「バスケットでシュートしてるみたい」と思ったのだが。

松村綾子『夏庭』くつろぐ女たち。手前側に座る少女のきつい顔立ちがきれいだと思った。
三岸節子の二十歳の自画像のような、しっかりした美少女だった。

去年の九月に黒田重太郎の回顧展が滋賀で開催された。
やはり回顧展が開かれると、眠っていた作品も世に出るようになる。
『閑庭惜春』 家族の肖像でもあるこの作品には心惹かれる。色彩が呼ぶのか。
黒田はキュビズムに傾倒したので、『渚に座せる女』の肉体構成もキュビズムで表現されている。

京都の一番古い洋画の味わいを楽しめた、面白い展覧会だった。
しかし、この展覧会が京都だけでなく府中市でも開催されたというのが、実は一番すごいことなのかもしれない。
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コメント
浅井忠
府中に来た「浅井忠と関西美術院」は行けませんでした。が、先日、佐倉の川村記念美術館に「ジャコメッティー展」を、見に行った時に、佐倉市美術館によって来ました。ここは、時々、面白い企画展をやっています。(例えば、過去に、福井良之助孔版画展をやっています。)
今回は、「佐倉・房総ゆかりの作家たち ー新収蔵作品を中心にー」でした。
浅井忠は佐倉の出(佐倉藩士の子)です。
今回も、素描や水彩、木版の他に、浅井忠図案の漆器、陶磁器が出ていました。絵葉書のようなものもあったと思います。夏にも、1階の喫茶コーナーの脇で、佐倉学だったかな?と称して、工芸品を展示していたと思います。(この時は、川村にクレーを見に行った)
浅井忠の他にも、浅井の従弟で晩年の浅井の活動を支え、洋画研究所、京都高等工芸学校で教えた都鳥英喜、京都時代の弟子関係では、洋画学校で学んだ梅原龍三郎、黒田重太郎、京都高等工芸学校で学んだ霧鳥之彦、長谷川良雄の作品が展示されていました。(後ろは二人は初めて知った名前です)

ちなみに、佐倉市美術館のエントランスホールは、大正7年に建てられた旧川崎銀行佐倉支店で、遊行さんの好みかも。

浅井忠に関してはは、昨年も、日本橋(東京ね)の高島屋に、「高野コレクション 浅井忠」を見に行きました。
2006/11/25(土) 22:52 | URL | 鼎 #PgtEBqSc[ 編集]
鼎さん こんばんは
私が佐倉に行くときは成田から京成佐倉に出て、てくてくと歴博に行き、バスに詰まれて川村へ、戻って市美術館、さらに佐倉高校・堀田邸へ回って、千葉へ出ます。
で、金曜夜間開館の千葉市美術館でぐったりして、己のめちゃくちゃさを 後悔するのでした。

銀行も千葉の鞘堂もともに大好きです。

浅井のお弟子さんたちの素描展が目黒区美術館で開催してます。なかなか興味深い展覧会でした。
地味だけど、こういう展覧会は必要だと思いました。
浅井の日本画は洒落っ気があり、楽しいです。

ところで川村ではコーネルの箱が大好きなのです。
2006/11/25(土) 23:28 | URL | 遊行 #-[ 編集]
僕は府中で観ました。
そうそう須田国太郎いっぱいありましたよね。
実は昨日jennyさんというネット仲間と一緒に近代美術館に行ったのですが須田の「老松」という作品にびっくり仰天。
詳しくは省きますが須田の深淵を垣間見た気がしました。
遊行さんもちょうど東京にいらっしゃってたんですよね、jennyさんも遊行さんのことご存知で彼女も会いたいといってましたよ、遊行さんと連絡つかずに残念無念!
2006/11/25(土) 23:46 | URL | oki #-[ 編集]
okiさん こんにちは
例によってめちゃくちゃな順路彷徨してましたので失礼しました。
1月にまた出没しますので、そのときうまくかち合えば皆さんとお会いしたいですね。

ところで須田の深淵とはまた凄いものをご覧になったのですね、その展覧会は来年こちらにも来ますので楽しみです。

それから初めて東京M新聞を読みましたが、面白くないですね。大阪のM新聞と思想も文章も全く異種でした。
全然別な新聞みたいです。
週刊Sにもときどき見かける揚げ足取りな感じがしました。
2006/11/26(日) 10:01 | URL | 遊行 #-[ 編集]
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